CES 2026に見るRGB Mini LEDの進化とメーカー別戦略 ― プレミアムTV市場が示した多層化の行方 ―


2026年1月12日/ UBIリサーチ

 

CES 2026においてRGB Mini LEDは、単一の技術トレンドというよりも、プレミアムTV市場が成熟段階に入ったことを象徴する技術として存在感を示した。従来のQD Mini LEDや有機ELを中心とした競争構造の中で、RGB Mini LEDは単なる「輝度」や「ゾーン数」の拡張競争を超え、色の生成方式そのものと制御構造を再設計しようとする試みとして登場している。ただし、CES 2026で示されたRGB Mini LEDの意味合いは、メーカーごとに明確な違いが見られた。

 

サムスン電子:Neo QLEDの最上位を再定義するMicro RGB

サムスン電子はCES 2026において、130インチのMicro RGB TVを前面に押し出し、LCDプレミアム戦略の最上位を新たに再構築した。Micro RGBは、RGB LEDをマイクロメートル単位まで微細化してバックライトとして使用し、R・G・Bをそれぞれ独立制御する構造を採用している。これはブルーLEDをベースに量子ドットで色変換を行うQD Mini LED(Neo QLED)とは、色生成の考え方そのものが異なるアプローチである。

 

サムスンのMicro RGBは、有機ELを直接的に置き換える技術というよりも、Neo QLEDではこれ以上の拡張が難しかった超大型プレミアム領域を再び引き上げるための戦略的技術として位置づけられている。特に100インチを超える超大型市場において、LCDが本来持つ高輝度のポテンシャルや耐久性、すなわち焼き付きの懸念がないという特長を「超プレミアム」として再定義し、色再現性と制御精度を前面に押し出すことで、プレミアム市場の上限基準を引き上げようとする意図が読み取れる。サムスンは130インチの展示を中心に据えつつ、2026年には55、65、75、85、100、115インチへとラインアップを拡張する方針を示し、Micro RGBをフラッグシップから段階的に広げていく構図を明確にした。

 

超大型プレミアム市場の基準を再定義し、Neo QLEDの最上位ラインとして位置づけられたサムスンの130インチMicro RGB TV(出典:サムスン電子)
超大型プレミアム市場の基準を再定義し、Neo QLEDの最上位ラインとして位置づけられたサムスンの130インチMicro RGB TV(出典:サムスン電子)

 

LG電子:有機ELを頂点に据えたMicro RGB evoの階層化戦略

LG電子はCES 2026において、RGB Mini LEDを「Micro RGB evo」という名称で紹介し、プレミアムTVポートフォリオをより明確に階層化する戦略を示した。LGの基本姿勢は、有機ELのフラッグシップとしての地位を揺るがさないことにある。有機ELは依然として画質とブランド象徴性の両面で最上位に位置づけられ、Micro RGB evoは有機ELを代替する技術ではなく、有機ELとQNED(QD Mini LEDベースのプレミアムLCD)の間に配置される「超プレミアムLCD」として定義された。

 

Micro RGB evoは、RGBバックライトを用いたLCD構造にLG独自のα AIプロセッサーを組み合わせ、色精度とトーン再現性を高めた点が特徴である。LGはBT.2020、DCI-P3、Adobe RGBのすべてを100%満たす「Triple 100% Colour Coverage」を主要な訴求点として掲げた。これは、QD Mini LEDがこれまで「高輝度」「ローカルディミング」「価格対性能」を軸に競争してきたのに対し、Micro RGB evoが「色の正確性と制御精度」を前面に出してプレミアム上位を再定義しようとする姿勢を示している。CES 2026では100、86、75インチの製品構成が公開され、超大型およびプレミアム需要をLCDで取り込みつつ、有機ELの最上位ポジションを堅持する形で、「有機EL(最上位)―Micro RGB evo(超プレミアムLCD)―QNED(QD Mini LED)」という三層構造への再編が明確になった。。

 

有機ELとQNEDの間で「超プレミアムLCD」の役割を担うLG電子の100インチMicro RGB evo TV(出典:LG電子)
有機ELとQNEDの間で「超プレミアムLCD」の役割を担うLG電子の100インチMicro RGB evo TV(出典:LG電子)

