サムスンディスプレイ、APSホールディングスと3500PPIのFMMの開発で協力


 2023.03.17 The Elec

 

サムスンディスプレイがAPSホールディングスと画素密度3500PPIレベルのFMM開発協力を検討している。VR・AR機器に必要なRGBオレドス開発が目的だ。APSホールディングスは昨年末に、3000PPI水準のオレドスを公開したことがある。

 

17日、業界によると、サムスンディスプレイがAPSホールディングスと画素密度3500PPI(Pixels Per Inch)レベルファインメタルマスク(FMM)開発協力を検討中だと判った。これはサムスンディスプレイが開発する計画である「赤(R)緑(G)青(B)方式」オレドス(OLEDoS:OLED on Silicon)と関連が深い。オレドスは超高解像度画面が必要な仮想現実(VR)・拡張現実(AR)機器に使用できる。 

 

シリコン基板上に有機EL(OLED)を蒸着するオレドスは大きく2つの構造に分けられる。LGディスプレイは、ホワイト(W)-OLED上にRGBカラーフィルタ(CF)を形成する「WOLED+CF」方式オレドスを開発している。W-OLEDから出た白色光がRGBカラーフィルタを通過し、色を表現する。

 

その後に遅れてオレドス技術を開発し始めたサムスンディスプレイは、RGB OLED画素を同じ層に隣接蒸着する「RGB方式」オレドスを主力開発する計画だ。サムスンディスプレイは、RGBオレドス開発のためにすでに米国A社と協力も検討中だという。該当企業もRGBオレドスを着実に開発してきた。

 

サムスンディスプレイがAPSホールディングスと3500PPI FMM協力を検討するのは、潜在顧客企業がVR・AR機器の表示画素密度が3500PPIにならなければならないと判断したためと推定される。すでにアップルはサムスンディスプレイとLGディスプレイなどに3500PPI水準のオレドス開発を要請したことがある。Appleは過去2800PPIレベルのオレドス開発を要請したが、これを3500PPIに上げた。

 

APSホールディングスはRGB方式オレドスに必要なFMMを開発している。昨年末、3000PPI水準のオレドスも公開した。APSホールディングスでFMM事業を担当するAPSマテリアルズは忠南天安のオレドスFMM研究開発(R&D)ラインで有機物蒸着と封止(OLEDを水分・酸素から保護)工程を行っている。

 

APSホールディングスはレーザーパターニング方式でFMMホールを加工する。従来の中小型OLEDに使用中のエッチング(エッチング)方式では、600PPI以上の超精密ホール加工には限界があると見られるからだ。

 

昨年末APSホールディングスは「超高解像度FMMコアはホール加工技術と超薄膜インバー(Invar、ニッケル-鉄特殊合金)」とし「髪の厚さより薄くインバーを加工しながら、厚さのバラツキと物性を維持しなければならない」と説明した。続いて「2018年から独自の超薄膜インバー加工ラインを運営中」とし「3000PPIレベルFMM用インバーも独自技術を適用した8マイクロメートル(um)厚製品」と付け加えた。現在、QHDスマートフォンOLEDに使用中のFMM用インバー厚さは18umだ。

 

当時APSホールディングスは「3000PPIレベルFMMを開発するため、既存のレーザー加工機を最大4000PPI以上の能力に改善した」と明らかにした。また「FMMをもとに蒸着、封止工程技術も開発し、RGB方式のオレドスディスプレイパネルまで製作できる」とし「自社で製作したサンプルを国内外のパネル、機器メーカーに提供し、技術協力・事業化を議論中」と付け加えた。

 

APSホールディングスは2024年までに4000PPIのARグラス試作品の製作を目指すオレドス国策課題主管機関だ。課題名は「拡張現実用高輝度と高解像度を持つ自発光OLED用マイクロディスプレイ技術開発」だ。また、APSホールディングスは、レーザーパターニング方式を活用した第6世代ハーフ基板サイズ用の600PPI級FMMスティック製造技術、熱変形の少ないインバー素材を活用したFMM製造工程などを含む国策課題も今年まで行う。

 

一方、LGディスプレイはWOLED+CF方式オレドス開発に注力している。日本のソニーがアップルの最初の混合現実(MR)機器に供給すると予想されるオレドスもWOLED+CF方式だ。WOLED+CF方式は、白色の光がカラーフィルタを通過するので、輝度が下がる欠点がある。光の明るさはコントラスト比につながり、画質表現力の差につながる。

 

サムスンディスプレイは昨年半ばからオレドス開発に乗り出した。これまでは市場が小さいと判断して大きな関心を置かなかった分野だが、サムスン電子など顧客企業の要請で遅れて参入した。サムスンディスプレイは既存のWOLED+CF方式オレドスは参入障壁が低いと判断し、RGB方式オレドスを優先してに開発するという目標を立てた。しかし、WOLED+CF方式オレドスも3500PPIの実装が可能なため、あえてRGB方式オレドスを開発する必要はないだろうという意見もある。

 

しかし実在世界に仮想イメージを加えるAR機器ディスプレイはまた別の話だ。AR機器では、シリコン上に発光ダイオード(LED)を形成するレドス(LEDoS:LED on Silicon)技術がオレドスより有利であるという見通しが優勢である。ユーザーが着用した機器の外部が見えないVR機器とは異なり、外部が見えるAR機器では光がより明るくなければならないからだ。ただし、超高解像度画面を実現するには、LEDチップを小さくする必要があり、LEDが小さくなると特性が低下する欠点がある。