スマートフォン向けの有機ELパネルの利点と需要拡大の予測、中小型パネルの設備投資予測


2017年1月10日 新韓金融投資(Shinhanレポート)

OLEDスマートフォン需要、2020年まで年平均26%の成長予想 

グローバルOLEDスマートフォンの需要は、2015年に2.6億台から2020年に8.3億台に年平均26%の高成長が予想される。
1)2017年のAppleのiPhone、
2)Oppo、vivoなど中華圏企業の導入増加、 
3)サムスン電子、中低価のスマートフォンの拡大、
4)フォルダブルスマートフォンがスマートフォン用OLEDの需要を牽引
する見込みである。ノートパソコン、自動車用ディスプレイ、VR(バーチャルリアリティ)などの新規アプリケーションの OLED採用が開始されており、今後、中小型OLEDの需要成長は続く見通しである。 

グローバル中小型OLED生産能力、2020年までに3.8倍に拡大 

中小型OLEDの需要急増に対応するために、ディスプレイメーカーは積極的な投資をしている。グローバル中小型OLED生産能力は6世代換算基準で2016年211K /月から2020年 830K /月まで拡大する見通しである。
2016年までは、サムスンディスプレイ、LGディスプレーが投資を主導し、2017年からは中国企業を中心とした海外メーカーの積極的な投資が予想される。韓国を除く海外企業の年間の中小型OLED投資は2016年46K /月→2017年179K /月→2018年 227K /月大幅に増加する予定である

スマホ向けのOLEDのLCDに比べた利点

1.構造 - OLEDの最大の利点は、LCDとは異なり、バックライト(BLU)とその他の光源フィルムが入らず、自ら光を出すという点である。比較的単純な構造で構成されており、50%以上薄く重量も軽い。また、既存のガラスにパネルの上、下部を保護していたrigid OLEDで、今後、プラスチック系の ポリイミド(PI)に切り替える場合に、折れたり折りたためるフレキシブル、フォルダブル、ローラーブのような新しい形状態の表示装置も実装が可能となる。 

2.性能 - OLEDは、深い黒の色の実装、高応答速度、コントラスト比、視野角、重さなど多くの面で LCDに比べ優位性を持っている。欠点は自己発光するOLEDの素材(特に青色)の限定的な寿命とこれによる焼付け現象(特定画素の寿命あるいは色がぼやける)現象が指摘されている。しかし、最近の技術の改善により、バーンイン現象は、解決がされていることが確認されている 最近は短くなっている携帯電話の交換サイクルを考えると寿命の問題は限定的と判断される。 

3.コスト - 2010年、サムスン電子のスマートフォン用OLEDの量産開始後6年ぶりにスマートフォン用Rigid OLEDコストがLCDに比べ低下した。バックライトがないので、構造的に材料費が低いことができる構造に 初期量産設備の減価償却費の減少が固定費の削減効果につながっているという判断である。技術的に製造工程が成熟期に入ったLCDとは異なり、今後1)歩留り、2)稼働率、3)減価償却費、4)材料費の改善余力がまだあるので、将来の技術の進歩に応じてLCDに比べ確実なコスト競争力を持つことができる。 

4.その他の製品の拡張性 - 最も高い成長の可能性を秘めた製品は、スマートフォンである。OLEDの相対的な 強みを活用して自動車用ディスプレイ(柔軟性、視野角)、VR(速い応答速度、高解像度)、スマートウォッチ (柔軟性、電力消費)分野でも市場拡張が可能である。Rigid OLEDに入るガラスをポリイミド(PI)基板にした場合には、flexible、rollableと新しい形態の製品が量産可能な利点もある。

グローバルOLEDスマートフォンの需要、2015年の2.6億台→2020年8.3億台の展望

2016年に予想されるスマートフォンの出荷台数は約14億台になる。2015年の14.4億台と同じレベルであるが、小幅のマイナス成長が予想される。今年発売されたフラッグシップモデルであるアップルのiPhoneの7とサムスンのGalaxy S7は、それぞれ光沢ブラック、 ブルーコーラルのような新しい色モデル発売で差別化をしようとしたが、消費者が魅力を感じる点では、不足している評価が多い。革新という名の下に高成長を続けてきたスマートフォンは壁にぶつかっている。

停滞したスマートフォン市場の中で、性能とform factor(製品形態)の側面で、既存のLCDベースのスマートフォンに比べ強みを持ったOLEDスマートフォンの需要が急速に成長している。 OLEDスマートフォンの始まりは、2010年にサムスン電子WaveとGalaxy Sシリーズである。グローバル1位の サムスン電子の専有物とされていたOLEDスマートフォンは2017年からグローバル2位であり、フラッグシップ製品の基準で1位アップルの一部のモデルに導入される見込みである。世界的な需要の30~40%に達するサムスンとアップルに 続いてOppo、vivo、Huaweiなど中国企業のOLEDの需要も急速に増えている。 

