日付:2026年7月23日
出典:The Elec
メモリー価格の上昇、いわゆる「チップフレーション」が進むなか、スマートフォンメーカー各社が中低価格帯モデルにおいて、解像度を抑えたフレキシブルOLEDの採用を拡大する可能性が高まっている。これはOLED採用そのものを減らすのではなく、メモリー容量やディスプレイ解像度など一部の部材仕様を調整しながら、製品全体の原価負担を下げる戦略として注目されている。スマートフォン市場では、価格競争力を維持しつつ、消費者が体感しやすい表示品質を守ることがますます重要になっており、今後は低解像度フレキシブルOLEDが中低価格帯スマートフォンの新たな標準仕様として浸透していく可能性がある。
メモリー価格上昇がスマートフォンの部材構成を変える
市場調査会社シグマインテルのリサ・リー代表は7月23日、ソウル市江南区のコワーキングオフィス「メイジーユー」で開催されたメディアブリーフィングで、スマートフォンブランド各社が低価格帯市場向けに、解像度をやや下げたフレキシブルOLEDの採用を検討していると明らかにした。あわせて、セットメーカー各社は複数の仕様を組み合わせながら製造コストを抑える方法を模索していると説明した。
現在、スマートフォンメーカーはメモリー価格の上昇分を相殺するため、パネルやカメラなど他部材の単価引き下げをサプライチェーン側に求めているとされる。ただし、単純に一つの部材価格だけを下げる対応には限界があり、実際にはSoC、メモリー容量、ディスプレイ解像度など、製品全体の構成を見直す方向に動いている。特に中低価格帯モデルでは、メモリー容量や画面解像度を抑えながらも、フレキシブルOLEDのような消費者が分かりやすく価値を感じられる仕様を残すことが、有力な現実解として浮上している。
シグマインテルは、パネルやカメラよりもSoCの価格比重が大きいため、セットメーカーは特定部材だけの値下げではなく、製品全体の原価構造を再設計する可能性が高いとみている。つまり、高価格帯製品では既存仕様を維持しつつ、中低価格帯では一部性能を調整することで採算性を守るという、価格帯ごとに異なる戦略が鮮明になる見通しだ。
OLEDは維持しながら、解像度を下げて商品力を守る流れに
リサ・リー代表は、パネルとカメラはSoCより価格が低いため、これらの部材だけでは大幅な原価削減は難しいと指摘した。そのため、ブランドメーカー各社はパネルやカメラだけでなく、他の部材も含めてコストを下げる方法を探しているという。ここで重要なのは、メーカーが単にコスト削減を優先してOLED自体を外すのではなく、OLEDを残したまま仕様調整を進めようとしている点だ。
その背景には、価格上昇に対する消費者の抵抗感がある。従来仕様をそのまま維持すれば、低価格スマートフォンでも製造コストが大幅に上昇し、最終的には販売価格の引き上げが避けられなくなる可能性が高い。メーカー各社としては、単純な値上げではなく、OLEDのようにユーザーが視覚的に価値を感じやすい仕様を維持することで、商品性を確保しながら価格競争力も保ちたい考えだ。
リサ・リー代表は、仮に価格を引き上げる場合でも、新機能を同時に提供する形になるだろうと述べ、新製品にOLEDを採用することも有効な選択肢の一つだと説明した。つまり、今後のスマートフォン市場では、性能を全面的に削るのではなく、消費者が重視する要素を残しながら、目立ちにくい部分や体感差が限定的な仕様を調整することで、コストと商品価値のバランスを取る流れが強まるとみられる。
フレキシブルOLEDは、ガラスではなく曲げられる基板を用いたOLEDパネルであり、これまで主にプレミアムスマートフォンで採用されてきた。しかし、中国パネルメーカーの供給拡大とパネル価格の下落を背景に、現在では中低価格帯モデルにも適用範囲が広がっている。今回の動きは、その流れをさらに加速させる可能性がある。
スマートフォン市場は縮小見通しでも、フレキシブルOLED比率は上昇へ
スマートフォン市場全体は、2027年にかけても厳しい環境が続く見通しだ。シグマインテルは、世界のスマートフォン出荷台数が2026年の10億6140万台から2027年には10億2640万台へと3.3%減少すると予測している。さらに、メモリー価格上昇と低価格帯製品需要の縮小が深刻化した場合、出荷台数は9億7500万台まで減少する可能性があるとみている。
需要減少は2027年第1四半期まで続き、第2四半期からは減少幅がやや縮小する見通しとされた。とりわけ中国市場は低価格帯スマートフォンの比率が高いため、世界市場全体よりも落ち込み幅が大きくなる可能性がある。メモリー供給不足の背景には、AIサーバー向けDRAMとHBM需要の急増があり、その影響で民生向けメモリー供給が圧迫されているとシグマインテルは分析している。
このメモリー価格の上昇は、スマートフォンメーカーごとの出荷シェアにも影響を及ぼす見込みだ。シグマインテルは、安定した部材供給網を持つアップルとサムスン電子はシェアを維持、あるいは拡大する可能性がある一方で、中低価格帯製品への依存度が高い中国スマートフォンメーカーは原価上昇の影響をより大きく受けるとみている。
ただし、スマートフォン販売の減少がそのままOLEDパネル需要の減少に直結するわけではない。スマートフォンメーカー各社はLCDからOLEDへの製品転換を継続しており、中低価格帯では仕様を抑えたフレキシブルOLEDの採用がむしろ拡大する可能性があるためだ。リサ・リー代表も、スマートフォン市場全体の規模が縮小したとしても、フレキシブルOLEDの構成比は引き続き上昇すると述べ、特に低価格帯向けフレキシブルOLEDの浸透率が高まると予想した。
今回の見通しは、スマートフォン市場が縮小局面に入っても、ディスプレイ技術の主役が引き続きOLEDであり続けることを示している。今後は、高解像度・高性能一辺倒の競争ではなく、原価最適化と体感価値の両立を重視した製品設計が一段と重要になりそうだ。とりわけ低解像度フレキシブルOLEDは、チップフレーション時代における中低価格スマートフォン戦略の中核キーワードとして注目度を高める可能性がある。