2025年12月11日/ UBI Research
中国ディスプレイ産業、素材技術の“独立”に向けて前進
中国のディスプレイ産業が、世界最大の生産国という地位を超え、核心素材技術の自主化へ向けて重要な一里塚を打ち立てた。清華大学とVisionoxは12月7日、北京の清華大学で共同開催した技術フォーラムにおいて、4世代有機EL発光技術「Phosphor-assisted Thermally Activated Delayed Fluorescence Sensitized Fluorescence(pTSF)」の量産成功を正式に宣言した。そして、この技術を実際の量産ラインに適用した成果を初めて公開した。
これまで学術研究段階にとどまっていた次世代材料技術が、実際の量産ライン(Mass Production Line)に導入され、商用化ステージへ進んだことを示す極めて重要な発表と評価されている。
pTSFは、高効率・長寿命・高色純度という、従来の有機ELが抱える「同時達成が困難な三要素」(いわゆる“Impossible Triangle”)を同時に解決した4世代技術と位置付けられている。この技術は、TADFホスト材料、燐光系の補助ドーパント材料(Sensitizer)、そして蛍光発光体(Emitter)で構築される独自の三重エネルギー伝達構造を採用し、内部エネルギーを損失なく捕捉して迅速に発光体へ伝えることで、効率と寿命を大幅に向上させる仕組みである。
特に今回のフォーラムでは、2025年5月にSID Display Week 2025で学界から注目された緑色 pTSF 素子の量産レベルの性能データが再度確認され、大きな関心を集めた。
Visionox、G6ライン製造パネルの性能を公開
Visionox はG6量産ラインで製造された2種類のパネル(Product A、Product B)の性能を公開した。低電力特化モデルである「Product A」は、既存の蛍光OLED製品と比較して消費電力を12%削減し、寿命(LT95)は15%以上向上させたことが明らかになった。また、超高精細特化モデルである「Product B」は、DCI-P3とAdobeRGBの色域をいずれも99.5%以上満たす色再現率を達成し、画質面でも飛躍的な成果を示した。これは研究チームが独自開発したエキシプレックス(Exciplex)ホストの適用と素子構造の最適化によりエネルギー伝達効率を高め、高価な材料であるドーパントの使用量を約10%削減した成果である。
今回公開された技術は、HonorのMagicシリーズやNubiaの最新モデルに搭載されると推測される。HonorとNubiaはVisionoxの長年の核心パートナー企業であり、過去にもVisionoxの新技術(高リフレッシュレート、UDCなど)を真っ先にフラッグシップラインナップに導入してきた実績があるため、今回の第4世代技術も優先的に供給を受けた可能性が非常に高い。
今後は赤・青へ技術拡張、素材技術の完全独立へ
清華大学とVisionoxは今回の緑色素子の量産成功を足掛かりに、今後赤色と青色素子領域までPhosphor-assisted Thermally Activated Delayed Fluorescence Sensitized Fluorescence(pTSF)技術を拡大適用するロードマップを提示した。現在、研究チームは技術的難題とされる赤色MR発光体と青色補助蛍光体の安定性確保に注力しており、これによりOLED全領域における素材技術の完全な自立を達成する計画だ。中国側は今回の成果が中国ディスプレイ産業が追随者から技術主導者へ転換する重要な契機となるという見方を示している。