BOE、B16の8.6世代OLEDラインでスマートフォン用パネル生産を推進、高PPI実現とFMM技術がカギ


2026年5月14日 UBIリサーチ

 

BOEは、8.6世代OLEDライン「B16」において、IT用パネルに続きスマートフォン用OLEDパネルの生産を推進している。

 

B16 8.6世代OLEDラインは、これまでノートPC向けなどの中型OLEDパネルを主対象としていたが、現在はスマートフォン向けの小型OLEDパネルへと生産範囲を拡大する動きを見せている。

 

B16のフェーズ1ラインは、昨年末に点灯テストを実施しており、ノートPC用OLEDパネルの量産が見込まれている。一方でBOEは、ライン稼働率の向上を目的として、スマートフォン用OLEDパネルの生産も検討している。初期製品はOPPO向けになる可能性が高い。量産時期は、顧客のスケジュールや初期工程の安定化状況に応じて柔軟に決定される見込みである。

 

8.6世代ラインとスマートフォンOLEDの課題

B16は8.6世代基板を用いたOLEDラインであり、従来のスマートフォン向け6世代OLEDラインとはプロセス難易度が異なる。

 

8.6世代基板はガラスサイズが大きく、ノートPCやタブレットなどIT用OLEDパネルの生産には適している。しかし、スマートフォンのように高密度でピクセルを形成する必要がある製品では、FMM(ファインメタルマスク)の精度が極めて重要な要素となる。

 

スマートフォン用のRGB OLEDでは、FMMを用いてサブピクセルを精密にパターニングする必要がある。基板サイズが大きくなるほど、マスクのたわみ(サギング)や位置合わせ誤差の制御が難しくなるため、400ppi以上の高解像度パネル(Galaxy SシリーズやiPhoneシリーズ相当)の製造は容易ではない。

 

初期製品戦略(現実的アプローチ)

こうした技術的制約を踏まえると、B16フェーズ1におけるスマートフォン向け初期製品は、350~400ppi程度のFHD級パネルから開始される可能性が高い。

 

これは、FMM工程の負荷を軽減し、初期歩留まりの安定化を優先するための現実的な戦略である。OPPO向けの最初の製品も、フラッグシップ向けの超高解像度パネルではなく、FHDクラスのOLEDパネルとなる可能性が高い。

 

なお、高解像度スマートフォン用FMMでは、大日本印刷(DNP)が最も高い技術力を有していると評価されており、他のマスクメーカーが大面積基板で同等の精度と量産安定性を確保するには、相当な時間を要するとみられる。

 

産業的意味合い

BOEのB16ラインは、中国OLED産業が従来の「6世代中心のスマートフォンOLED生産体制」から、「8.6世代ベースの多用途OLED生産体制」へ移行しつつあることを示す象徴的な事例である。

 

今後、8.6世代OLEDラインがノートPC、タブレット、スマートフォンといった複数用途に対応する汎用ラインとして確立されるためには、以下が重要となる:

 

・高精度FMM技術の確保

・初期歩留まりの安定化

 

これらが達成されて初めて、8.6世代ラインは本格的な量産基盤として機能することになる。