CES 2026で見えた車載ディスプレイの進化 ― スクリーンからプラットフォームへ進化するスマートコックピット ―


2026年1月15日/UBIリサーチ

 

2026年1月6日、米国ラスベガスで国際家電見本市CES 2026が開幕した。今回のCESでは、車載ディスプレイが単なる情報表示装置の枠を超え、車内体験を統合し知能化する中核インターフェースへと進化している姿が鮮明に示された。有機EL、マイクロLED、ミニLEDを中心とした表示技術の高度化に加え、形状革新、透明化、AIベースのインタラクションが同時に進展し、スマートコックピットの方向性が具体化した点が大きな特徴である。

 

韓国メーカー:超大型化と柔軟性で車内空間を再定義

韓国メーカーは、超大型化、形状の自由度、そして差別化されたユーザー体験を軸に、車載ディスプレイ分野での技術競争力を前面に押し出した。

LGディスプレイは、運転席から助手席までを一体化するP2P(Pillar to Pillar)有機ELディスプレイを主力展示とし、車内空間そのものを連続したデジタル環境として再定義した。最大51インチに達する単一パネルのP2P有機ELは、高解像度と優れたタッチ感度を両立し、大画面化に伴う画質劣化への懸念を払拭している。

 

さらに、ダッシュボード内部へ巻き込むことができるスライディング有機ELコンセプトも披露され、走行状況に応じて画面サイズや役割が柔軟に変化する次世代コックピット像が提示された。加えて、UDC(アンダーディスプレイカメラ)技術とDual Viewを組み合わせた車載有機ELにより、1枚のディスプレイで運転者と同乗者に異なる情報を提供する方向性も明確に示された。

 

運転者と同乗者に異なる情報を提供するLGディスプレイのDual View技術とUDC適用クラスター(出典:LGディスプレイ)
運転者と同乗者に異なる情報を提供するLGディスプレイのDual View技術とUDC適用クラスター(出典:LGディスプレイ)

 

LG電子は、LGディスプレイのパネル技術を基盤とした車載向け透明有機ELの応用事例を展示し、「見えないインターフェース」という新たな可能性を提示した。透明有機ELは、視界の開放感と情報表示を両立する技術であり、将来的にはHUDやパノラマディスプレイ、車内外のコミュニケーション手段としての活用が期待される。

 

開放感を維持しながら情報を表示するLG電子の透明有機ELソリューション(出典:LG電子)
開放感を維持しながら情報を表示するLG電子の透明有機ELソリューション(出典:LG電子)

 

サムスンディスプレイは、車両レイアウトに適応する有機ELディスプレイを通じて、空間効率と設置の柔軟性を強調した。14.4インチの「フレキシブルL」センター情報ディスプレイは、ダッシュボード構造に合わせてL字型に曲げられる設計となっており、13.8インチの乗員情報ディスプレイ(PID)は、同乗者がいない場合にダッシュボード下へ収納できる構造を採用している。また、500Rの曲率を持つ堅牢な有機ELパネルをガラス基板ベースで実装し、視覚的完成度と設置性を同時に高めた点も訴求された。

 

中国メーカー:統合型コックピットとHUD高度化を加速

中国メーカーは、超大型統合ディスプレイとHUD(ヘッドアップディスプレイ)の高度化を軸に、技術スペックとシステム統合力を前面に押し出した。

BOEは「HERO 2.0」スマートコックピットを通じて、ディスプレイを中心としたシナリオベースの車内体験を提示した。5万ニットの高輝度を実現するマイクロLED PHUD(パノラミックHUD)は、強い外光環境下でも高い視認性を確保し、AI音声やジェスチャー認識と組み合わせることで、コックピットの知能化を具体化している。

 

15.6インチのUB Cellセンターディスプレイ、AIオーディオシステム、統合デジタル放送機能までを含むHERO 2.0は、車両を単なる移動手段ではなく生活空間へ拡張するというBOEの戦略を明確に示している。同時に、低消費電力のIGZO酸化物ディスプレイや炭素排出削減の成果も強調され、環境配慮型生産体制の構築もアピールされた。

 

