韓国の蒸着マスクメーカ、ウェーブエレクトロニクスでの開発動向


2019.09.03 ET News

 

高品質、高解像度のフレキシブル有機EL(OLED)を実現できる重要部品の一つは、シャドウマスクやファインメタルマスク(FMM)と呼ばれる蒸着パターンのマスクである。韓国が世界初のOLEDを商用化し、世界の中小型OLED市場の約95%を占めるほどの競争力が強大であるが、重要部品であるFMMは、日本が世界市場を独占している。

 

FMMは、紙よりも薄い20マイクロメートル(㎛)の厚さの金属薄膜に目に見えないほど微細な約2000万個の穴があいている。有機物蒸着工程で高温を加えて粉末状有機物を直接気化させ、気化した有機物がFMMを通過して基板に付着して画素を形成する。

 

このときFMMが厚つかったり、穴が正しく形成されていない場合、正確な位置に有機物が成膜しない。赤・緑・青(RGB)画素が互いに重ねて形成される現象が発生する。画素が重なって形成されると、色を正しく表現することができないので、完全なディスプレイの解像度と品質が低下することになる。

 

現在、日立金属が超薄膜を形成するスーパーインバー(Invar)の製作技術を世界で唯一保持している。大日本印刷(DNP)が日立金属と協力して、この素材を使用したFMMを世界市場に供給する。世界の中小型パネルメーカーのほとんどがDNPが提供するFMMに依存している。

 

韓国企業のウェーブエレクトロニクス(代表バクチョンソク)は、日本が掌握したFMM市場に固有の国産技術で挑戦している中小企業である。

 

ウェーブエレクトロニクスは電鋳メッキ法で極薄の金属を製作して、パターンを刻む独自の技術を確保した。電鋳メッキは鉄とニッケルを一定の割合で混ぜて電気を加えて、金属薄膜を形成する方式である。薄膜全体に金属成分が均一に形成されるようにする別の技術も開発した。超薄膜を形成することができると同時に熱を加えても、マスクが簡単に伸びないように熱膨張係数(CTE)も一定水準を備えるいる。

 

現在のウェーブエレクトロニクスは、フルHD(400ppi)の解像度に適したFMMの開発を完了した。しかし現在のプレミアムスマートフォンの解像度はほとんどQHD(550ppi)級である。UHD(800ppi以上)の解像度は、FMMと蒸着技術の限界にまだ実現していなかった。UHDを実現するために、さらなる技術を開発している。

 

DNPは、化学溶液を使用したエッチング(エッチング)方式でFMMを製作する。従来のエッチング方法では、UHDの実現が不可能だというのが業界の大半の意見だ。

 

ウェーブエレクトロニクスは電鋳メッキ方法でUHD級を実装することができていると判断した。従来のエッチング方法は、穴の形状を多様に造成することができず、マスクの厚さには限界がありが、電柱メッキ方式は多様にパターニングすることができ、厚さも5㎛まで実現することができるからである。

 

ウェーブエレクトロニクスの関係者は「数年前にフルHD級解像度の製品では、日本の競合他社と匹敵する性能の製品を確保し、QHD解像度の製品も日本の競合他社と同じようなレベルの熱膨張係数を確保し、今年初めに特許も出願・登録した」とし、 「QHD解像度の製品も、数ヶ月内に競合他社の製品を置き換えることができるレベルで検証している」と述べた。

 

また、「量産設備を整えれば、フルHD級FMMから始めて、代替供給が可能である」とし「ウェーブだけでなく、政府と顧客企業が力を合わせて6世代級の大規模な製造ラインを備えるかが課題」と強調した。

 

一方、ウェーブエレクトロニクスの子会社レプトはOLEDパネルの製造に必要な新しい有機材料を開発し、次世代OLED材料構成のM10に量産供給する成果を収めた。日本の材料メーカの独占供給分野で、より高い性能を実現して、消費電力が少なくなり、サムスンのサプライチェーンに参加することに成功した。

 

シャドウマスクのサンプル
シャドウマスクのサンプル