記事日付:2025年12月10日
出典:韓国メディア報道(慶北大学発表)
新材料に頼らず光学設計で色再現性を飛躍的に向上
慶北(キョンブク)大学は12月10日、電子工学部の都允善(ト・ユンソン)教授研究チームが、既存の有機EL材料を用いながら、より鮮明な色表現を可能にする「二重マイクロキャビティ(Dual Microcavity)」構造に基づく狭帯域有機EL技術の開発に成功したと発表した。新たな発光材料を開発するのではなく、光学構造の設計のみで高色純度と高輝度を同時に確保した点が特徴で、XRやVRなど次世代の超高精細ディスプレイへの応用可能性を示している。
超高解像度ディスプレイでは、発光波長の幅が狭く、かつ正確であるほど鮮明な色再現が可能となる。国際的な超広色域規格であるBT.2020を満たすためには、RGBそれぞれの発光半値全幅(FWHM)を20ナノメートル以下に抑える必要があり、特に緑色発光特性は全体の色域再現において最も重要な要素とされている。
二重マイクロキャビティとパーセル効果の活用
マイクロキャビティとは、有機EL内部で光を多重反射させ、特定波長の光を選択的に強める光学構造である。都教授の研究チームは、この構造を単層ではなく二層に設計した「二重マイクロキャビティ」を採用することで、発光波長をより狭く、かつ精密に制御できるようにした。さらに、共振によって特定波長の発光を強化する「パーセル効果(Purcell Effect)」を活用し、狙った波長での光放出を一層強める設計とした。
この構造を適用した結果、一般的な有機EL発光層が持つ約60ナノメートル幅の発光特性をそのまま使用しながらも、二重マイクロキャビティ内部で光が繰り返し共振することで特定波長のみが選択的に増強され、実際に放出される緑色光のスペクトル幅を21ナノメートルまで低減することに成功した。これは市販RGB有機ELと比較して約35%の改善に相当し、BT.2020規格に迫る高色純度性能である。
高輝度でも効率を維持、AR・VR向けに適性を確認
二重マイクロキャビティ有機ELは、最大124,100nitという極めて高い輝度条件下でも効率低下がほとんど見られず、発光の指向性も向上した。この特性は、ARやVR向けマイクロディスプレイに求められる高輝度・高効率・高指向性という要件と合致している。
都允善教授は、「既存の発光材料が持つ限界を、光学構造設計によって補完できる点に大きな意義がある。この構造は量子ドット(QD)やペロブスカイトなど、次世代の狭帯域発光材料にもそのまま適用可能であり、今後の超高解像度ディスプレイ技術高度化に向けた重要な出発点になる」と述べている。
なお、本研究は韓国産業通商資源部の産業技術アルケミスト・プロジェクトおよび韓国研究財団のSTEAM研究事業の支援を受けて実施され、研究成果は国際学術誌『Advanced Functional Materials』に掲載された。筆頭著者は金準勇(キム・ジュンヨン)博士研究員、責任著者は都允善教授である。