総投資額300億元、年間2万2000㎡増設、辰顕光電、ガラス基板Micro LED生産ライン拡張を計画


2026年1月30日/ 出典:JMInsights

 

ガラス基板Micro LEDへの本格拡張計画

技術革新と市場拡大という二つの潮流を背景に、辰顕光電はMicro LED分野での事業展開をさらに一段押し進めた。成都ハイテク産業開発区はこのほど、「辰顕光電2025年Micro LED生産基地プロジェクト」に関する申請受理の公告を発表している。

 

 

公開された資料によると、辰顕光電は市場需要および中長期的な成長戦略に基づき、新工場敷地内の既存建屋の未使用スペースを活用し、ガラス基板Micro LEDディスプレイの生産ラインを新たに増設する計画である。新たに印章転写装置や高性能ディスプレイ切断装置など130台以上の製造装置を導入し、総投資額は300億元に達する見込みだ。プロジェクト完成後には、年間ディスプレイ生産能力が2万2000㎡増加し、工場全体の年間生産能力は4万㎡規模へと拡大する。

 

 

シリコン基板とガラス基板の二軸体制

辰顕光電は2020年8月4日に設立された企業で、総投資額は約120億元に上る。成都高新投資集団、成都先進製造産業投資、四川省集積回路・情報安全産業投資基金、そしてVisionoxが共同出資して設立され、Visionoxは現在15.43%の株式を保有している。同社は中国大陸において、Micro LEDの自主技術開発、量産、販売を一体で手がける専門ハイテク企業を目指している。

 

同社の生産拠点は設立以降、段階的な建設と拡張を重ねてきた。現在はシリコン基板Micro LEDラインとガラス基板Micro LEDラインの二本立て体制となっている。シリコン基板の取り組みは2020年9月に始まり、第1期では12インチウエハー460枚規模によるMicro LEDディスプレイ生産を実施した。2022年には第2期計画として研究能力を540枚規模に拡張し、累計投資額は約50億元に達している。

 

 

一方、ガラス基板Micro LEDの建設は2023年頃から本格化した。成都ハイテク区の光顕柔谷研究開発パークに約4万5000㎡の工場を賃借し、約90億元を投資してガラス基板Micro LEDディスプレイ生産ラインを構築、約410台の製造装置を導入した。フル稼働後の年間生産能力は1万8000㎡に達する計画であり、さらに2025年12月には追加の増産プロジェクトを開始し、ガラス基板の年間生産能力は最終的に4万㎡規模へと引き上げられる見通しである。

 

産業化加速を見据えた戦略的判断

今回のガラス基板Micro LED生産ライン拡張は、技術的な成熟と市場拡大が本格化する直前の段階で下された戦略的判断と位置付けられる。世界のディスプレイ技術がより高性能・高集積化へと進む中、Micro LEDは次世代ディスプレイ技術の中核として、研究段階から本格的な産業化フェーズへ移行しつつある。

 

辰顕光電は、Micro LEDチップ設計、巨量転写といった基盤技術に継続的に投資する一方、先進的な生産ライン構築を通じて、試作から量産への飛躍を着実に進めてきた。今回の増産は単なる生産能力の拡大にとどまらず、製造プロセス、品質管理、技術体系全体の高度化を意味している。

 

5G、IoT、AIといった先端技術の融合が進む中、新型ディスプレイは情報インターフェースの中核として、高輝度、高解像度、低消費電力、長寿命、さらにはフレキシブル化や折り畳み対応へと進化している。自発光、高コントラスト、高信頼性、シームレス接続といった特長を持つMicro LEDは、LCDや有機ELに続く最有力な次世代ディスプレイ技術と評価されている。

 

現在、Micro LEDは高級業務用ディスプレイ、車載ディスプレイ、AR/VR、ウェアラブル機器などでの応用可能性が明確になりつつある一方、巨量転写、検査・修復、コスト管理といった課題が産業化の障壁となっている。辰顕光電がこのタイミングで増産に踏み切った背景には、技術成熟度への確信と市場拡大の好機を捉え、高付加価値ディスプレイ分野での主導権を確立しようとする狙いがある。

 

生産能力拡張の直接的な効果は、自主的かつ制御可能な産業チェーン構築にある。量産化によるコスト低減はMicro LEDの市場適用範囲を広げるだけでなく、製造過程での歩留まり向上やプロセス最適化を通じて技術革新を加速させる。さらに、材料、製造装置、モジュールまでを含む一貫したサプライチェーンの確立は、戦略産業としてのディスプレイ分野における国産化率向上と産業安全性の強化にも寄与する。

 

業界全体の視点から見ても、辰顕光電の今回の増産は単なる企業成長にとどまらず、上下流産業を巻き込んだエコシステム形成を促進する象徴的な動きといえる。生産規模の拡大とコスト低下が進めば、Micro LEDは高級業務用途からコンシューマー分野へと浸透し、新たな応用やビジネスモデルを生み出す可能性が高い。同時に、中国のディスプレイ産業はMicro LEDという最先端分野において、従来の技術的・市場的な壁を突破し、「追随」から「並走」、さらには「先行」へと飛躍する足掛かりを得ることになるだろう。

 

総じて、辰顕光電によるガラス基板Micro LED生産ライン拡張は、将来のディスプレイ技術動向に対する強い確信を示すものであり、中国の新型ディスプレイ産業を高付加価値領域へ押し上げ、国際競争に参画する重要な一歩である。今後、増産能力の本格稼働と技術進化が進むにつれ、辰顕光電はMicro LED産業化の推進者であり、同時に最大の受益者の一社として存在感を高めていくと期待される。