UDC、青色燐光材料は、UDCの特許を避けられない


2022.09.02 The Elec

 

米国の有機EL(OLED)材料メーカのUDCのMike Hack副社長が「どの企業でも青色燐光OLEDを商用化するにはUDC特許を避けられないだろう」とし「2024年に青色燐光OLEDを商用化するという目標には変わりがない」と明らかにした。青色燐光OLEDが商用化されると、現在の青色OLEDの効率を4倍まで高めることができる。副社長へのインタビューは、IMID 2022のイベントが開かれてい8月25日、釜山のカフェで行われた。

 

副社長はインタビューで「今年末までに青色リン光OLED材料の初期目標を達成するための開発が順調に進行中」とし「2024年に青色リン光OLED素材を商用化するという目標に変わりはない」と言った。

 

今年の2月にUDCは2024年に青色リン光OLEDを商用化すると明らかにした。現在、光の3原色(赤・緑・青)のうち赤と緑のOLEDは内部発光効率が100%の燐光材料を適用中だが、青色OLEDは内部発光効率が25%の蛍光素材の適用にとどまっている。赤と緑に続き青色まで燐光素材を量産適用すればOLED効率を高めることができる。

 

副社長はメーカー名は公開していないが、「多くの顧客会社と様々な形態で青色燐光OLED素材を開発している」と明らかにした。現在、サムスンディスプレイは独自に青色燐光OLED素材を開発中であることが分かっている。

 

彼は「どの企業でも青色燐光OLEDを商用化するためにUDC特許を避けられないだろう」と強調した。UDCは巨大な特許ポートフォリオをベースに、赤と緑のOLEDでも重要材料であるドーパントを独占生産してきた。副社長の言葉は、青色燐光OLEDのドーパントも今後UDCが主力で生産するだろうし、他社が自社技術で作った青色燐光OLEDを量産するとしてもUDCの特許を使用しなければならないという意味である。

 

副社長は青色OLEDでも燐光方式が熱活性遅延蛍光(TADF)方式より優位にあるという点も強調した。彼は「青色燐光方式がTADF方式より製品寿命などで強みがある」と明らかにした。 

 

続いて「UDCは青色燐光素材を2024年に商用化すると明らかにし、業界の一部ではサムスンディスプレイの青色燐光材料の商用化がUDCより速いという見通しも出ている。一方、青色TADF方式材料の商用化時点については業界推定というものがないが」と尋ねると、副社長は「質問の中に答えがある」と話した。TADF方式青色OLEDの商用化は期待しにくいという点をあわせて表現したものと見られる。「サムスンディスプレイがドイツのサイノラのTADF特許を買い入れたとき、UDCは関心がなかったのか」という質問に、「UDCは(サイノラの)TADF特許を買収しなかった」と短く答えた。

 

副社長は、OLEDが今後10年間でもディスプレイ市場を主導するだろうと展望した。彼は「量産性が検証されたOLEDがアプリケーション市場を拡大する」と期待した。スマートフォン市場でOLED浸透率は40%水準だが、タブレット・ノートブックなどIT製品市場でOLED浸透率は2%、TV市場でOLED浸透率は3%に過ぎない。

 

副社長は、IT製品向けOLEDに期待を寄せている。彼は「IT製品のOLED適用が拡大すると予想する」とし「IT製品は画面(10~20インチ)が大きく、発光層を2層に積む「ツースタックタンデム」(Two Stack Tandem)構造を適用する」と説明した。画面が大きくなり、発光層に必要な材料が2倍に増えると成長幅が大きくなる。

 

マイクロディスプレイも期待要因だ。彼は「マイクロディスプレイでマイクロOLED(OLEDoS)がすぐに大幅な成長を期待するのは難しいが、長期的に機会がある」と展望した。彼は「グーグルとアップルなどがこの市場に参入してからの成長が期待できる」と説明した。

 

一方、サムスンディスプレイが自社開発中の青色OLED燐光素材にはTADF方式技術も併せて適用されると伝えられたこともある。また、サムスンディスプレイが青色燐光OLED材料を採用する場合、最初のアプリケーションはQuantum Dot(QD)-OLEDが有力だ。現在量産中のQD-OLEDは青色蛍光材料3層と緑色燐光材料1層など4層(Four Tandem)の発光層を使用する。青色蛍光材料を燐光材料に置き換えることで、青色または緑色発光層を1つ減らすことができる。

 

以下は、副社長とのインタビュー内容である。

 

Q。来年、UDCの燐光特許の一部が期限切れになり、他の企業も当該技術を使用すると推定されている。

 

A。来年、リン光デバイス(機器)に関する特許の一部が期限切れになることは正しいが、UDCは燐光材料に関連する膨大な特許ポートフォリオを保有している。

 

Q。UDCよりサムスンディスプレイの青色燐光OLED素材の商用化が早いという業界推定も出ている。サムスンディスプレイが青い燐光OLED材料を商用化すれば、UDCの特許を回避できると思われるか?

