日付:2026年3月26日
出典:CINNO Research
中国・合肥において、世界初となる精密金属マスクレス技術を採用した第8.6世代AMOLED(有機EL)生産ラインが重要な建設段階を迎えた。Visionox系のHefei Visionox Technology(合肥国顕科技)は、主工場においてクリーンルームの清掃式を実施し、工場建設が完了して製造装置搬入および調整段階へ移行したことを正式に発表した。
このプロジェクトは合肥新站高新区に位置し、Visionoxと合肥市の投資プラットフォームによって設立された合肥国顕が建設・運営を担う。総投資額は550億元に達し、設計生産能力は月産3万2,000枚のガラス基板(2290mm×2620mm)とされる。2025年2月の着工以来、わずか168日で主工場の上棟を完了し、さらにクリーンルーム関連工事開始から122日で今回の清掃式に至るなど、極めて短期間での建設進展が注目されている。
精密金属マスクレス技術(ViP)が切り開く次世代有機EL
有機EL製造においてクリーンルームの清掃工程は極めて重要な節目であり、製造装置搬入前に徹底した清浄環境を確保することが高歩留まり実現の前提条件となる。今回のプロジェクトでも、厳格な品質管理のもとで各工程が実施され、クリーン度基準の達成が確認された。
本ラインの最大の特徴は、Visionoxが独自開発したViP(Visionox intelligent Pixelization)技術、すなわち精密金属マスクレス技術の採用にある。従来の精密金属マスクに依存した蒸着方式の物理的制約を排除し、独立画素形成や高精度パターニングを実現する革新的なプロセスである。この技術により、画素密度は最大1700ppiに達し、表示性能の飛躍的向上が可能となる。
さらにTandem構造との組み合わせにより、従来のFMM方式有機ELと比較して素子寿命は最大6倍、輝度は最大4倍に向上するとされる。これにより、小型から中大型まで幅広いディスプレイ用途に対応可能な高性能ソリューションが提供される。
AI時代を見据えた全サイズ展開戦略
AI技術の進展によるスマートインタラクションやIoTの普及を背景に、有機ELはスマートウォッチやスマートフォンといった小型用途から、VR/AR、タブレット、ノートPC、車載用途へと急速に応用領域を拡大している。ViP技術はこうした全サイズ領域に対応可能であり、平面ディスプレイから3D表示まで幅広い応用に適応できる点が大きな強みである。
合肥国顕の第8.6世代有機ELラインの迅速な立ち上げは、Visionoxが市場機会を的確に捉え、全サイズディスプレイ市場への展開を狙った戦略的投資の一環と位置付けられる。また、有機EL+(AMOLED+)時代における多様な応用の実現と、次世代ディスプレイエコシステム構築の基盤としても重要な役割を担う。
今後は製造装置の搬入および調整工程が本格化し、量産に向けた準備が加速する見通しである。Visionoxと合肥国顕は連携してプロジェクトを推進し、AI主導で拡大する有機EL市場の需要を取り込む構えである。今回のプロジェクト進展は、中国ディスプレイ産業における自主技術革新の加速と高付加価値化の象徴であり、世界市場における競争力強化に寄与すると期待されている。