グローバルOLEDスマートフォンの需要は、2015年の2.6億台→2017年4.5億台→2020年8.3億台と平均26%の高成長に伴い、OLED浸透率は、2015年の19%から2020年45%まで増える見込みである。 IHSによると、2018年からスマートフォン用OLEDパネルの売上高は186億ドルで、LCDパネルの出荷金額である 176億ドルを上回る見込みである。

需要を導く4つの軸:1)iPhone、2)中国、3)サムスンの中低価モデルの拡大、4)フォルダブル

スマートフォン用OLEDの需要の伸びを導く3つの軸は、1)2017年のAppleのiPhone、2)Oppo、vivo、 Huaweiなど中国企業の導入増加、3)サムスン電子内の中・低価格モデルを採用拡大だ。 

アップルは2014年の1.9億台、2015年2.3億台のスマートフォンの販売を記録した。一方、2015年で2.6億台のOLEDスマートフォンの65%が、1.7億台がサムスン電子の製品である。現在、唯一の小型OLEDパネルを量産可能なサムスンディスプレイの現実的な生産能力を考えると、Appleは17年の3つのモデルのうち1つに、2018年には全モデルにOLED導入が予想される。17,18年のiPhoneの販売台数を15年販売量の30%、100%である7~8千万台、2億台に単純に推定してみても、全体OLEDの需要が20~80%が増える大規模な市場である。LCDベースのレティナディスプレイにこだわりてきたアップルの変化は、他のスマートフォンメーカーの戦略の変化にも大きな影響を与えることができる象徴的な変化だ。 

2015年中国のスマートフォンメーカーのためのOLEDパネル出荷量は上位10社の中国のスマートフォンメーカーの出荷台数の約 10%に相当する5,500万台を記録した。中国のスマートフォン市場では、中国のローカル企業はOLEDの割合の拡大を通じて差別化を試みている。OLEDの導入拡大に最も積極的な企業は、第3四半期ベースのシェア1,2位に上がったOPPOとVivoである。2016年 OPPOとVivoのOLED搭載割合は39%、35%で、2015年37%、25%に比べ増える見込みである。 Huawei、Xiaomi、Gioneeなども導入拡大を計画中であるので、2016年の中国のスマートフォンメーカー向けのOLEDパネル出荷量は、前年比81%増の1億台を期待する。 

サムスン電子のスマートフォン内OLED搭載の割合は、14年44%→15年54%→1H16 80%まで増加している。最近6ヶ月間発売されたスマートフォンの中でJ Max、On7 Proを除いては、すべてのOLEDを搭載した。ギャラクシーS、ノートシリーズと同じハイエンド市場では、flexible OLEDを、ミッドエンドでは、 rigid OLEDを、ローエンド製品でもOLEDの割合を増やす戦略が展開される見通しである。

2020年の中小型OLED生産能力は2016年比で3倍に増加見通し 

スマートフォンを含めてVR、自動車、ノートパソコン用などの中小型OLEDパネルの需要拡大に対応するためのパネル各社の投資が活発に行われている。グローバルな中小型OLED生産能力は第6世代換算の基準で2016年の211K /月から2020年で830K /月まで3.6倍に増える見通しだ。 

2016年の中小型OLEDパネル市場は、サムスンディスプレイが生産能力基準の85%、パネル出荷量機準の99%のシェアで圧倒的な位置にある。今年だけでグローバルの年間投資規模の60%に近い120K /月の投資を執行し、少なくとも2019年までは、グローバルな生産能力の半分以上を占めることが予想される。 LGディスプレーは大型OLED生産ラインを保有している唯一のメーカーとして技術力にあるが、中小型の生産能力はまだ不足している。2016年のE5ライン15K /月、E6ラインに15K /月の投資が予想されて、今後P10ライン10兆ウォンの投資を行って中小型の生産能力を大幅に拡充する予定である。 

サムスンとLGを除く海外企業の中小型OLED投資は、2016年46K /月→2017年179K /月 →2018年212K /月、と安定した拡大が予想される。大多数の中国パネルメーカーの場合、政府補助金とその低金利のメリットとして、実際の企業の投資額は10~20%に過ぎないことにより、量産性や過剰供給のリスクを心配しないで積極的な投資が行われている。2016年グローバル中小型OLEDの生産能力に7%に過ぎない海外メーカーの割合は、2020年39%まで拡大する見通しである。 2020年グローバル予想での中小型OLEDパネルの生産能力は830K /月で、8.3億台の5.5インチスマートフォンパネル需要に基づた、必要な生産能力の538K /月を超えることになり、中小型OLED需要を超える供給過剰のリスクが存在しているように見える。

