サムスンディスプレイが8.6G QD-OLEDラインの投資決定を行うようである


○2022年12月12日 UBIリサーチのWeeekly Reportより

 

サムスンディスプレイ(SDC)がIT用OLED生産ラインとしてQD-OLEDを選択すると予想される。 これまでSDCは、アルバックの縦型蒸着機を用いてRGB構造のOLED開発と量産の方向であったが、最近ではQD-OLEDが量産傾向となっている。 SDCは、 22年下半期に縦型蒸着装置の発注を目標としていたが蒸着装置の発注が遅れており、水平蒸着装置を生産するキャノントッキも同時に装置検討を行っていることが分かった。

 

8.6GラインではIT用27インチOLEDを生産すると予想されている。

 

8.6GでRGB構造のOLEDを製造するには、ファインメタルマスク(FMM)が必要である。水平蒸着時にはFMMのたわみ現象があるため、高解像度画素作製は不可能であるが、縦型蒸着ではFMMのたわみを防止できるため最適な方法である。水平蒸着では蒸発した発光材料が熱拡散によって基板に成膜されるが、縦型蒸着では熱拡散によって発光材料を基板に均一に蒸着しづらいため、強力に発光材料を吹き付けることができる蒸発源が求められる。 したがって、最初に導入する縦型蒸着方式では量産時に多くの課題が発生する恐れがある。

 

これに対し、QD-OLED製造はオープンマスクを使用するため水平蒸着が可能である。 SDCはすでに8.5Gラインで65インチと55インチ、34インチOLEDパネルを生産しており、歩留まりが90%に達しているため、27インチパネルの生産も高収率を確保できると予想される。

 

QD-OLEDに投資されるという予想が確実なのは、インクジェット機器メーカーのKateevaがSDCに8.5G用の装置を供給すると発表したためである。

 

QD-OLEDは青色蛍光材料から出る光をQDとカラーフィルターを通して緑と赤を作り出す。 SDCはQD層とカラーフィルター層製造の両方にインクジェット装置を使用している。

 

8.6Gラインでは27インチパネルが同時に生産が可能なため、15Kラインで稼働率90%、収率90%の状況で年間約350万台の27インチパネルが生産できる。 UBI Researchが予想する2024年のモニター用OLEDパネル市場は150万台である。したがって、この場合には250万台程度のキャパが残る。 だが8.6ラインで55インチパネルが年間88万枚生産が可能なので、残るキャパの余裕は場合によってTV用大型OLED生産に投入できる。

 

つまり、8.6Gラインは8.5Gラインと基板サイズがほぼ同じであるため、さまざまな状況に応じた生産戦略を駆使できるメリットがある。

 

SDCの8.6G QD-OLEDラインは、生産が停止した8.5G LCD製造ラインを活用する計画だ。

 

また、SDCは酸化物TFT製造に9マスク工程を使用しているが、最近に7マスク工程の開発を完了し、顧客からのパネル承認を待っている。

 

SDCは2023年に8.5GラインでQD-OLEDパネルを180万枚程度生産すると予想されている。 顧客はサムスン電子とソニーであり、顧客社別の供給量はサムスン電子に150万台、ソニーに30万台とみられる。