 

中国・グローバル勢:RGB Mini LEDをどう位置づけるか

ハイセンスはCES 2026において、RGB Mini LED戦略を一段階進化させた。CES 2025で初めてRGB Mini LED TVを公開し技術的方向性を示したのに続き、CES 2026では完成度を高めた第2世代RGB Mini LEDを通じて、プレミアム製品としての定着を強調した。116インチ級のRGB Mini LEDフラッグシップモデル(116UXS)を前面に配置し、超大型プレミアム領域における「RGBバックライトによる色制御」を差別化要素として改めて打ち出した。

 

特に注目されるのは、RGBにシアンを加えた4サブピクセル(RGB+Cyan)バックライト構造である。これにより色域拡張だけでなく、色分解能と色制御精度のさらなる向上を狙っている。従来のRGB構造で生じやすい色境界やフリンジの問題を緩和し、超高輝度領域でも色純度を維持するための進化設計といえる。戦略的に見れば、ハイセンスにとってRGB Mini LEDはQD Mini LEDを置き換える存在ではなく、QD Mini LED(U8/U9シリーズ)が数量と価格競争力を担い、その上位にRGB Mini LEDが象徴的フラッグシップとして位置づけられている。

 

RGB+Cyan構造により色制御精度を高めたハイセンスの116インチフラッグシップRGB Mini LED TV(出典:Hisense)
RGB+Cyan構造により色制御精度を高めたハイセンスの116インチフラッグシップRGB Mini LED TV(出典:Hisense)

 

一方、TCLはCES 2026でRGB Mini LED TVを展示したものの、それを自社の中核フラッグシップ技術として前面には押し出さなかった。TCLはSQD Mini LEDを最上位技術として維持し、RGB Mini LEDはハイエンドラインアップを補完する選択的技術として位置づけている。RGBバックライトの潜在力を認めつつも、構造の複雑さやコスト、チューニング難易度を考慮し、拡大スピードを調整する意図がうかがえる。RM9Lシリーズとして85、98、115インチまで拡張される超大型中心の構成とし、最大9,000ニット級の高輝度を訴求することで、超大型プレミアムLCD市場での存在感を確保しようとしている。

 

最大9,000ニットの高輝度に対応し、ハイエンドオプションとして位置づけられたTCLのRGB Mini LED TV(出典:TCL)
最大9,000ニットの高輝度に対応し、ハイエンドオプションとして位置づけられたTCLのRGB Mini LED TV(出典:TCL)

 

さらに中国のSMICは、CES 2026で65インチTrue RGB Mini LED TVを公開し、プレミアムTV市場への本格参入を表明した。この製品はR・G・B素子が直接発光するTrue RGBバックライトを採用し、カラーフィルターなしでBT.2020色域を100%満たす高い色純度を強調している。数千ゾーンに及ぶローカルディミングによって4,000ニット以上の高輝度と有機ELに匹敵する黒表現を両立し、無機材料による高耐久性で焼き付きの懸念がない点も訴求された。さらにRGB専用AIチップを用いて画質最適化を行うとしており、2026年下半期の発売を目標に掲げている。

 

フィルターなしでBT.2020 100%を実現し、プレミアム市場参入を示したSMICの65インチTrue RGB Mini LED比較展示(出典:SMIC)
フィルターなしでBT.2020 100%を実現し、プレミアム市場参入を示したSMICの65インチTrue RGB Mini LED比較展示(出典:SMIC)

 

UBIリサーチのハン・チャンウク副社長は、「CES 2026におけるRGB Mini LEDは『次世代TV技術』というよりも、プレミアムTV市場がどこまで到達したかを示す指標に近い。Mini LEDは数値拡張の限界に達し、有機ELもすべてのセグメントを包括するのは難しい。RGB Mini LEDはその狭間で、各メーカーが自社ポートフォリオをどのように再定義しているかを最も鮮明に示した事例である。CES 2026のRGB Mini LEDは新たな標準を宣言するものではなく、プレミアムTV市場が単一の進化路線ではなく、多様な戦略フェーズに入ったことを示す技術的シグナルとして捉えるのが最も適切だ」と述べている。