日付:2026年5月11日
出典:SemiDisplayView
サムスン電子、BOEにRFIを送付しOLED開発を打診
2026年5月11日の報道によると、サムスン電子は中国ディスプレイ大手のBOEに対し、次世代スマートフォン「Galaxy S27」(来年発売予定)向け標準有機ELパネルの開発に関する情報征詢書(RFI)を送付したことを確認した。RFIは製品仕様が固まった後、正式な見積依頼(RFQ)に進む前段階として発行される文書であり、開発に必要な技術情報を収集することを目的としている。
現時点ではBOEが正式に受注するためには、今後RFQの受領や製品開発プロセスの完了が必要となるが、サムスン電子が長年進めてきたGalaxy Sシリーズにおける有機EL供給網の多元化戦略を踏まえると、BOEが最終的に一部供給を獲得する可能性が高まっている。
OLED価格低減を狙う「競争導入」戦略
今回のRFI送付の背景には、有機ELパネル価格の引き下げという明確な狙いがある。現在、Galaxy Sシリーズの有機ELパネルはサムスンディスプレイがほぼ100%供給しているが、BOEがわずかでも供給に参入すれば、サムスン電子は価格交渉力を強化し、調達コストの削減が可能となる。
実際に2026年モデルのエントリー機種「Galaxy A57」では、サムスン電子はサムスンディスプレイと中国の華星光電(CSOT)から有機ELパネルを調達している。供給量の大半は依然としてサムスンディスプレイが担っているものの、供給網の多元化によってパネル価格は低下したと報じられている。
このようなデュアルソーシング戦略は、いわゆる「ナマズ効果 (既存のプレイヤーが緊張感を持ち、パフォーマンスが向上する)」を狙ったものであり、複数サプライヤー間の競争を通じて価格を引き下げる狙いがある。特にメモリー価格が高騰する中で、サムスン電子はスマートフォン事業の収益確保のため、新たなコスト削減余地を模索している。
BOEとの関係改善とサプライチェーン再編
BOEは過去にサムスンの低価格Galaxyモデル向けに有機ELを供給していたが、2025年には供給が停止された経緯がある。またそれ以前には、サムスンディスプレイがBOEに対し4件の中核特許侵害を主張し、両社は法廷闘争を繰り広げていた。
しかしその後、両社は和解に至り、2025年12月にはBOEの董事長である陳炎順氏がサムスン電子本社を訪問し、ビジュアルディスプレイ事業責任者の梁碩雨氏らと会談を行った。この会談では、液晶テレビ用パネルの追加供給に加え、有機ELスマートフォンパネルでの協力も議題に含まれていたとされる。
こうした関係改善の流れが、今回のRFI送付の背景にあるとみられる。
サムスングループ内の利害調整と市場環境の変化
現在、サムスンディスプレイはサムスン電子向けGalaxyシリーズの有機EL市場において約99%のシェアを維持しているが、グループ内では利害の調整が求められている。サムスン電子はより低価格での調達を望む一方、サムスンディスプレイはApple向けiPhone用有機EL市場においてLGディスプレイと激しい競争を繰り広げており、高い収益性の維持が不可欠である。
特にサムスンディスプレイは、折りたたみ型iPhone向けパネルの主力供給者であり、さらにIT向け有機EL分野でもLGディスプレイの攻勢に直面している。そのため、固定費負担の軽減と利益率の確保を通じて、Appleとの交渉力を維持する必要がある。
一方で、メモリー半導体価格の上昇によりサムスン電子のスマートフォン事業のコストは急増しており、有機ELなどハードウェアコストの削減が急務となっている。このため、第三のサプライヤー導入による柔軟な供給体制の構築が検討されている。
中国メーカー台頭とOLED市場の構造変化
さらに市場環境にも変化が見られる。メモリー価格の高騰により、中国スマートフォンメーカーは生産調整を余儀なくされており、2026年1月から4月にかけて、小米などの減産規模は累計で約1億台に達したとされる。この影響で、サムスンディスプレイの中国向け有機EL出荷は今後も縮小する可能性が高い。
市場調査会社Counterpointのデータによると、世界の有機EL市場シェアはサムスンディスプレイが37%で首位、BOEが15%で2位となっている。さらにBOE、Visionox、華星光電の中国勢3社合計では38%に達しており、サムスンディスプレイの支配的地位は中国メーカーによって着実に揺さぶられている。
このような状況下で、サムスン電子がBOEとの関係を再構築し、供給網の再編を進める動きは、今後の有機EL市場の勢力図に大きな影響を与える可能性がある。