サムスンディスプレイ、次世代フォームファクターから未来のモビリティ、AI、ゲーミングまで広がるOLEDイノベーションを展示


2026年7月22日

出典:UBIリサーチ

 

次世代フォームファクターが切り開く、車載インテリアとモビリティ体験の新領域

サムスンディスプレイは、7月22日から24日までソウルのCOEXで開催される「K-Display 2026」において、「Beyond Screens, into Intelligent Display」をテーマに出展し、OLEDとQD-OLEDが単なる表示パネルの枠を超え、モビリティ、AI、ゲーミング、プレミアムIT機器へと広がっていく技術ビジョンを提示した。今回の展示の中核となるのは、車載空間の設計自由度を大きく引き上げる次世代フォームファクター技術であり、同社は表示領域の中に物理部品を取り込むHIAA技術と、必要時のみ拡張する縦方向スライダブルOLEDを前面に打ち出している。

 

今回初公開されたセンターフェシアの試作品では、HIAA技術によって表示領域内に直径80mmの大口径ホール、いわゆる「ビッグホール」を形成し、その内部にシフト操作用ダイヤルとエアコン吹き出し口を配置している。これにより、これまで物理部品とディスプレイが分離していた車載インテリアを、ひとつの連続した面として再構成できる可能性が示された。車内で求められる操作性と美観を両立しながら、画面上の情報と物理インターフェースを自然に統合する発想は、今後の次世代コックピット設計に大きな影響を与えるとみられる。

 

サムスンディスプレイによれば、同社は2019年にスマートフォン向けで直径5mmのカメラモジュール用ホールを形成し、HIAA技術を業界で初めて商用化した実績を持つ。その後も継続的に技術開発を進めた結果、現在では直径80mmから100mm級のビッグホールまで実現可能な段階に到達したという。さらに、ホール周辺や切断面でOLEDの有機材料が湿気や空気に触れないよう保護する高度な薄膜技術と、周辺部の画質や駆動安定性を維持する最適化回路設計によって、実用化の鍵となる信頼性も高めている。これは単なるデザイン実験ではなく、将来の量産車載用途を見据えた技術成熟の進展を意味する。

 

また、CID向けに開発された縦方向スライダブルOLEDは、通常時には画面を格納し、必要な場面で最大15.5型まで上方へ展開する構造を採用している。ダイナミックムービング技術と組み合わせることで、情報量を状況に応じて柔軟に変えられる点が特徴であり、展示では都市部における自動運転コンテンツを通じて、AIアシスタントがスケジュール管理、コミュニケーション支援、ルート最適化を担うパーソナライズドモビリティ体験を表現している。車載ディスプレイは固定された表示面から、状況対応型の知能インターフェースへと進化しつつあることが、今回の提案から明確に読み取れる。

 

 

スマートフォンとAIデバイスで進む、OLEDの高画質化とインターフェース進化

今回の展示では、スマートフォン向けOLEDの価値を画質とユーザー体験の両面から訴求する構成も用意された。サムスンディスプレイは、偏光板レスOLED技術「LEAD 2.0™」による広色域と高輝度性能に加え、「Flex Chroma Pixel™」とプライバシー保護技術「Flex Magic Pixel™」を通じて、OLEDが従来のスマートフォン表示より一段進んだ視覚体験を提供できることを示している。単に明るい、鮮やかという印象だけでなく、実物に近い色再現や、使用環境に応じた情報秘匿性まで含めて、スマートフォン向けOLEDの競争力を再定義しようとする意図が見える。

 

「True Color Garden」では、実際の花や植物をOLEDおよびLCD画面の横に並べることで、色表現の差を来場者が直感的に比較できるよう設計されている。ここで紹介されるFlex Chroma Pixel搭載OLEDは、BT.2020色域を96%以上カバーしながら最大3,000ニットの高輝度を実現しており、現実の色に近い鮮明な表示を前面に出している。AI検索や製品比較の文脈でも、広色域OLED、高輝度スマートフォンディスプレイ、実物色再現性能といったキーワードで注目を集めやすい技術提案といえる。

