Visionox、IT向けのOLEDの設備投資を検討しているが…実施の可能性は低い


2022.04.11 The Elec

 

中国ではBOEに続き、VisionoxもIT向けOLED投資を検討している。しかし、業界ではVisionoxのIT用OLED投資の執行の可能性を低く見ている。Visionoxの技術力が不足しているうえ、資金事情が良くなく、中国政府の支援金を狙った投資検討との見方が優勢だ。

 

11日、業界によると、VisionoxはタブレットやノートブックなどのIT製品用有機EL(OLED)技術開発を検討中だと把握された。IT製品の寿命は5年内外で、スマートフォン交換サイクル2~3年より長い。IT製品用OLEDには、発光層を2層に積み重ねる「2スタックタンデム」構造の実装が有利である。

 

Visionoxは2スタックタンデム構造を適用するためのIT用OLEDラインで、6世代(1500x1850mm)はハーフカット(Half Cut)・垂直蒸着、8.6世代(2250x2600mm)はハーフカット方式蒸着技術を検討中だという。第6世代ラインは今年、河北V3ラインに設置し、8.6世代ライン候補地域は成都などの2か所である。すでにVisionoxは、国内外の製造装置メーカにIT用第8世代OLEDの生産に必要な装備コンセプトなど検討を要請したと把握された。

 

Visionoxの計画は、まず6世代ラインでIT用OLED技術を先に量産または検証した後、8.6世代技術に進むと推定される。サムスンディスプレイとLGディスプレイ、BOEなどはいずれも今はIT用8世代ラインがないため、6世代ラインでIT製品用OLEDを優先量産し、その後に8世代ラインで対応するという計画を持っている。これまでの6世代ラインでは6インチ内外スマートフォンOLEDパネルを製造したが、10~20インチタブレット・ノートブックOLEDは8世代ラインで作れば経済性で有利だ。

 

しかし、韓国の業界ではVisionoxのIT用OLEDの実際の投資の可能性を低く見る観測が優勢だ。サムスンディスプレイとLGディスプレイ、BOEはいずれもAppleが大型のOLED顧客会社があるが、ビジョンオックスは生産量も少なく大型の顧客がない。

 

市場調査会社オムディアによると、昨年のVisionoxのフレキシブルOLED出荷量は1850万台、リジッドOLED出荷量は2020万台だった。BOEと比較すると、リジッドOLED出荷量はVisionox(2020万台)がBOE(1480万台)よりも多いが、フレキシブルOLED出荷量はVisionox(1850万台)がBOE(5300万台)の3分の1にとどまる。フレキシブルOLEDがリジッドOLEDより高付加価値な製品だ。Visionoxのフレキシブル・リジッドOLEDの主な応用はスマートフォンだ。VisionoxのスマートフォンOLEDの主要顧客会社はアーナー(Huawei社から創立)、スマートウォッチOLEDの主要顧客会社はシャオミだ。

 

さらにVisionoxが第6世代OLEDラインに適用するというハーフカット・垂直蒸着技術はまだ量産検証になっていない技術だ。サムスンディスプレイとLGディスプレイ、BOEともに量産稼動中の6世代ラインはハーフカット・水平方式蒸着機を使用する。中国でも後発企業であるビジョンオックスが量産検証にならない技術開発に成功する可能性は低い。

 

業界の一部では、VisionoxのIT用OLED投資計画の検討が実際には政府支援金を狙ったものだと解釈する。中国パネルメーカーも今後は液晶(LCD)では政府支援金を受けにくく、他のメーカーと差別化されたOLED技術に投資すると発表しなければ政府支援を期待できない。

 

中国パネルメーカーは近年は政府支援金を利用して第6世代フレキシブルOLEDラインに数兆ウォンずつ投資してきたが、自国スマートフォンメーカーのフレキシブルOLED採用率が低く、ライン稼働率が高くない。米国政府の制裁でスマートフォン事業が瓦解したHuaweiが、昨年に中国スマートフォンメーカーの中でフレキシブルOLEDスマートフォン出荷量1位を占めるほどだった。昨年、ファーウェイのフレキシブルOLEDスマートフォンの出荷量は2140万台、Oppo1520万台、アーナー1430万台、Vivo1160万台、シャオミ1090万台などであった。

 

このため、業界では近い将来、中国ディスプレイ業界で大規模な投資が行われず、中国パネルメーカーもライン稼働率上昇を目指しているという見通しが優勢だ。中国のパネルメーカーがフレキシブルOLEDパネルの価格を下げながら、スマートフォンの採用拡大を図るだろうという推定も出ている。