レベル3自動運転の普及で車載ディスプレイは安全中核へ、AR-HUDとDMSが「安全なテイクオーバー」を支える重要技術に浮上


2026年1月30日/ 出典:UBIリサーチ

 

レベル3移行で変わる車載ディスプレイの役割

レベル2の運転支援からレベル3(L3、条件付き自動運転)へと移行する中で、車載ディスプレイの役割は大きな転換点を迎えている。これまでの利便性やインフォテインメントを中心とした表示装置から、運転の安全性を左右する中核HMI(人―車インターフェース)へと急速に位置付けが変わりつつある。

 

レベル3では、特定条件下の運行可能領域(ODD)において車両が自律走行を担う一方、システムから要求があった際には運転者が速やかに運転権限を引き継ぐ必要がある。この「テイクオーバー」区間において、運転者に対して何を、いつ、どのように伝えるかが安全性を大きく左右する。そのため、情報を伝達するディスプレイと、運転者の状態を把握するDMS(ドライバーモニタリングシステム)の重要性が同時に高まっている。

 

2026年を起点に本格化する現代自動車、起亜、ソニー・ホンダモビリティなどのレベル3自動運転導入ロードマップ(出典:UBIリサーチ)
2026年を起点に本格化する現代自動車、起亜、ソニー・ホンダモビリティなどのレベル3自動運転導入ロードマップ(出典:UBIリサーチ)

 

AR-HUDが担う「直感的なテイクオーバー通知」

レベル3の商用化はすでに始まっているものの、多くはジオフェンシングによる特定区間限定、速度制限、道路・天候・交通条件に強く依存した形態で運用されている。このため、ユーザーが体感するレベル3の完成度は、自動運転性能そのもの以上に、「いつ使えるのか」「なぜ使えなくなったのか」「いつ運転を引き継ぐ必要があるのか」をどれだけ明確に伝えられるかに左右される。

 

この観点から、AR-HUD(拡張現実ヘッドアップディスプレイ)は、テイクオーバー要求や危険状況を最も直感的に伝えられる手段として注目されている。レベル3走行中は運転者が一時的に運転操作から離れている可能性が高く、メータークラスターやセンターディスプレイだけでは注意喚起や状況把握に時間を要する場合がある。AR-HUDは運転者の前方視界に情報を重ねて表示することで、テイクオーバー要求を強く認識させるとともに、工事区間や車線規制、停止車両といった危険要因を道路空間上に整合させて表示し、なぜ引き継ぎが必要なのかを即座に理解させる効果を持つ。

 

レベル3の適用範囲が拡大するにつれ、AR-HUDには昼間でも視認可能な高輝度、低遅延、表示位置の安定性(ドリフト抑制)、さらには体格やシートポジションが異なる運転者に対しても一貫した光学品質を提供することが求められる。結果として、AR-HUDは単なる付加機能ではなく、安全用途のディスプレイとしての完成度が強く問われる存在になりつつある。

 

レベル3の制御権引き継ぎ時に危険状況を直感的に伝えるAR-HUD技術デモ(出典:CYVISION)
レベル3の制御権引き継ぎ時に危険状況を直感的に伝えるAR-HUD技術デモ(出典:CYVISION)

 

DMSとUDCが支える安全な自動運転の成立条件

DMSは、レベル3において運転者がテイクオーバー要求に応じられる状態かどうかを判断するための安全装置として機能する。レベル3走行中、運転責任は一時的にシステムに委ねられるが、要求があれば所定時間内に運転者が操作を引き継ぐ必要がある。そのため、運転者が覚醒しており、前方状況を認識できる状態にあるかを常時確認する仕組みが不可欠となる。

 

DMSは視線の向き、まばたき、頭部の向き、注意散漫の有無などを基に運転者の可用性を評価し、注意力が低下している場合には、より早い段階でのテイクオーバー要求や、より強い警告へと段階的に切り替えることが可能である。さらに、運転者が最終的に反応しない場合には、最小リスク操作(MRM)へ移行する安全シナリオと連動して設計される。このようにDMSは単なる規制対応を超え、レベル3の機能安全ロジックを成立させる中核要素として位置付けられている。

 

CES 2026の展示では、こうした流れがDMSとディスプレイ技術の融合という形で具体化された。LGディスプレイは、DMS実装を想定したUDC(Under Display Camera)コンセプトを披露し、カメラをディスプレイ下に配置することで、コックピットデザインの一体感を損なうことなく運転者モニタリングを可能にする方向性を示した。特に有機ELクラスターのようなメーター領域にUDCを適用することで、運転者監視機能を視覚的に主張することなく統合でき、ミニマルな車内デザインと安全要件を同時に満たす解決策として評価されている。

 

ディスプレイ下にカメラを内蔵し、デザイン一体感とDMS機能を両立したLGディスプレイのUDC技術(出典:LGディスプレイ)
ディスプレイ下にカメラを内蔵し、デザイン一体感とDMS機能を両立したLGディスプレイのUDC技術(出典:LGディスプレイ)