2026年1月31日 / 出典:JMInsights
中国のディスプレイメーカーの天馬微電子(Tianma Microelectronics)は、業績面と技術開発面の両方で大きな節目を迎えた。2025年の通期業績で大幅な増益を達成し、赤字から黒字への転換を果たしたことに加え、自主技術を中核とするMicro LED試験ラインの竣工・検収を完了し、量産に向けた一貫生産体制を確立した。
1月30日、深天馬Aは公告を通じて、2025年度の親会社株主に帰属する純利益が1億5,000万元から1億8,000万元になる見通しを示した。前年同期は6億6,900万元の赤字であり、増加率は約122.44%から126.92%に達する。これは天馬にとって、構造改革と事業転換の成果が数値として明確に現れた結果といえる。
2025年業績の構造的改善と黒字転換の背景
2025年は、全体として主要事業分野の需要が回復基調にあった一方で、短期的な変動や競争環境の変化も続いた年であった。市場は細分化が進み、分野ごとに成長性や競争構造の差が鮮明になっている。こうした環境下で天馬は、コア事業の高品質成長に経営資源を集中させ、経営効率の最適化を着実に推進した。
その結果、2025年の売上高は360億元を突破する見込みとなり、上場会社株主に帰属する純利益は前年から8億元以上改善した。非経常損益を除いた後の純利益も前年から16億元以上改善しており、収益力は大幅に向上した。単なる市況回復ではなく、事業構造の見直しによる実質的な体質改善によって、業績の黒字転換を達成した点が特徴である。
この業績改善を支えたのは、各製品ラインの着実な推進と市場への深耕であり、とりわけMicro LED分野における先行投資と技術蓄積が、将来成長に向けた確かな土台を形成している。
Micro LED試験ライン竣工と次世代技術への布石
天馬はこのほど、「天馬新型ディスプレイ技術研究院(厦門)有限公司 Micro LED試験ラインプロジェクト」の竣工検収報告を公表した。同社は2022年に総額11億元を投じ、巨量転写からディスプレイモジュールまでをカバーする全工程型Micro LED試験ラインの建設を正式に発表している。
この試験ラインでは、巨量転写、巨量検査・修復、封止モジュール、接続モジュールといった中核プロセス技術を重点的に開発し、年間3万6,000枚のパネル生産能力を持つ規模で構築された。大画面ディスプレイから車載ディスプレイに至るまで、幅広い用途を視野に入れた技術検証が行われている。
今回の検収完了により、天馬はMicro LED技術の応用拡大と産業化をさらに加速させる方針だ。2017年からMicro LED分野に取り組んできた同社は、技術開発段階から標準製品化へと能力を引き上げるフェーズに入っている。2024年には合弁で建設した全工程生産ラインが点灯し、2025年には初の車載向け標準Micro LED製品の点灯にも成功した。
車載ディスプレイを軸に「ディスプレイ+AI」企業へ転換
中国新型ディスプレイ産業の中核企業である天馬微電子は、車載ディスプレイ分野における圧倒的な競争優位性を武器に、景気循環を超える強靭な成長力を示している。40年以上の歴史を持つ同社は、従来のディスプレイパネル供給企業から、「ディスプレイ+AI」を中核とするスマートインタラクションソリューション企業への転換を加速させている。
2025年の業績構造を見ると、消費者向け電子機器分野が圧力を受ける一方で、車載ディスプレイを中心とするプロフェッショナルディスプレイ事業が成長の原動力となった。車載および業務用ディスプレイの売上比率は全体の5割を超え、売上規模の拡大が利益成長を下支えしている。
特に車載分野では、車載用TFT-LCD、車載メーター、ヘッドアップディスプレイ(HUD)で世界出荷量首位を維持しており、2024年には車載HUDで初めて世界トップに立った。2025年前三四半期の車載事業売上は前年同期比約24%増、上半期に限れば約27%増と高い成長を示した。加えて、LTPS(低温多結晶シリコン)技術の浸透、製品サイズの拡大、モジュール一体化の進展により、車載事業の粗利益率も安定的に改善している。
顧客基盤も中国、欧州、米国、日本、韓国の主要自動車ブランドを網羅し、理想汽車、小鵬汽車、広汽などの有力自動車メーカーと深い協業関係を築いている。
2026年以降を見据え、天馬は「2+1+N」戦略を明確に掲げている。スマートフォンと車載ディスプレイという2大中核事業を堅持しつつ、ITディスプレイを重点的に拡大し、産業・医療など多様な付加価値分野を育成する方針だ。同時に、AIが産業構造を再編しつつあるとの認識の下、ディスプレイを「高精度ハードウェア」から「シーン知能」を備えたインターフェースへ進化させることを目指している。
Micro LEDを長期的な技術蓄積と位置づける一方で、「天工スクリーン」と呼ばれるハイエンド有機ELブランドや、49.6インチのパノラマ没入型「天軒スクリーン」などの技術ブランドを通じて付加価値向上も図る。さらにMPGプラットフォームを通じ、パネル技術を超材料スマートアンテナ、マイクロ流体、フレキシブルセンサーなど非ディスプレイ分野へ展開し、「スクリーンの外側」に広がる新市場を探索している。
総じて天馬微電子は、車載ディスプレイを「安定基盤」とし、多様なディスプレイ技術を「堀」とする堅固な経営構造を築き上げた。今回の業績回復は一時的な市況反発ではなく、高付加価値分野への構造転換の成果である。今後、技術的優位性を持続的な商業成功と利益成長へと結び付けられるかが、天馬が「優れたディスプレイ企業」から「偉大なスマートインタラクション企業」へ進化できるかどうかの試金石となる。