AI/ARスマートグラスのトレンドと将来展望、ディスプレイ搭載AI眼鏡が大衆市場へ、ビッグテック参入で競争が本格化


2026年2月5日 / 出典:UBIリサーチ

 

2025年に発売されたメタのRay-Ban Displayスマートグラスは、米国市場で当初の想定を大きく上回る需要を記録し、ディスプレイ機能を搭載したAI眼鏡が本格的に大衆市場へ進出する転換点となった。CES 2026では、この分野の成長がさらに明確になり、50社を超える企業がAI/ARハードウェア製品や関連技術ソリューションを展示した。RayNeo、Lenovo、Rokid、INMO、XREALといった眼鏡メーカーに加え、Cellid、Himax、Goertek、JBDなど部品サプライヤーまで幅広い企業が参加し、スマートグラス関連展示は大きな賑わいを見せた。

 

UBIリサーチは2024年後半以降、AI/ARスマートグラスおよびマイクロディスプレイ分野におけるトレンドと各社の技術動向を継続的に分析してきた。CES 2026を契機に、AI/ARスマートグラスの最新動向と今後の技術的な方向性がより明確になりつつある。

 

ビッグテック参入で激化するAI/ARスマートグラス競争

メタが主導してきたグローバルなAI/ARスマートグラス市場は、2026年後半以降、より多くのビッグテック企業が参入することで競争が一段と激化すると見られている。2025年に各社が発表した内容や報道によれば、Snap、Google、AppleはいずれもAI/AR眼鏡に関するロードマップ的なシグナルを示している。Snapの「Specs」や、GoogleとXREALが共同で進める「Aura」プロジェクトの眼鏡は、2026年内の発売が予定されている。

 

サムスンは2025年10月に「Galaxy XR」ヘッドセットを発売しており、並行してAI/ARベースのスマートグラス開発プロジェクトを進行中だ。Alibabaも「Quark AI Glasses」を発表し、2025年11月から中国市場で販売を開始するなど、グローバル市場への本格参入を果たした。Appleについては、Vision Proが抱える重量や価格面での課題を踏まえ、より軽量で日常的な装着が可能なAI/ARスマートグラスへと戦略転換を進めているとの観測があり、早ければ2026年内の発表の可能性も取り沙汰されている。

 

こうした動きの背景には、ビッグテック各社が自社の独立したAI技術を中核とするプラットフォーム主導権を確保しようとする戦略がある。AI/ARスマートグラスは、その重要なフロントエンドデバイスとして位置付けられている。

 

メタ、Google、Appleなどの参入により、2026年以降に競争が激化すると予想されるグローバルAI/ARスマートグラス開発ロードマップ(出典:UBIリサーチ)
メタ、Google、Appleなどの参入により、2026年以降に競争が激化すると予想されるグローバルAI/ARスマートグラス開発ロードマップ(出典:UBIリサーチ)

 

実用性重視へ移行するAI/ARスマートグラスの技術トレンド

スマートグラス産業は、技術進化の大きな転換点に到達している。かつての実験室レベルでの性能仕様競争は一巡し、現在は消費者向けに量産可能で商業的に成立する製品をいかに提供するかという市場・産業論理が中心になっている。

 

性能面のトレンドとしては、従来のディスプレイ要素や理想的なAR体験の追求よりも、現実的に実装可能な技術水準の中で、消費者が求める機能に焦点を当てた製品が増えている点が挙げられる。具体的には、ハンズフリーでのメッセージ送信や通話、スマートリングやリストバンド型センサーを用いた直感的な操作など、日常利用に直結した機能が重視されている。

 

CES 2026で紹介されたRayNeo X3 Proは、eSIM通信モジュールと4Gプロトコルを統合し、スマートフォンと接続しなくても通話の発着信、マルチモードAI、リアルタイムAI翻訳、音楽ストリーミング再生などを可能にした製品例である。AI/ARスマートグラスは、生活の中で「スーパー・インテリジェント・アシスタント」としての役割を担うデバイスへと進化しつつある。

 

形態分化と製品多様化が進むスマートグラス市場

もう一つの大きなトレンドは、スマートグラスの「形態分化および製品多様化」戦略である。多くのメーカーが、ディスプレイ非搭載モデルとディスプレイ搭載モデルの二系列で市場に対応している。前者はAI機能を中核に、屋外視認性や超軽量化を重視した設計で、主にLCoSやMicro-LEDディスプレイが用いられる。一方、後者は高画質な大画面体験や映画鑑賞など没入型用途を重視し、Micro-OLEDディスプレイが主に採用されている。

 

AI眼鏡市場に参入しているほぼすべての企業が、これら二つの製品ラインを同時に展開している。ユーザーの要求、使用環境、提供する価値、眼鏡の重量や価格帯が大きく異なるためだ。例えば、Ray-Ban Metaは高画質撮影、マルチモードAI理解、オーディオ機能を特徴とする典型的なAI眼鏡で、価格は299米ドルに設定されている。一方、Ray-Ban Displayはディスプレイ機能を中心としたAR眼鏡で、情報表示やインタラクション、没入感を強調し、価格は799米ドルとなっている。Rokidも同様に、用途別に3種類の製品群を展開し、消費者ニーズに対応している。

 

AI/ARスマートグラス市場は、量産と実用性を軸に急速な進化段階へと移行しており、2026年以降はビッグテックと専門メーカーが交錯する中で、技術力とエコシステム構築力が競争力を左右する重要な要素になると見られている。

 

使用目的とディスプレイ搭載有無による「形態分化・製品多様化」戦略を示すRokidのAI/ARスマートグラスラインアップ (出典:Rokid/UBIリサーチ)
使用目的とディスプレイ搭載有無による「形態分化・製品多様化」戦略を示すRokidのAI/ARスマートグラスラインアップ (出典:Rokid/UBIリサーチ)