総投資額295億元、TCL華星の第8.6世代印刷OLED製造ライン一期プロジェクトが上棟、量産化へ大きく前進


日付:2026年5月9日

出典:芯智訊

 

2026年5月8日、TCL華星の第8.6世代印刷OLED製造ライン一期プロジェクト(略称「t8プロジェクト」)が正式に上棟を迎えた。主製造棟の躯体構造が順調に上棟し、これと並行してクリーンルーム関連工事も始動したことで、世界初となる印刷OLEDの第8.6世代量産ライン建設は、新たな段階に入った。今回の節目は、TCL華星が次世代ディスプレイ技術の商業化を本格的に加速させるうえで、極めて重要な意味を持つ。

 

上棟式には、TCL科技集団の鄧穎好・助理総裁兼TCL華星副総裁、張才力副総裁、習文波副総裁、TCL華星印刷OLEDセンター長の曹蔚然博士のほか、中建三局、中建四局、さらに建設関係者らが出席し、この重要な瞬間を見届けた。

 

最速級の建設進捗で、t8プロジェクトは新たな建設段階へ

TCL華星によれば、t8プロジェクトは次世代ディスプレイ技術を見据えた戦略的プロジェクトであり、印刷OLED技術の産業高度化を担う中核的な拠点でもある。総投資額は約295億元に達し、設計上の月間ガラス基板処理能力は約2万2500枚を見込む。2025年11月30日に本体工事が着工して以降、全工程を支える建設支援体制のもとで工事効率は継続的に高まり、着工から上棟までわずか151日で完了した。これは業界における「最速上棟」記録を更新するものであり、いわゆる「広州スピード」と「TCL華星スピード」を強く印象づける成果となった。

 

主製造棟の上棟完了後、プロジェクトは全面的にクリーンルーム施工、動力システム据え付け、そして中核製造装置の搬入段階へ進む予定だ。これにより、今後は建屋建設中心のフェーズから、量産立ち上げを見据えた設備・環境構築フェーズへと重心が移っていく。

 

TCL華星印刷OLEDセンター長の曹蔚然博士は、今回の「前倒し達成」は、すべての建設担当者と協力企業が知恵と努力を結集して実現した成果だと強調した。そのうえで、t8プロジェクトは世界初のG8.6世代印刷OLED大規模量産ラインであり、TCL華星が次世代ディスプレイ技術ルートにおいて自主主導を実現し、世界の先頭集団へ進むための重大な突破口だと位置付けた。さらに、この製造ラインの実現は、ディスプレイ産業を従来の真空蒸着方式から、よりグリーンで高効率、高歩留まり、高適合性を備えた印刷OLED路線へと押し上げるものであり、高世代OLEDにおいて長く続いてきた単一技術構造を打ち破る可能性があると述べた。

 

 

13年にわたる印刷OLED技術の蓄積が量産競争力を支える

TCL華星は、印刷OLEDディスプレイ技術の分野において13年にわたり研究と開発を深めてきた。その結果、研究開発から量産までを一貫してカバーできる能力体系をすでに構築している。なかでも、武漢の第5.5世代印刷OLED製造ライン「t12」は、2024年11月に量産と製品出荷を実現しており、高世代ライン建設に向けた実務経験と技術検証の基盤を築いてきた。

 

長年にわたるプロセス改良と歩留まり最適化を通じて、TCL華星は業界でも先行する印刷OLED技術の蓄積と、工業化・量産化へ落とし込む実装力を確立したとしている。こうした積み重ねが、t8プロジェクトの高効率な推進を支える確かな土台となっている。試験ラインから量産ラインへ、そして高世代の大規模量産ラインへという技術進化の流れを、自社で一貫して築いてきた点は、TCL華星の大きな競争優位性として注目される。

 

今回のt8プロジェクトは、単なる新工場建設ではなく、中国ディスプレイ産業における次世代有機EL製造技術の本格転換を象徴する動きともいえる。特に、従来方式に比べて材料利用効率や生産性に優位性を持つ印刷OLEDが、高世代ラインで大規模量産の段階へ進むことは、サプライチェーン全体にも大きな影響を与える可能性がある。

 

 

印刷OLEDのG8.6量産ラインが中型高級ディスプレイ市場を変える可能性

t8プロジェクトは、世界初のG8.6世代印刷OLED大規模量産ラインとして、インクジェット印刷プロセスを採用する。この方式では、有機EL発光材料を「必要な場所に必要な量だけ載せる」オンデマンド成膜の考え方で、2290×2620mmサイズの第8.6世代ガラス基板上へ高精度に印刷する。従来の真空蒸着方式と比べると、材料利用率の向上、より高い歩留まりの可能性、そして生産工程全体のグリーン化・高効率化といった明確な利点が期待される。

 

市場面では、このプロジェクトは中型高級ディスプレイ市場を主な対象としており、プロフェッショナルディスプレイ、ノートパソコン、デスクトップモニター、タブレット端末、車載ディスプレイなど、多様な用途をカバーする計画だ。近年、IT機器や車載向けの有機EL需要は急速に高まっており、とりわけ中型領域では高精細、高輝度、低消費電力を両立する次世代製品への期待が強い。そうした中で、印刷OLEDによるG8.6量産体制が確立されれば、高級ディスプレイ製品の供給能力を大幅に押し上げる可能性がある。

 

TCL華星は今後、t8プロジェクトの建設と量産立ち上げを軸に、技術革新力と工業化能力をさらに強化していく方針だ。そして、多サイズ・多用途に対応するOLED製品群を段階的に構築し、より先進的な技術と高品質な製品を通じて、世界のユーザーに優れた表示体験を提供するとしている。今回の上棟は、その未来に向けた大きな通過点であり、TCL華星が新型ディスプレイ分野で世界的リーダーシップを一段と強化するための重要な一歩となった。