2026年3月4日
出典:UBIリサーチ
BOEはMWC 2026において、「Mirror-sense 0-Crease(镜感0痕)」と名付けた次世代フォルダブル有機ELディスプレイ技術を公開した。フォルダブルディスプレイにおける最大の技術課題の一つである折り目(クリーズ)問題の解決に向け、業界の競争は新たな段階に入ったと評価されている。
BOEによると、今回の技術は多重中性層構造とヒンジ・ディスプレイ統合設計を採用することで、従来のフォルダブルパネルと比較して折り目を40%以上改善したという。強い照明下や斜めからの視認においても折り目ラインがほとんど認識できないレベルの視覚的平坦性を実現しており、触感面でも一般的なストレート型スマートフォンに近い滑らかさを確保したと説明している。これにより、フォルダブルディスプレイのユーザー体験は大幅に向上したと強調した。
多重中性層と弾性率グラデーション設計が中核
「Mirror-sense 0-Crease」技術の中核は、多重中性層(Multi-neutral plane)モデルと弾性係数グラデーション設計にある。従来のフォルダブル有機EL構造では、単一の中性層を中心に曲げ応力が集中する傾向があり、それが折り目発生の主因となっていた。
これに対しBOEは、ディスプレイ中心部からヒンジ領域へ向かうにつれて材料の弾性特性を段階的に変化させる構造を導入した。いわば弾性率に勾配を持たせる設計により、引張応力と圧縮応力を分散させ、繰り返しの折り曲げ動作で生じる局所的変形を抑制する。結果として、クリーズの発生を効果的に抑えることに成功したという。
さらに、パネルモジュールとヒンジを同時に最適化するヒンジ・パネル協業設計を採用し、折り曲げ時に発生する応力伝達を均一に分散する構造を実現した。これは単なるパネル改良にとどまらず、機構設計との統合最適化によるアプローチであり、フォルダブルディスプレイ開発の方向性を示す技術といえる。
中国スマートフォンメーカーへの展開加速
フォルダブルディスプレイのクリーズ問題は、主要パネルメーカー間の重要な技術競争領域に浮上している。サムスンディスプレイもCES 2026において折り目を最小化した「Creaseless」フォルダブル有機ELコンセプトを発表しており、BOEとの技術競争が鮮明になっている。
BOEは現在、中国スマートフォンメーカーとの連携を通じて有機ELパネル供給網における影響力を急速に拡大している。MWC 2026では、BOE製パネルを採用した複数のスマートフォンおよびIT製品が公開された。VivoのX300 UltraにはBOEのLTPOベース高級フレキシブル有機ELが搭載され、HonorのフォルダブルスマートフォンMagic V6では内外両ディスプレイにBOEパネルが採用されている。
「Mirror-sense 0-Crease」技術は、今後中国製フォルダブルスマートフォンに適用される可能性が高いとみられる。中国メーカー各社はフォルダブル製品競争において、薄型化、軽量化、そしてクリーズ抑制を核心的差別化要素として位置付けているためである。特にHonorのMagic V7またはMagic V8シリーズ、Vivoの次世代X Foldシリーズ、OPPO Find Nシリーズ後継機、Huawei Mate Xシリーズ次期モデルなどが有力候補として挙げられている。
フォルダブルスマートフォン市場は当初、新しいフォームファクター自体が需要を牽引してきたが、現在はユーザー体験と製品完成度を中心とした競争へと軸足が移っている。クリーズ問題は単なる視認性の問題にとどまらず、触感や長期耐久性にも直結する重要課題である。
UBIリサーチは、クリーズ問題が実質的に解決された場合、フォルダブルスマートフォンはプレミアム製品群を超え、一般スマートフォン市場へ本格拡大する可能性が高いと分析している。BOEおよびサムスンディスプレイによる一連の技術発表は、フォルダブルディスプレイが単なる新デザイン提案を超え、完成度の高い次世代スマートフォン向けディスプレイへと進化していることを示す象徴的事例と評価される。