OLED(有機EL)照明の開発は2000年代初頭から本格化し、面発光という従来光源にはない特長を活かして、建築照明、インテリア、医療、そして近年では自動車分野へと応用範囲を拡大してきた。特に自動車用OLEDテールライトは、OLED照明産業の中でも最も商業化が進んでいる用途の一つである。
OLED照明技術の誕生と初期の産業化
2001年、米国イーストマン・コダック社は、有機EL技術を照明用途に応用する研究成果を発表し、発光材料とデバイス構造の最適化により、均一で効率的な面発光を実現できることを示した。これがOLED照明技術の実用化に向けた大きな一歩となった。
2008年にはドイツのMerckがOLED照明パネルの生産を開始し、発光材料や輸送層材料の供給体制を含めた産業基盤の整備が進んだ。2010年にはフィリップスがオランダ・アイントホーフェンにOLED照明の試作工場を設立し、照明用途に適した大面積化や長寿命化の研究開発を本格化させた。
商用化の進展とフレキシブルOLED照明
2011年、日本のパナソニックは世界初となる有機EL照明パネルの商用化に成功し、住宅用照明として市場投入した。2012年には米国GEがフレキシブルOLED照明パネルの製造に成功し、薄型・軽量・曲面対応というOLED照明の特長が注目されるようになった。
2014年にはLG Chemが世界初の有機EL照明パネルの量産を開始し、住宅用照明や店舗照明、デザイン照明などへの応用が拡大した。2016年にはPhilips Lighting(現Signify)がフラットパネル型OLED照明を発表し、建築空間に溶け込む新しい照明デザインの可能性を示した。
自動車用OLEDテールライトの台頭と技術動向
2010年代後半からは、OLED照明の応用分野として自動車用リアコンビネーションランプ、特にテールライトへの採用が本格化した。OLEDは点光源であるLEDとは異なり、均一な面発光を実現できるため、デザイン自由度が高く、車両のブランドアイデンティティを強調する光表現が可能である。
AudiはOLEDテールライトをいち早く量産車に採用したメーカーの一つであり、A8やQ5、Q8などの高級車種に導入してきた。近年では、セグメント化されたOLEDテールライトが実用化され、走行モードやドライバー支援システムと連動して発光パターンを変化させる「コミュニケーションライト」としての機能も加わっている。
材料面では、高輝度かつ長寿命な赤色発光材料の改良が進み、自動車用途で求められる高温耐性(85℃以上)や長時間点灯条件への対応が可能になってきた。また、重水素化有機材料や高耐久封止技術の導入により、車載環境における信頼性も大きく向上している。
OLED照明の現在地と今後の展望
OLED照明は、従来の白熱電球や蛍光灯と比べて消費電力が低く、薄型・軽量で、自然で眩しさの少ない光を実現できる点が大きな特長である。近年は建築照明やインテリア用途よりも、自動車用OLEDテールライトや内装アンビエント照明といった高付加価値・デザイン重視の分野での実用化が先行している。
今後は、自動運転や車車間通信(V2X)との連携を視野に入れた表示機能付きOLEDテールライトの進化、さらにはフレキシブルOLEDを活用した立体的・曲面デザインの拡大が期待されている。OLED照明技術は、単なる「光源」から「情報とデザインを融合するデバイス」へと進化しつつあり、自動車産業における存在感は今後さらに高まっていくと考えられる。