サムスンディスプレイが「COMPUTEX 2025」で、酸化物バックプレーンを採用したIT向け有機ELを初公開


2025年5月20日  The Elec

 

サムスンディスプレイが、現地時間で6月20日から23日まで台湾で開催される「COMPUTEX 2025」において、酸化物バックプレーン(TFT)を採用したIT向け有機EL(OLED)を初公開すると20日に発表した。サムスンディスプレイがCOMPUTEXに参加するのは今回が初めてとなる。

 

同社は現在、IT用第8世代OLEDライン(A6)を酸化物TFT方式で構築中であり、「2026年の量産を準備中」と説明している。

 

酸化物TFTを適用したIT OLEDの製品名は「UT One」とされている。「UT」は超薄型(Ultra Thin)構造を、「One」は1ヘルツ(Hz)の可変リフレッシュレートに対応する低消費電力技術を意味する。

 

UTはサムスンディスプレイがこれまでサムスン電子などに供給してきた従来のIT OLEDよりも薄型である点が強調されている。従来のIT OLEDは、上下2枚のガラス基板を使用するリジッドOLED方式だった。下側ガラスはバックプレーン用、上側ガラスは封止用である。

 

サムスンディスプレイは20日、台湾で20日~23日(現地時間)に開催される「Computex 2025」で、酸化物バックプレーン(TFT)を搭載したIT有機EL(OLED)を初公開すると発表した。(出典=Samsung Display)
サムスンディスプレイは20日、台湾で20日~23日(現地時間)に開催される「Computex 2025」で、酸化物バックプレーン(TFT)を搭載したIT有機EL(OLED)を初公開すると発表した。(出典=Samsung Display)

 

UTではバックプレーン用の下側ガラス基板はリジッドOLEDと同様に使用するが、封止用の上側ガラスを薄膜封止(TFE)に置き換えることで、パネル全体の厚みを薄くしている。さらに、下側ガラス基板にも追加エッチングを施すことができる。業界ではこのUT方式を「ハイブリッドOLED」と呼んでいる。

 

サムスンディスプレイは「UTは従来製品(リジッドOLED)より30%薄く、30%軽量である」とし、「UTによって減る重量は、ノートパソコン用バッテリーセル1個(約50g)と同程度で、バッテリー容量の増加や携帯性の向上につながる」と述べた。

 

この製品は酸化物TFTを適用することで、IT用OLEDとして初めて1Hzの可変リフレッシュレートをサポートする。ディスプレイに表示されるコンテンツに応じてリフレッシュレートを1Hzから120Hzまで切り替えることができ、消費電力を抑えることが可能になる。

 

また、サムスンディスプレイは「酸化物TFTは電子の移動速度が速く、大画面・高解像度製品に適しており、漏れ電流が少ないため低消費電力特性の実現に優れている」と説明している。漏れ電流とは、画素のオン・オフを制御するTFTがオフ状態であっても電流が流れる現象を指す。この場合、輝度が不安定になり、ユーザーの目には画面がちらつくように見える。特に10Hz以下の低リフレッシュレート状態ではこうした現象が顕著に表れる。

 

アップルが昨年発売したOLED iPad Proには、初めてハイブリッドOLED(ガラス基板+薄膜封止)が適用された。このiPad ProのOLEDは低温多結晶酸化物(LTPO)方式TFTが使われ、リフレッシュレートは10〜120Hzに対応していた。この製品のパネルはサムスンディスプレイとLGディスプレイが供給した。

 

サムスンディスプレイは、IT用第8世代OLEDラインを第8世代ガラス原板投入基準で月1万5000枚(15K)規模で構築している。最初の蒸着装置(1号機)ではAppleのMacBook Pro用OLEDを、2号機ではApple以外の企業向けのIT用OLEDを主に生産する予定と見られている。

 

Computexでは、Samsung Displayはプレミアムモニター市場向けの大型QD-OLEDも展示します。(出典=Samsung Display)
Computexでは、Samsung Displayはプレミアムモニター市場向けの大型QD-OLEDも展示します。(出典=Samsung Display)

 

COMPUTEXでサムスンディスプレイは、プレミアムモニター市場を狙った大型の量子ドット(QD)OLEDも展示する。自発光モニター業界で最高の画素密度である160PPI(Pixels Per Inch)を持つ27インチUHD製品について、サムスンディスプレイは「最近、グローバルメーカーが相次いで27インチUHD(3840×2160)モデルを発売し、高い評価を受けている」と説明した。画素密度220PPI、解像度5K(5120×2880)の27インチ製品も披露する予定であるが、これはまだ市販化されていない。また、自発光モニターとしては最高のリフレッシュレートである500Hzを誇る27インチQHD(2560×1440)製品も展示する。

 

複数のデバイス間で画質の違いなくOLED体験を提供する「SynkroMa(シンクロマ)」も見ることができる。大形事業部長兼IT事業チーム長のイ・ジョンヒョク副社長は、「IT市場が液晶ディスプレイ(LCD)からOLEDへ急速に移行している変化をCOMPUTEXで感じることができる」とし、「多様なIT向けOLEDソリューションを通じて顧客のニーズに先回りして応え、市場の変化を主導していく」と述べた。