東京大学、原子層堆積法を用いたナノシート酸化物半導体トランジスタを開発


2023年6月14日 グローバルネット

 

東京大学生産技術研究所の小林 正治 准教授と、奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学領域 浦岡 行治 教授らによる共同研究グループは、原子層堆積法を用いて酸化物半導体のナノ薄膜を成膜する技術により、低温で形成可能なナノシート酸化物半導体をチャネル材料とする高性能で高信頼性なトランジスタの開発に成功したと発表した。

具体的には、In2O3とGa2O3を原子層ごとに交互に成膜することでInGaO(IGO)のナノ薄膜を成膜する手法を開発した。ナノシートIGOをチャネル材料とするプレーナー型トランジスタを試作・評価し、性能指標である移動度と信頼性指標であるバイアスストレス閾値電圧シフト(注3)を系統的に調査し、移動度と閾値シフトの間のトレードオフ関係を明らかにした。また、そのトレードオフを解消するために、IGOナノシートをゲートで覆ったGate-All-Around構造を提案し、試作評価を行った結果、ノーマリーオフ動作、プレーナー型に対して2.6倍の駆動電流向上、1.2倍の移動度向上、閾値電圧シフトの大幅な低減を実現したとしている。

 

 

酸化物半導体は、これまではフラットパネルディスプレイ用に主に用いられてきたが、(シャープが量産化したIGZO、飽和特性、電流制御性が良好、低オフ電流、高耐圧などの特徴を持つ)酸化物半導体は低温で形成可能かつ、高性能であることから、トランジスタへの応用が期待されてきたが、その為には酸化物半導体がナノ薄膜かつ、デバイスは微細化しても高性能・高信頼性を有する必要がある。しかし、今回の研究成果によって、原子層堆積法による酸化物半導体のナノ薄膜の均一な成膜が可能となったことで、微細なトランジスタや三次元構造トランジスタへの応用が期待される。