発行日:2026年5月18日
出典:ET News
シリコンフォトニクスを次世代の成長事業に位置付け
メルクは、光半導体と呼ばれる「シリコンフォトニクス」を将来の成長事業として本格的に推進する方針を明らかにした。電気信号を光信号へ変換することで半導体性能を大幅に向上させる技術であり、同社は半導体およびディスプレイ材料分野で培ってきた技術力を基盤に、本格的な事業化に乗り出している。
業界によると、メルクはシリコンフォトニクス向けの有機材料の開発と事業化を進めている。特に、主要顧客およびパートナー企業が求める「光相互作用材料」の開発が中核戦略となっている。具体的には、サーバー間通信において400Gbps以上の伝送速度を実現可能な材料を発掘・開発し、シリコンフォトニクス製造プロセスとの統合を図る計画である。
AI時代で急拡大する光通信需要とCPO技術
シリコンフォトニクスは、半導体内部や半導体間、さらにはサーバーシステム間の通信を従来の電気信号ではなく光で行う技術である。従来の銅配線ベースの通信と比較して、高速かつ高い電力効率を実現できる点が特徴だ。
近年は人工知能(AI)の急速な普及により、大規模データ通信の需要が急増している。この流れを背景に、電気信号を光信号へ変換するシリコンフォトニクスの重要性が急速に高まっている。技術分類としては、共同パッケージング光学(CPO)技術の一分野に位置付けられる。
ディスプレイ材料技術を活かした差別化戦略
メルクはこれまでに蓄積してきたディスプレイ材料分野の知見を活かし、シリコンフォトニクス市場における競争優位の確立を目指している。2025年にはディスプレイソリューション事業部を再編し、半導体産業支援および光電子技術までを包含する「オプトロニクス」事業部へと拡張した。
同事業部では、AI半導体などへの応用を視野に入れた高付加価値材料の開発を進めているほか、半導体の計測・検査装置事業(ユニティSC)も展開している。
サムスン電子・エヌビディアなどと協力エコシステム構築
メルクはシリコンフォトニクス事業の推進に向け、顧客およびパートナー企業とのエコシステム構築にも注力している。2026年4月にはドイツ・ダルムシュタット本社に主要パートナーを招き、技術動向の共有と協力戦略の検討を行った。
この会合には、サムスン電子、エヌビディア、グローバルファウンドリーズ、STマイクロエレクトロニクス、EVグループなどが参加し、それぞれの技術ロードマップを提示するとともに、事業連携の方向性を議論したとされる。これら企業は、今後メルクの主要顧客となる可能性が高い。
サムスン電子は2028年の量産化を目標に、シリコンフォトニクスを含むCPO技術の開発を進めている。また、エヌビディアもAI半導体システムの性能向上を目的としてCPOソリューションを展開し、協力エコシステムの拡大を図っている。
メルク関係者は、「液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELにおいて培ってきた光相互作用材料の知識と専門性を活かし、高速変調などの新機能の実現を目指す」と述べ、「業界パートナーと連携しながら最適なソリューションを共同開発していきたい」と強調した。