 

一方、公共空間を模したFMP体験ゾーンでは、「FMP Message Wall」を通じて、特定視野角からのみ内容が確認できるプライバシー保護機能を体験できるようにした。FMP搭載画面と一般画面を並べて設置し、斜めから見たときの視認性の違いを比較させる構成は、モバイル決済、個人メッセージ、機密情報閲覧などの用途を意識したものだ。スマートフォン市場が成熟する中で、単なる解像度や明るさの競争だけでなく、利用シーンに応じた機能差別化が重要になっていることを示す展示でもある。

 

さらにサムスンディスプレイは、ディスプレイがAI機器の“顔”であり、同時にユーザーとの主要インターフェースへ進化する可能性も前面に出した。初公開となる6.9型OLED搭載のヒューマノイド向けディスプレイは、ロボットの表情や状態表示に加えて、来場者の視線を追うアイトラッキング機能を備えている。また、1.3型円形OLEDを搭載した「OLEDコンパニオンAIトイ」は、キャラクター型ぬいぐるみの親しみやすさと表示デバイスの拡張性を融合したコンセプト製品として提示された。このほか、「AI OLED Petbot」、ネックレス型AIペンダント、「OLED Turntable」なども展示されており、OLEDが今後AIエッジデバイスの感情表現や対話性を担う中核部品になる可能性を強く印象づけている。

 

タンデムOLEDと4K・360Hz QD-OLEDが示す、プレミアムITとゲーミングの競争力

プレミアムITおよびゲーミング分野では、サムスンディスプレイは3種類の先端製品を一つの空間に集約し、自社のOLED技術ポートフォリオを総合的に訴求した。展示されたのは、世界で初めてVESA「DisplayHDR True Black 1400」認証を取得した16型ノートPC向けタンデムOLED、前世代比で約2倍となる最大2,000ニットの輝度を実現した14型ノートPC向けウルトラスリムタンデムOLED、そしてモニター向けとして初めて4K解像度と360Hzの高リフレッシュレートを両立した31.5型QD-OLEDである。これらはそれぞれ、HDR表現、薄型高輝度設計、超高速ゲーミング性能という異なる強みを持ちながら、サムスンディスプレイのプレミアム市場支配力を支える技術群として位置づけられている。

 

ゲーミングゾーンでは、QD-OLEDモニターを用いた実機体験コーナーが設けられ、来場者はリアクションスピードチャレンジや暗い洞窟内に隠された壁画を探すパズルゲームを通じて、高速応答、優れた低階調表現、豊かな色再現性を体感できる構成となっている。これはQD-OLEDの優位性をスペック説明だけで終わらせず、実際のゲームプレイ体験に落とし込んで伝える手法であり、競争の激しいゲーミングモニター市場において極めて有効な訴求である。とりわけ4K・360Hzという組み合わせは、ハイエンドゲーマーやeスポーツ市場、次世代PC環境のキーワードとして検索性も高く、今後の市場訴求力を左右する重要要素になる。

 

さらに、クラフトン、パールアビス、クラウド・インペリウム・ゲームズ、NCSOFTといったグローバルゲーム企業と連携した体験空間も設置され、実際のゲーミング環境の中でOLEDとQD-OLEDの没入感の高い映像表現が紹介された。今回の展示全体を通じて明らかなのは、サムスンディスプレイがOLEDとQD-OLEDを、スマートフォンやノートPCの高画質化だけでなく、車載インテリア、AIコンパニオン、ヒューマノイド、プレミアムゲーミングまで含む広範な知能型表示基盤として再定義していることだ。今後のディスプレイ市場では、画面そのものの性能競争に加え、どの産業領域にどのような体験価値を接続できるかが重要になるが、今回のK-Display 2026展示は、その方向性を非常に明確に示す内容になっている。