サムスンのスライダブルディスプレイの基本コンセプトは「ツータンデム+Y-OCTA」


2022.09.29  The Elec

 

チェ・ジュソン社長が去る27日(現地時間)にサンノゼ・マクエナリーコンベンションセンターで開かれた「インテルイノベーション」イベントでスライダーブル有機発光ダイオード(OLED)試製品を公開した。この試作品は横に引くと画面が13インチから17インチまで増える。この日のスライダブルOLED試作品の画面の駆動シーンは公開されなかった。

 

サムスンディスプレイがインテルイベントで公開したスライダブルOLEDは、発光層を2層に積むツースタックタンデム構造と、タッチ電極をパネル内に適用するワイオクタ技術などが基本開発方向であることが29日に判った。まだ試作段階なので量産技術の確保までは時間が必要だという観測が優勢だ。

 

チェ・ジュソン社長は27日(現地時間)、米国サンノゼ・マクエナリーコンベンションセンターで開かれた「インテルイノベーション」イベントで横に引くと、画面サイズが13インチから17インチまで増えるスライダブルPC用有機EL(OLED)を公開した。サムスンディスプレイは世界で初めて17インチスライダブルPC試作品を公開したが、実際のスライダブル画面駆動シーンは公開されていない。

 

この日に公開されたスライダブルOLED試製品の代表的な開発仕様は、RGB OLEDを2層に積むツースタックタンデム(Two Stack Tandem)、そして封止膜(OLEDを水分・酸素から保護)上にタッチ電極を形成するオンセル(On- Cell)方式技術であるワイオクタ(Y-OCTA)、低温多結晶酸化物(LTPO)薄膜トランジスタ(TFT)などであることが分かった。

 

ツースタックタンデムOLEDは、発光層が2層であり、発光層が1層のシングルスタック方式より画面の明るさは2倍、寿命は4倍近く拡大する。現在サムスンディスプレイが量産中のスマートフォンとIT製品(タブレット・ノートブック)、車両用OLEDはいずれもシングルスタック製品だ。サムスンディスプレイは、IT製品OLED市場の開花に備えて、今年上半期のツースタックタンデムOLED開発に着手した。先月下旬の「IMID 2022」のイベントでは、車両用OLEDにもツスタックタンデムを適用する計画であることを示唆した。

 

スライダブルOLEDのもう一つの開発方向は、封止膜の上にタッチ電極を形成するオンセル方式技術であるワイオクタ適用である。パネル上にタッチフィルムを貼り付けるアドオン方式と比較すると、オンセル方式はタッチ電極をパネル内に適用するため、パネル厚さを減らすことができる。

 

スライダブルOLEDの薄膜トランジスタ(TFT)は、サムスン電子ギャラクシーSシリーズとアップルiPhone上位(プロ)ラインナップなどフラッグシップスマートフォンに使用中のLTPO TFTが基本コンセプトだ。セットメーカーは、高仕様製品で低消費電力のためにLTPO TFTを適用している。LTPO TFTは低温多結晶シリコン(LTPS)TFTに基づいており、LTPS素子の駆動に必要な複数のトランジスタのうちスイッチング素子を酸化物(オキシド)に変えたTFTである。オキシドは静止画の画面の電流を減らす利点がある。

 

サムスンディスプレイは、今回のスライダブルOLED試作品を実現するために、駆動ローラーやモーターなどを適用したものと推定される。サムスンディスプレイが去る2019年特許で出願(申請)した「スライダブル表示装置」特許明細書などにスライダブル駆動技術が紹介されている。サムスンディスプレイがサムスン電子などに供給しているフォルダブルOLEDはヒンジで画面を折りたたむ。

 

一方、サムスンディスプレイがスライダブルOLEDの量産技術まで確保するには時間がかかるという見通しが優勢だ。極薄板グラス(UTG)と透明ポリイミド(PI)フィルムなどカバーウィンドウ素材の選択も問題だ。視認性ではUTGが良いが、耐久性では透明PIフィルムが優位にある。

 

また、スライダブルOLEDは偏光板をなくしたCOE(Color Filter on Encapsulation)技術の適用も課題だ。サムスンディスプレイは、スライダブルOLEDで偏光板を置き換えるために封止の上にカラーフィルターを低温で印刷し、ブラックPDL(Pixel Define Layer)を使用するCOE技術を適用する計画だが、まだ解消されていない問題があることが分かった。

 

従来のOLEDでは、偏光板はパネル外から入る光が画素(ピクセル)間の電極に当たって反射するのを防ぎ、ディスプレイの視認性を高めるが、不透明なプラスチックシートである偏光板を光が通過すると明るさが50%以上減少し、発光効率が落ちる。OLEDから偏光板を取り除き、カラーフィルターを使うと色がより鮮明に表現され、消費電力を下げることができる。サムスンディスプレイは昨年発売されたサムスン電子フォルダブルフォンギャラクシーZフォールド3に偏光板をなくしたOLEDを業界で初めて供給した。