2025年11月19日 The Elec Korea
長期化した有機EL特許紛争、3年ぶりに決着
サムスンディスプレイとBOEが約3年にわたり米国と中国で繰り広げてきた有機EL(OLED)関連の特許侵害および営業秘密侵害の一連の紛争が、最終的に双方合意によって終結したことが明らかになった。合意内容は非公開だが、業界ではサムスンディスプレイに有利な条件でのライセンス契約が成立したとの見方が強い。
サムスンディスプレイは2022年12月、米国国際貿易委員会(ITC)に対し、BOEが中国・深圳などでサムスンの特許技術を無断使用して製造した有機ELパネルが米国へ輸入・販売されているとして、特許侵害調査を申し立てていた。同社は、一般的排除命令(GEO) と 中止命令(CDO) の発令も求めていた。
ITCの“手続き停止”で事実上の和解確定
ITCは11月18日(現地時間)、BOEの営業秘密侵害に関する最終判断を予定どおり公表せず、「手続き停止」(stay)と通知した。本来17日に最終結論が出る予定だったが、双方の紛争終結の合意がITCの審理にも影響した形だ。
サムスンディスプレイとBOEはこれまで特許ライセンス交渉を続けてきたが、当初の要求額には大きな隔たりがあった。サムスンディスプレイ:約2兆ウォンを要求、BOE:約5,000億ウォンを提示。この折り合いがつかず、双方は追加の特許侵害訴訟を連続して提起。業界筋によれば、最終的に1兆ウォン前後で折り合った可能性が高いとみられている。
またサムスンディスプレイは2024~2025年にかけて、米国特許審判院(PTAB)で争われていた関連特許5件すべてについて有効性を認められており、技術的優位性も改めて裏付けられていた。
合意の背景:iPhone向け有機EL市場をめぐる攻防
サムスンディスプレイが2022年に特許侵害を公開警告し、ITCに申し立てを行った当時、BOEはiPhone向け有機ELパネルの供給量を急速に伸ばしていた時期だった。サムスンディスプレイはサムスン電子向けの安定した需要を持つ一方で、営業利益の約3分の2をiPhone向け有機ELが占めるとされ、BOEの台頭を強く警戒していた。
しかし今回の合意により、サムスンディスプレイはライセンス収入という新たな収益源を確保、その収益を原資に iPhone向け有機ELの納入価格を下げ、BOE・LGディスプレイへの競争圧力を強める可能性 がある、BOE側はライセンス料負担により 価格競争力が低下するリスク が生じる、といった市場影響が予測されている。
さらにサムスンディスプレイは2024年、LGディスプレイの米国LCD特許79件を取得しており、BOEにとっては有機ELだけでなくLCDでも訴訟リスクの拡大が重圧となっていた。
約4年に及ぶ争いに終止符、今後の市場シェア争いへ影響も
今回の合意により、2022年12月にサムスンディスプレイが米国のスマートフォン向け有機EL輸入業者17社を相手取りITCに提出した調査請求から始まった一連の特許紛争は幕を閉じた。サムスンディスプレイが最初に特許侵害を警告した2022年1月までさかのぼれば、実に約4年がかりの決着である。
現在、iPhone向け有機ELパネル市場ではサムスンディスプレイが依然として首位を維持し、LGディスプレイとBOEがわずかにシェアを伸ばしている状況だ。今回のライセンス契約により、サムスンディスプレイの収益構造がさらに強化され、今後数年の業績改善につながるとの見方が広がっている。サムスンディスプレイとBOEの長く激しい争いは、ようやく合意による穏当な形で終止符を打つこととなった。