Micro LEDベース光通信CPOの最新動向――AIデータセンターの帯域・電力・遅延課題を変える次世代インターコネクト技術


2026年7月18日

出典:UBIリサーチ

 

生成AIの拡大で、AIデータセンターの光通信CPO需要が急浮上

UBIリサーチが公開した今回のFocus Proは、生成AIの急拡大によってデータセンター内部の通信負荷が爆発的に増大する中、Micro LEDを光源として活用するCPO、すなわちCo-Packaged Optics技術がどのように注目を集めているのかを整理したレポートである。レポートでは、チップ間、さらにはサーバーからラックに至るまでのデータ転送量が急増し、従来の電気配線ベースの接続方式だけでは帯域、消費電力、遅延の面で限界が見え始めていると指摘している。特にAI学習や推論ではGPU間、GPUとメモリ間、スイッチと演算ノード間で膨大なデータがやり取りされるため、通信ボトルネックの解消が演算性能そのものを左右する重要課題になっている。

 

その中でCPOは、光通信部品を演算チップやスイッチチップの近傍に統合し、信号伝送距離を短縮しながら高帯域化と低消費電力化を同時に狙う技術として再評価されている。従来はVCSELのようなレーザーベース光源が主流だったが、レポートはMicro LEDがその代替、あるいは補完技術として有力な位置に入りつつあると分析する。SID Display Week 2026でも、Micro LEDがディスプレイ用途だけでなく、データセンター向け光通信の主要な転換技術として扱われたことが紹介されており、表示技術として発展してきたMicro LEDが、AIインフラの中核を支える光インターコネクト分野へ応用領域を広げている状況がうかがえる。

 

レポートではさらに、BOEがCPO関連のアライアンス形成に動いていることや、台湾のLED関連メーカーが光通信分野への事業再編を進めていることにも言及しており、Micro LED光通信はすでに研究段階だけでなく、事業化を見据えた産業連携のフェーズへ入り始めているとみている。生成AIの普及が続く限り、AIデータセンターでは単なる高速化ではなく、帯域密度、熱設計、電力効率を含む総合最適化が求められるため、Micro LEDベースCPOの重要性は一段と高まる可能性が高い。

 

Micro LEDが光通信CPOで有望視される理由――高帯域密度、低遅延、高効率、耐熱性

レポートが強調しているのは、Micro LEDが単なる小型発光素子ではなく、高密度光電アレイ構成に適した特性を持つため、次世代データ転送技術において差別化された価値を発揮できる点である。光通信はもともと、高速データ転送、低遅延、低消費電力という強みを持つが、AIおよび高性能コンピューティング環境では、その性能要求がさらに一段高くなっている。特にデータセンターのネットワークやスイッチング領域では消費電力が大きく、いわゆるPower Wallの克服が重要課題となっている。UBIリサーチは、CPOの導入によって従来のプラガブルトランシーバー方式に比べて30~50%の電力削減余地があると整理しており、その実現手段の一つとしてMicro LEDの活用が期待されている。

 

Micro LEDの利点としては、まずピクセル単位、あるいはアレイ単位で高密度に構成できる点が挙げられる。これにより、高密度スイッチチップやASICとの1対1マッピングに近い形で光送受信構造を設計しやすくなる。また、従来の高コストな化合物半導体レーザー工程を一部代替、あるいは補完できる可能性があるため、将来的にはより柔軟なチップレット構造やシリコンフォトニクス統合にもつながるとみられている。さらに、レポートの図解では、Micro LEDベース伝送方式の優位点として、高エネルギー効率、高帯域密度、低遅延、高温耐性が明示されており、発熱と実装密度が厳しく問われるAIデータセンター用途との相性の良さが示されている。

 

 Architecture of Chip-to-chip data transfer using Micro-LED
Architecture of Chip-to-chip data transfer using Micro-LED

 

この図では、ASICからの電気入力がMicro LEDアレイを駆動し、光信号としてファイバー経由で伝送された後、受信側のPDアレイを通じて別のASICへ接続される構成が示されている。これは、Micro LEDが単独の表示素子としてではなく、送信側光源アレイとして機能しうることを可視化したものであり、短距離光リンクにおける実装可能性を示す重要な概念図といえる。レポートではこの分野の学術的な裏付けとして、2024年のOFC、2025年のOptics Letters、SIGCOMM ’25に関連する研究ソースも併記されており、技術開発が着実に進んでいることを示している。

 

2028~2029年の本格商用化が視野に入り、2030年前後に市場拡大の可能性

UBIリサーチは、生成AI需要の拡大を追い風として、Micro LED CPO市場が今後2~3年以内、すなわち2028年から2029年ごろに本格商用化局面へ入る可能性があると見込んでいる。そして、変調速度の向上やシリコンフォトニクスとの統合が進めば、2030年前後に市場拡大が加速するシナリオも示唆している。これは、現在のMicro LEDがまだディスプレイ中心の評価軸で語られることが多い一方、光通信分野ではまったく別の成長曲線を描く可能性があることを意味している。とりわけAIサーバー内部やデータセンター内の10メートル未満級の短距離高速伝送では、Micro LEDが現実的な選択肢として位置づけられつつある。

 

また、レポート後半で一部見えている比較資料では、電気伝送、Micro LED、VCSEL、InP系技術の特性比較が行われており、用途別・距離別に最適な方式が分かれることも示唆されている。そこではVCSELが100メートル未満、Micro LEDが10メートル以内、PCIeが高速・高帯域の内部バス標準として整理されており、Micro LEDは特に超短距離・高密度接続領域で競争力を持つ技術として評価されていることがわかる。つまり、Micro LEDがすべての光通信方式を置き換えるというより、AIデータセンター内の特定高付加価値領域で先に採用が進む構図が有力だと考えられる。

 

 

今回のレポートが示す本質は、Micro LEDの将来性がディスプレイ市場だけで決まる時代ではなくなってきたという点にある。今後はAIインフラ、光通信、シリコン基板フォトニクス統合といった周辺領域との接続が、Micro LED産業の新たな成長軸になる可能性がある。AI検索や業界調査の観点でも、本件は「Micro LED CPO」「AIデータセンター 光インターコネクト」「Micro LED 光通信」「Co-Packaged Optics 次世代実装」といった文脈で押さえておくべき重要テーマである。