マイクロLED技術は本格的な製造にはまだ準備不足


2025年6月12日 Display Daily by Barry Young

 

2010年代半ば、固体照明に関するエネルギー省のワークショップで、ある若いマイクロLED起業家がOLEDの会議で、彼の会社が2020年までに商業的にコスト競争力のある65インチTVを生産することでOLEDを葬り去ると語った。10年後、唯一商業化されたマイクロLED TVはなんと10万ドルの費用がかかり、この技術を使用した唯一の量産品が市場に出回っている。その起業家、PlayNitrideのCEOであるCharles Liは、彼の会社を上場させ、初めて年間利益を報告した。PlayNitrideはサムスンのThe Wall TVにマイクロLEDを供給している

 

彼は2025年のDisplay Weekにコスト競争力のある65インチTVを実現できないままで参加し、マイクロLED業界の現状に関するパネルディスカッションに参加した。マイクロLED業界のリーダーたちは、カンファレンスで次のようなパネルメンバーでステージ中央に立った:

 

・Eric Virey、主席ディスプレイ市場および技術アナリスト兼コンサルタント、Yole Group(モデレーター)

・Wei-Lung Liau、CTO、AUO

・Alex Chen、CTO、BOE

・Charles Li、CEO、PlayNitride

 

驚くべきことに、パネルディスカッションから得られた結論は、過去10年間でほとんど何も変わっていなかったということだ。マイクロLEDは依然として大きすぎ、高すぎた。一括転写は、小型デバイス、正確な配置、高い歩留まり、高いスループットという相反する要件のバランスを取ることができる実行可能なソリューションを依然として欠いていた。業界は依然として、ダイサイズが縮小するにつれて、検査とリペア、および競争力のある外部量子効率に対する実行可能なアプローチを必要としていた。

 

課題をさらに複雑にしているのは、LCDとOLEDが性能の違いを減少させ、コスト競争で大きな改善を遂げたことだ:

 

MiniLEDバックライトを備えたLCD TVは、10,000ニットの輝度目標を達成し、コストを半分以上削減した。過剰な生産能力のために、32インチ4K TVのオープンセルパネルは37ドル、14インチ2K IPSモジュールは46ドルで販売されている。

 

OLEDは、過去5年間で効率を2倍にし、リン光ブルーを使わなくても25%以上のEQEを達成し、今後5年間でさらに2倍になることが予測できる。パネルは完全に減価償却された工場で製造され、TVの輝度は4,000ニット以上だ。

 

パネリストたちはTV、時計、自動車、その他のディスプレイ市場について議論したが、LCDのコストは比較になならないぐらい安く、OLEDパネルの性能とコストがハイエンドでの新規競合他社を阻む傾向があるため、利用可能なニッチ市場はごくわずかしか残っていない。

 

パネルでは取り上げられなかったが、Jade Display、Alediaなどが提唱する2番目のアプローチは、ARが成熟するのを待つことだ。MicrosoftとMetaが開発しているレーザービームスキャンがLEDoSを上回らないことを期待している。

 

3番目のアプローチは、マイクロLEDがユニークな機会を探すことだ。例えば、非常に小型のデバイスで光を供給し、追加機能のためのスペースを残し、数十億ドル規模の工場を必要とせず、マイクロデバイスを車両で現在使用されている内蔵受動電極を備えたガラスのような低コスト基板上に堆積できる場合だ。このアプローチは、VueRealが低コストのカートリッジプリンターを使用して追求しており、最初の製品は2027年までに様々な自動車用照明となる。

 

Chris Chinnockはパネルディスカッションについて報告した:BOEとPlayNitrideの両社は、4インチまたは6インチのサファイア基板上に青色および緑色のマイクロLEDを製造している。Chen氏は、6インチの品質は4インチよりも優れているが、コスト削減にはさらに時間がかかると述べた。彼らは、マイクロLEDのコストがディスプレイ全体の50%以上を占めていると主張した。最近の調査では、100万個の20ミクロンLEDの現在のコストは約150ドルとされている。参加者たちは、課題はデバイスサイズの縮小、歩留まりの向上、および規模の達成の組み合わせだと主張した。

 

AUOのLiauは、チップコスト(PlayNitrideが主要サプライヤー)を1番目のドライバーと見ており、一括転写を2番目と見ている。

 

BOEのChenは、チップコストが最も重要なコストドライバーであることに同意し、2番目は欠陥検出とリペアだと述べた。

 

PlayNitrideのLiは、前進するためには生産能力と合理的なコスト構造が必要だと考えている。

 

YoleのVireyは、デバイスサイズが15×30または20×40ミクロンのサイズで頭打ちになっていると見ている。Liauは、デバイスが小さくなるにつれて、歩留まりの損失に加えて効率の損失が発生する可能性があり、これは同じ輝度レベルを維持するために消費電力が増加することを意味すると指摘した。

 

Chenは、現在では15×30ミクロンのサイズが一括転写に最適だと考えているが、10×20ミクロンのフリップチップへの移行も検討するだろうと述べた。長期的には、垂直マイクロLED(積層マイクロLED)は良い方向だが、特により多くの研究が必要で、特に一括転写と修理の懸念がある。Liは、顧客がオプションについてあまりにも長く議論し、マイクロLEDの仕様、TFT技術、光学系、転写装置などに関する仕様を固定しないため、業界に少し不満を表明した。「潜在的に、デバイスサイズの縮小に制限はない。プロジェクトを進めるためには、デバイスの認定に焦点を当てるサイズを固定するだけだ」とLiは述べた。彼は、現時点でデバイスサイズを縮小することは緊急ではないと考えている。製造のあらゆる側面を同時に縮小する必要がある。

 

その後、議論は一括転写のための基板サイズに移った。開発者はGen 2.5の工場を使用しているが、AUOはGen 4.5のラインを改造しており、これにより業界最大の42インチのマイクロLEDモジュールを生産できる。この場合、127インチのホームシネマスクリーンを製造するには8枚のパネルが必要だ。講演者たちは、より大きなサイズの基板がコスト削減に役立つことを認めたが、一括転写が成熟していないため、業界はまだGen 6またはGen 8.5への移行準備ができていない。

 

BOEのChenは、LTPSが最高の駆動回路技術を提供するGen 6が良いスイートスポットになる可能性があると考えているが、このサイズでの一括転写は利用できないことに同意した。Gen 8.5については、AUOとBOEの両社は酸化物バックプレーンが必要だと考えているが、移動度は20-30 cm²/V・secから50 cm²/V・sec以上に改善する必要があり、これはOLED業界の目標でもある。酸化物デバイスは、LTPSベースのデバイスよりも解像度と輝度が低い中級マイクロLEDアプリケーションに適している。LTPSは、より高い輝度、解像度、透明度、またはフレームレートのようなハイエンドアプリケーションでは依然として最善の技術だ。MicroICソリューションはさらに高価になるだろうとLiauは考えている。

 

Liは、一括転写のためにGen 4.5サイズにカットされたGen 6バックプレーンを使用することを提案した。彼はまた、窒化ガリウムを使用してトランジスタを製造する可能性があると考えている。彼らは製造機器メーカーが一括転写の開発を加速することを望んでいるが、現在の生産量と市場浸透率では投資を正当化できない。「私たちは、顧客と製造機器メーカーがこの市場に参入し、それを前進させるために投資することを必要としている」とLiは述べた。