日付:2026年5月21日
出典:The Elec
中国BOEが、8.5世代液晶ディスプレイ(LCD)ラインをWOLED生産用へ転換する。主な生産対象はモニターやノートPCなどのIT向けパネルになる見通しで、中国ディスプレイ業界がIT向け有機EL市場で存在感を高める新たな動きとして注目されている。今回の投資は、これまでLCD分野で築いた量産体制を土台に、WOLEDを通じてIT向け有機ELの事業領域を広げようとするBOEの戦略を示している。
南京B18工場でWOLED量産体制を準備、モニターとノートPC市場を照準
20日の業界情報によると、BOEは中国・南京のB18工場でWOLED転換投資を進めている。B18はもともと8.5世代LCDラインであり、BOEはこの既存ラインをWOLED生産が可能な形へ改造する計画だ。転換後の生産能力は月産1万6000枚から1万8000枚規模と伝えられている。最近ではこのラインを統括する責任者も選任されたとされており、単なる技術検討ではなく、実際の量産を見据えた準備が具体化していることがうかがえる。
これに先立ち、BOEは合肥の8.5世代パイロットラインでWOLEDを試験生産していた。今年は台湾ASUS向けに24.5インチモニター用製品を少量供給する見通しとされている。これは中国企業がモニター向けOLED量産製品市場に進出する最初の事例とみられている。南京B18への投資は、こうしたパイロット供給の後に続く本格事業化の布石と位置付けられる。ノートPCに続き、モニターを含むIT市場全体を狙った戦略的な一手と解釈できる。
WOLEDは、白色OLED光源の上にカラーフィルターを適用して色を表現する方式だ。LGディスプレイが大型OLEDテレビやモニターパネルに採用してきた技術として知られている。これらのパネルはLG電子やサムスン電子などに供給され、最終的にテレビ完成品として製品化されている。つまりBOEは、韓国勢が先行してきたWOLED技術領域に本格参入しようとしていることになる。
韓国勢との生産能力格差は大きいが、モニター市場では警戒感も
現時点でBOEのWOLED生産能力は、韓国メーカーには及ばない。LGディスプレイの大型OLED生産能力は月産9万枚、サムスンディスプレイのQD-OLED生産能力は月産4万8000枚規模とされている。これに対して、BOEの南京工場での転換後の生産能力はかなり小さい水準にとどまる。ただし、モニター市場に限って見れば事情はやや異なる。サムスンディスプレイが保有する月産4万8000枚のうち、3分の1に当たる1万6000枚だけをモニター向けに振り向けたとしても、年間約400万台を生産できる計算になる。このため、BOEの南京ラインが月産1万6000枚から1万8000枚規模でも、モニター市場に集中すれば無視できない競争圧力になり得る。
現在のモニター向けOLED市場は、実質的に韓国メーカーが主導している。市場調査会社トレンドフォースによると、昨年のOLEDモニター浸透率は2%前後にとどまったが、メーカー別シェアではサムスンディスプレイがQD-OLEDで70%以上を占め、LGディスプレイがWOLEDで20%台半ばを確保した。市場規模そのものはまだ小さいものの、ゲーミングモニターやプレミアムPC需要を中心に成長が続いている。BOEはまさにこの成長初期の市場に照準を合わせ、将来のシェア確保を狙っているとみられる。
LCDで再現された中国流拡張モデル、OLEDモニターでも繰り返される可能性
中国ディスプレイ業界はLCD市場でも、当初は限定的な供給量から出発した。その後、顧客基盤を確保し、事業性が確認されると、政府支援を背景に急速に生産能力を拡大してきた経緯がある。今回のBOEによるWOLED投資についても、まずASUS向け供給で事業性を確認し、南京ラインで量産経験を積み上げた後、追加投資へ進む可能性があると業界ではみられている。つまり、LCDで見られた中国企業の拡張モデルが、OLEDモニター市場でも再現される可能性があるということだ。
業界関係者は、BOEの合肥ラインはパイロット的な性格が強い一方、南京B18は量産キャパシティを確保するための投資と見なすべきだと指摘している。そのうえで、月産1万6000枚から1万8000枚規模であってもモニター中心に運用すれば、韓国メーカーにとって負担となり得ると分析した。さらに中国では、顧客が保証され事業として成立すると判断されれば、追加投資を受けるスピードが非常に速いとも述べている。LCDで見られた供給拡大の流れが、OLEDモニターでもそのまま繰り返される可能性があるという見方だ。
今回のBOEの8.5世代LCDラインWOLED転換は、単なる製造ラインの用途変更ではなく、中国ディスプレイ業界がIT向け有機EL市場へ本格的に勢力圏を広げる重要な転換点といえる。現時点では生産能力や技術成熟度の面で韓国勢がなお優位に立っているが、中国企業が量産経験と顧客基盤を確保し始めれば、市場構造は今後大きく変化する可能性がある。BOEの今回の動きは、OLEDモニターとIT向け有機EL市場の競争が新たな段階に入るシグナルとして受け止める必要がある。