しかし、需要面では、1)中小型OLEDパネルの需要の10%に該当するノートパソコン、VRなどへのOLED供給の拡大の可能性、2)現在のスマートフォンに比べ必要面積が2~3倍になることができるフォルダブルスマートフォンの 2018年以降にリリースの可能性を考えると、実際の需要量は予想よりも増えることができる。供給面では、1)中国企業のLTPS Backplaneの量産経験不足、2)封止、PI Curing、LLO などOLED工程内技術的な問題、3)中国の1次政府の補助金が執行されている状況で、2次補助では、実際の量産性を備えた企業を中心に行われることができる点を勘案すると、大規模な投資は行うが、実際の量産能力を備える企業は限定される見通しだ。

サムスンディスプレイ、中小型OLEDパネル向けの設備投資の計画

サムスンディスプレイが保有している2016年末での6G基準の中小型OLEDパネルの生産能力は、Rigidで 134K /月 (A1 28K /月、A2 106K /月)、Flexibleで 48K /月(A2 21K /月、A3 27K /月)であり、世界全体の生産能力の約86%を保有している。 

2017年の中小型OLED投資は60K /月で、グローバル企業のうち最も多い金額の投資執行が予想される。2016年には10.9兆ウォン(2015年4.7 兆ウォン)の投資を行って、120K(Flexible 105K /月:A3 90K /月、Rigid:A2-E 15K /月)の能力向上をした。2017年には前年より減少した60K(Flexible:A4 45K /月、Rigid:A2-E 15K /月)の設備投資の予定である。 

A3ライン120K /月の105K /月は、AppleのiPhoneの供給のために、残りのFlexible 30K /月(A3 15K /月、 A4 15K /月)、Rigid 15K(A2-E 15K /月)は、サムスン電子のスマートフォンやVivo、Oppoなどの外部供給用途で使用される見込みである。2016年の投資が執行されたA3ラインは、2017年10月から120K /月がフル稼働する見通しである。AppleのiPhone用に使われる105K /月の場合の収率80%、稼働率80%としてた場合では、2017年1.02億台、2018年2.09億台の5.5インチスマートフォン用パネルが生産可能である。年間2億台 レベルのiPhoneの販売台数を仮定した場合、2017年の3つのモデルのうちの1つのモデルに、2018年の全モデルに供給可能な規模である。

LGディスプレー、中小型OLEDパネル向けの設備投資の計画

LGディスプレーは大型と中小型OLED生産ラインを同時に保有している唯一の企業だ。中小型OLED基準投資規模は、2016年30K /月→2017年30K /月→2018年15~30K /月と予想した。 

大型OLEDパネルの生産能力は、第8世代の基準で2016年は36K /月、2017年でE4-2投資(26K /月)、2018年でE4-3投資(24K /月)を行い、これらが完成時の2019年には86K /月と、2016年比で約2.4倍に増える見通しだ。

中小型OLEDパネルの生産能力は現在のE2ラインで、第6世代の基準で11K /月規模である。現在進行中の中小型OLED投資が完了する場合、中小型OLED生産能力は第6世代の基準で、2017年59K /月→2018年71K /月まで増加する見通しだ。 

第4.5世代の第6世代の基準で22K /月規模のE2の生産ラインは、現在のアップルウォッチ用に供給している。新たに増設されている第6世代 E5ラインから7.5K /月は自動車用ディスプレイ、7.5K /月はHuawei、小美のような中国のスマートフォンメーカに採用がされる見込みである。第6世代E6ラインは15K /月規模だけの資金が執行されており、今後 45K /月まで増設が可能である。AppleのiPhoneのためのラインで活用される見込みであり、45K /月まで増設になる場合、E6ラインでのみ2018年の年間で5.5インチのスマートフォン用パネルを約5,000万台の生産ができる見込みである(収率80%、稼働率80%の一括適用)。 

年間4~5兆ウォンの規模での投資を進行中のLGディスプレーは、資金に余裕のあるサムスンや、中国政府の補助金を受ける中国企業に比べ、投資規模が比較的小さな規模で進められている。現在1.8兆 ウォンの投資を介して構築されている坡州P10ラインは中小型6世代と大型10.5世代ラインが同時に進行される予定で、今後10兆ウォンの投資が予想される。今後の投資の方向性は、中小型の場合、iPhone用 LTPS LCDライン(4.5世代55K /月、6世代40K /月)の有機ELへの切り替え、大型は素子の寿命、コストなどの技術改善や機器の需給に応じて決定される見通しだ。