2D・3Dを自在に切り替える次世代ディスプレイ技術が登場、超薄型レンズで広視野角を実現


日付:2026年4月23日

出典:THE ELEC

 

超薄型メタサーフェス技術で2D・3Dの自由な切り替えを実現

サムスン電子のサムスンリサーチ・ビジュアルテクノロジーチームと、浦項工科大学校(POSTECH)のナノスケールフォトニクス・統合生産研究室は、2次元(2D)画面と3次元(3D)画面を自由に切り替えられる次世代ディスプレイ技術を開発した。サムスン電子は4月23日、POSTECHと共同で進めた「メタサーフェスレンチキュラーレンズベースの2D・3D切替ディスプレイ」に関する研究論文が、国際学術誌『Nature』に掲載されたと明らかにした。今回の成果は、将来のスマートフォン、タブレット、商用ディスプレイシステムに応用できる基盤技術として注目される。

 

このディスプレイの中核は、ナノメートル単位の微細構造を並べた超薄型レンズ、すなわちメタサーフェスを活用している点にある。メタサーフェスは、従来の曲面レンズに比べて大幅に薄型化できる一方、より複雑な光学機能を実現できるため、次世代ディスプレイやカメラシステムの分野で活発に研究されてきた。今回の技術は、異なる方向から入る光を同時に伝送できる特性を活用し、メガネなしでも実物を見るような立体感を得られるライトフィールドディスプレイをさらに進化させたものだ。

 

2D・3D切替ディスプレイの構造図(資料=サムスン電子)
2D・3D切替ディスプレイの構造図(資料=サムスン電子)

 

従来の3Dディスプレイの弱点を偏光制御で克服

従来のライトフィールドディスプレイは、エンターテインメント、拡張現実(AR)、医療映像など多様な分野で次世代技術として期待されてきたが、汎用的な普及には限界があった。主な理由は、レンズが厚くなりやすいこと、3D視野角が約15度と狭いこと、映像解像度が低下しやすいこと、さらにユーザーの位置をリアルタイムで把握する視線追跡装置が必要だったことにある。こうした制約は、実際の製品化や日常利用の大きな障壁となっていた。

 

今回の研究チームは、この問題を偏光の制御で解決した。光の進行方向を決める偏光を変えることでレンズの焦点が変化する特殊なナノ構造体、メタサーフェスレンチキュラーレンズ(MLL)を独自に設計し、電圧を加えるだけで2Dモードと3Dモードを切り替えられるようにした。文章を読んだり一般的な作業を行うときには高解像度の2Dモードを使い、映像を視聴するときには多視点に対応した没入型3Dモードを選択できる仕組みである。

 

メタレンズは、ディスプレイ前面に配置された偏光制御器の状態に応じて、凹レンズまたは凸レンズとして動作する。偏光制御器が作動すると、メタレンズは凹レンズとして働き、既存の凸レンズ効果を相殺する。凸レンズが光を内側へ集める力を、凹レンズが外側へ拡散させることで、互いに反対方向の光学作用が打ち消し合い、結果として光は直進する。これにより、必要なときには3D表示を実現し、必要ないときには通常の2D表示として高精細な画面を維持できる。 

 

厚さ1.2mmで視野角100度、有機ELパネルへの適用も検証

研究チームが開発したメタサーフェスレンチキュラーレンズは、高い開口数を持つよう設計されている。その結果、厚さ1.2ミリメートルという極めて薄い構造を保ちながら、100度に達する超広視野角を実現した。これは、ナノスケール設計によって、従来の大型でかさばる光学系が抱えていた物理的限界を乗り越えたことを意味する。従来の3Dディスプレイでは、厚みや視野角の狭さが実用化の大きな制約だったが、今回の技術はその弱点を大きく改善した点に価値がある。 

 

さらに研究チームは、25平方センチメートルの大面積メタレンズを製作し、有機ELディスプレイパネルに適用して動作を検証した。研究段階にとどまらず、実際の有機ELパネルで有効性を確認したことで、今後はスマートフォン、タブレット、商用ディスプレイシステムへの展開可能性が一段と高まった。サムスン電子は、次世代メタ光学素子とディスプレイの基盤技術におけるリーダーシップを基に、既存の限界を超える革新技術の研究を継続していくと説明している。今回の成果は、メガネ不要の3D表示技術、没入型映像体験、高精細2D表示を1つのディスプレイで両立させる方向性を示したものであり、今後の次世代ディスプレイ市場で重要な技術的転換点として評価される可能性が高い。