 

A。顧客会社関連の内容に言及するのは難しい。しかし、どんな企業でも青い燐光OLED材料を商用化するなら、UDCの特許を使用しなければならないだろう。

 

Q。UDCが年末までに青色燐光OLED材料に関する内部初期目標仕様を達成するという見通しは変わらないか?

 

A。そう、内部目標仕様を満たすための開発は順調に進んでいる。

 

Q。2024年に青色燐光OLED素材を商用化すると言ったが、応用先と顧客会社はどうなるのか?

 

A。青色燐光OLED素材の応用先に関して、様々な顧客とは異なる形で開発中だ。

 

Q。UDCが青色リン光OLED素材を2024年に商用化するには、サムスンディスプレイやLGディスプレイなど国内代表パネルメーカーと開発課題を進めるべきだが、関連プロジェクトが進行中だという話は聞かなかった。

 

A。顧客会社の関連事項は具体的に言及するのが難しい。 

 

Q。ドイツのサイノラ(Cynora)の青色熱活性遅延蛍光(TADF)OLED素材特許をサムスンディスプレイが買収した。UDCはサイノラのTADF方式OLED素材特許には関心がなかったか?

 

A。UDCはサイノラ特許を購入しなかった。 

 

Q。UDCは青色燐光OLED素材を2024年に商用化するとし、サムスンディスプレイがUDCより早く青色燐光OLED素材を商用化すると推定している。ところが青色TADF OLED素材の商用化時点については推定が出ていない。TADF商品化の時点はいつと見られますか? 

 

A。質問の中に答えがある。TADFと比較してリン光方式は製品寿命などで長所がある。 

 

Q。OLEDの最も強力な競争技術は何だと思いますか?

 

A。OLEDの競争相手はOLEDだ。OLEDは依然としてアプリケーションを拡大している。今後10年間はOLEDがディスプレイ市場をリードするだろう。

 

Q。スマートフォン市場は飽和状態であり、中国のスマートフォンメーカーのOLED採用成長率は遅い。サムスン電子のOLEDスマートフォンはむしろ減っており、アップルマンスマートフォンOLED分野で成長しているようだ。OLEDの新しい成長はどこから出てくるのでしょうか? 

 

A。IT製品用OLEDだ。IT向けOLED需要が増えている。IT製品は画面サイズが大きく、ツースタックタンデム(Two Stack Tandem)構造が適用される可能性が高く、OLED市場の成長をリードすることができる。

 

Q。AR・VRメタバスディスプレイでマイクロOLED(OLEDoS)が使われるとしても、依然として画面サイズが1インチ内外で、今後数年が経っても世界中のメタバス機器出荷量は数千万台水準にとどまるだろうという見通しが依然として出ている。OLED市場の成長に与える影響は大きくないかもしれません。

 

A。一次的には正しい話だ。短期間にマイクロOLEDを適用したメタバスディスプレイ市場が急成長しないだろう。マイクロOLEDだけを見てみると、市場の成長が急にならない可能性があるが、残りの分野のOLED浸透率の拡大とともに考えなければならない。そしてGoogleやAppleなど世界の主要IT企業がメタバスディスプレイを開発するために飛び込んだ。多くの機会が生まれる。 

 

Q。マイクロディスプレイ分野では、マイクロOLED(OLEDoS)の競争技術として、マイクロLED(LEDoS)がしばしば挙げられる。

 

A。マイクロLEDは、チップの転写(Transfer)工程などによる高コスト問題や信頼性問題など、まだ解決すべき課題が多い。マイクロOLEDに青色燐光OLED材料が適用されると、製品寿命も延びることができる。 

 

Q。UDCが開発中であるか、現在興味を持っている他の技術分野は何か?

 

A。新しい製造印刷工程である有機気相ジェット印刷(OVJP:Organic Vapor Jet printing)を研究している。OVJPはパネルメーカーがガス蒸気(gas vapor stream)を使用してマスクセットや溶剤なしでも赤色・緑色・青色の小分子物質を基板に直接印刷することができる。OLED産業は数十年間、8.5世代以上のガラス基板に赤(R)錆(G)青(B)画素を並列配置したOLEDテレビ用パターニング製造工程を追求してきた。OJVPは、低コスト、高性能、高スループット、高効率、大面積OLED製造プロセスプラットフォームである。

 

Q。IMID 2022では、高効率デバイス性能を達成するためのプラスモニック技術を研究していると明らかにした。

 

A。プラスモニックポレッド(Plasmonic PHOLED)アーキテクチャは、エネルギー効率の高いプラットフォームの一部である。次世代OLED材料と技術発掘、開発・伝達のためのOLED技術発明と共にするエネルギー効率の研究を始めた。現在、プラズモンモードでエネルギーを抽出するためにナノ粒子ベースのアウトカップリング方式を使用するプラスモニックポレッドを開発しています。新しいアーキテクチャは、ポレッドの寿命とエネルギー効率の点で新しいレベルのパフォーマンスをサポートする。