5万ニットのMicro LEDパノラミックHUDを備えたBOEのHERO 2.0スマートコックピット(出典:BOE)
5万ニットのMicro LEDパノラミックHUDを備えたBOEのHERO 2.0スマートコックピット(出典:BOE)

 

TCL CSOTは、スライディング式センターコンソールや曲面アームレストに適用した28インチのインクジェット印刷有機ELを展示し、形状革新の面で強い印象を残した。併せて、P-HUDおよびプロジェクション方式のHUDデモを実演し注目を集めた。HVA Ultra P-HUDは複数のLCDプロジェクション構造を用いて車両前面ガラスに情報を投影する方式で、ダッシュボードディスプレイを補完または代替するソリューションとして提示された。

 

車両前面ガラスに情報を投影するTCL CSOTのパノラミックHUDソリューション(出典:TCL CSOT)
車両前面ガラスに情報を投影するTCL CSOTのパノラミックHUDソリューション(出典:TCL CSOT)

 

Tianmaは、49.6インチのC字型パノラマスクリーンを情報ハブとして位置づけ、メーターパネル、センターディスプレイ、助手席、サイドミラー領域を統合した次世代コックピットを公開した。21万個以上の独立ディミングユニットによる10万対1のコントラスト比、反射率0.55%未満の抑制技術により、超大型ディスプレイにおける視認性と安全性の両立を強調している。

 

43.7インチIRIS PHUDパノラマディスプレイやフレキシブル引き出し式ディスプレイ、ステアリングホイール内蔵小型有機ELなどのマルチスクリーン連動構成は、Tianmaのシステムレベルでのコックピット設計力を示すものだ。Visionoxも、デュアルフレキシブルAMOLEDを用いたダイナミックベンディングディスプレイにより、大画面の収納性と視認性を同時に改善するアプローチを提示した。

 

メーターパネルとセンターディスプレイを統合したTianmaの次世代コックピットとパノラミックHUD(出典:Tianma)
メーターパネルとセンターディスプレイを統合したTianmaの次世代コックピットとパノラミックHUD(出典:Tianma)

 

台湾メーカーと完成車メーカー:車載ディスプレイの役割拡張

台湾メーカーは、透明ディスプレイとシステム統合力を軸に差別化を図った。AUOは、子会社AUO Mobility Solutionsを通じて、透明マイクロLEDディスプレイ、INVISYステルスディスプレイ、AIベースのコックピットドメイン制御プラットフォームを一体展示し、ディスプレイを車両コンピューティングと結びつく中核ノードとして位置づけた。ガラス基板衛星アンテナとの融合は、車載ディスプレイが外部ネットワークと直接接続される未来像を示している。

 

イノラックスはCARUX、パイオニアとの協業により、視覚と音響を統合したコックピットソリューションを強調し、直視輝度5万ニット、反射像1万ニットに達する超高輝度マイクロLED HUDを公開した。

 

車両と外部ネットワークをつなぐ中核ノードとして位置づけられたAUOの透明Micro LEDディスプレイ(出典:AUO)
車両と外部ネットワークをつなぐ中核ノードとして位置づけられたAUOの透明Micro LEDディスプレイ(出典:AUO)

 

完成車メーカー側でも変化の方向性は明確だった。BMWは次世代iX3に適用予定のパノラミックHUDコンセプトを通じ、フロントガラス全体を情報インターフェースとして活用する未来型HUDの方向性を提示し、ディスプレイと車両設計の一体化を強調した。

 

 

フロントガラス全体を情報インターフェース化するBMWの次世代パノラミックHUDとiDriveシステム(出典:BMW)
フロントガラス全体を情報インターフェース化するBMWの次世代パノラミックHUDとiDriveシステム(出典:BMW)

 

UBIリサーチのハン・チャンウク副社長は、CES 2026で確認された車載ディスプレイの潮流について、「車載ディスプレイはもはや個別部品の競争領域ではなく、形状、システム、AI、コンテンツが融合するコックピットプラットフォーム競争の段階に入った」と指摘する。その上で、「超大型化、透明化、HUDの高度化は、ディスプレイメーカーが完成車のユーザー体験設計にどこまで深く関与できるかを測る重要な指標になる」と評価している。