マイクロLEDとCPO技術の融合ソリューションにより新市場拡大への期待


2026年3月12日

出典:UBIリサーチ

 

生成AIの急速な普及は、世界規模で計算能力競争を引き起こしており、その結果としてデータセンターにおける高速データ伝送のボトルネックが、AIインフラのアップグレードを妨げる主要な障害として浮上している。近年、半導体チップ内部の演算速度は飛躍的に向上したが、チップ同士を接続する銅配線は抵抗や発熱の問題により、データ伝送速度の向上に追いついていない。この問題に対し、次世代の超高速・超低消費電力光インターコネクト技術は、従来の銅ケーブル接続の有力な代替手段として注目されており、AIコンピューティングセンターおよびデータセンターが抱える伝送課題に新たな解決策を提示している。特にマイクロLEDは、この課題を解決する最適な光源として注目されており、AIインフラにおける「エネルギー障壁」を突破する中核技術となる可能性がある。

 

2026年3月初旬、中国のマイクロLED関連企業の株価が大きく上昇した。資金が集中して買いが集まった背景には、マイクロLEDを利用したCPO(Co-Packaged Optics)技術の台頭がある。最近では台湾や中国を含むマイクロLED企業が、ディスプレイ用途だけでなく、光通信や光センサーといった「非ディスプレイ分野」への展開を加速している。

 

マイクロLED企業による光通信分野への進出

 

PlayNitrideは、高速変調が可能な通信専用Micro-LEDチップの開発を進めるとともに、超高解像度LED on Silicon(LEDos)技術を光接続用アレイへ転用する研究開発を強化している。同社は2026年1月、Brillinkとのパートナーシップを発表し、マイクロLEDを基盤とする光インターコネクトソリューションを共同開発すると明らかにした。

 

AUOもまた、既存のディスプレイサプライチェーンを活用し、次世代AIサーバー向けCPO市場への参入準備を進めている。同社は子会社でLEDチップメーカーのEnnostarが保有するマイクロLED技術と、光受信機技術を持つTyntekの技術力を組み合わせ、グループ内での垂直統合を試みている。

 

中国最大のディスプレイメーカーであるBOEは、子会社HC-Semitekと協力し、8インチGaN on Si(シリコン基板上の窒化ガリウム)ベースのマイクロLED量産体制を構築した。さらに中国政府が推進する「半導体自立」戦略に合わせ、AIチップ間の光接続を実現するための低コスト光源サプライチェーンの構築を進めている。

 

AIデータセンターの高速伝送を実現するためのCPO(Co-Packaged Optics)パッケージング技術ロードマップ(出典:Micromachines 2025, 16, 1037)
AIデータセンターの高速伝送を実現するためのCPO(Co-Packaged Optics)パッケージング技術ロードマップ(出典:Micromachines 2025, 16, 1037)

 

マイクロLEDが光インターコネクトの最適光源とされる理由

 

マイクロLEDが光インターコネクト用途で有力視されている理由はいくつかある。第一に、超高速変調能力である。マイクロLEDは素子サイズが小さいほどRC遅延(RC Delay)が減少し、電流密度を高めることができるため、数GHz以上の超高速変調帯域幅を確保することが可能である。これにより、単一ピクセルあたり数Gbpsのデータ伝送が実現できる。

 

第二に、エネルギー効率の高さである。レーザー光源であるVCSELとは異なり、マイクロLEDは共振器構造を必要としないため、駆動電力を非常に低く抑えることができる。約1pJ/bitレベルのエネルギー効率は、AIデータセンターの電力消費を大幅に削減できる可能性を持つ数少ない技術とされている。

 

第三に、高密度パッケージングへの適性である。マイクロLEDはマイクロメートル単位のピッチで数千個の光源を配置することができ、HBM(高帯域幅メモリ)やGPUダイの上に直接統合することが可能である。モノリシック統合やハイブリッド統合によって、単位面積あたりのデータ伝送密度を最大化できる。

 

従来のディスプレイ用マイクロLEDが色再現性や輝度性能の向上を中心に開発されてきたのに対し、光インターコネクト用途では半導体プロセスとの整合性が重要な要素となる。これまでの4インチや6インチのサファイアウェーハプロセスから、8インチおよび12インチのGaN on Siプロセスへ移行することで、既存の半導体ファブの製造装置をそのまま利用できるようになる。この変化は製造コストの低減につながるだけでなく、CMOSドライバICとマイクロLEDを単一パッケージに統合するモノリシック統合を可能にし、光インターコネクトソリューションの商用化を加速させると期待されている。

 

専門家の間では、将来的にマイクロLEDが単なる「ディスプレイ技術」から脱却し、AI半導体の性能を左右する重要なデバイスとして認識される時代が到来する可能性が指摘されている。マイクロLED産業が、大量生産によるコスト低減と光インターコネクション応用における技術的実現性の検証という二つの重要課題で突破口を開くことができれば、スマートウォッチやARスマートグラスなどの民生用ディスプレイ市場を超えて、新たな市場領域を切り開くことができると見られている。その結果、マイクロLED市場の規模も今後大きく拡大していく可能性がある。