日付:2026年7月21日
出典:The Elec
シグマインテルは、XR機器向けマイクロ有機EL市場が2028年から2029年を境に本格的な成長局面へ入るとの見通しを示した。ARやVR、MR分野で次世代ディスプレイ需要が高まる中、BOEをはじめとする主要サプライヤーが生産能力の拡大に動いており、マイクロ有機ELの量産体制が段階的に強化されることで、市場全体の立ち上がりが加速するとみられている。今後のXRディスプレイ市場を占ううえで、マイクロ有機ELの供給能力、性能向上、そしてMR機器での採用拡大が重要な焦点になりそうだ。
2028年から2029年にかけてマイクロ有機EL市場が拡大へ
シグマインテルのリサ・リー代表は7月21日、ソウル市江南区のCOEXで開催された「ディスプレイ・ビジネス・フォーラム2026」において、「変革の時代:グローバルディスプレイ、AR・VR市場見通し」をテーマに講演し、BOEを含む複数の供給企業が2027年から生産能力を大幅に拡大すると説明した。そのうえで、マイクロ有機EL市場全体は2028年から2029年の間に本格成長を開始するとの見方を示した。
シグマインテルの予測によると、世界のXR機器向けマイクロ有機EL出荷量は、2025年の320万台から2026年には440万台、2027年には650万台、2028年には950万台へと増加する見通しだ。さらに2029年には1580万台、2032年には2360万台に達すると予測されており、今後数年間で市場規模が大きく拡大するシナリオが描かれている。特に、次世代ヘッドマウント機器や空間コンピューティング端末の進化に伴い、高精細かつ高輝度な超小型ディスプレイへの需要が一段と強まる可能性がある。
BOEなどの投資拡大で量産効果と価格競争力が向上
現在、BOE、シーヤテック、サイドテックなどがマイクロ有機EL生産ラインへの投資を進めている。量産規模が拡大すれば、製造コストの低下が進み、既存の高速液晶ディスプレイ(LCD)との価格差も徐々に縮小すると見込まれている。これまでマイクロ有機ELは高性能である一方、価格面が普及の障壁の一つとされてきたが、供給網の強化と設備投資の進展によって、その状況が変わる可能性が高まっている。
需要拡大の要因としては、Metaの次世代MR機器が有力視されている。シグマインテルは、現在のMetaのVR製品では主にLCDが採用されているものの、次世代製品からはマイクロ有機ELへ転換する可能性が高いとみている。マイクロ有機ELはLCDより平均販売価格が高いものの、表示性能に優れ、コントラスト、応答速度、画質の緻密さ、没入感の面で優位性があるためだ。とりわけMR機器では、現実空間とデジタル映像を高い精度で重ね合わせる必要があるため、ディスプレイ性能が製品体験を左右する重要な要素になる。
一方で、マイクロ有機ELの生産能力が実際にどこまで消化されるかは、MR市場の成長に大きく左右されると分析されている。マイクロ有機ELは画面サイズや輝度の制約があるため、MR以外の分野に大規模に適用するのは依然として難しいとみられている。このため、供給拡大だけでなく、MR市場そのものの立ち上がりが業界全体の成長速度を決める重要な変数になる。
輝度、画素ピッチ、リフレッシュレートの改善が今後のカギに
シグマインテルは、MRおよびVR市場の短期的な成長については限定的との見方も示している。世界のVR・MR機器出荷量は、2024年の760万台から2025年には410万台へ減少し、2026年と2027年もそれぞれ370万台、520万台にとどまると予測された。つまり、最終製品市場は短期的には踊り場の状況にあるものの、その間にも中核部材であるマイクロ有機ELの技術開発と供給体制の整備は着実に進む構図になっている。
技術面では、マイクロ有機ELの輝度改善が続いている。シグマインテルは、2025年に5000ニットだったマイクロ有機ELの輝度が、2026年には8000ニットから1万ニット、2027年には1万5000ニットまで高まると予想している。さらに2028年以降は、True RGBとタンデム構造の適用により、2万ニットから3万ニットの水準まで引き上げられる可能性があるとみている。AR分野では外光環境下での視認性が特に重要であり、輝度向上は市場拡大の絶対条件の一つといえる。
画素ピッチについては、2025年時点でソニーが4.7マイクロメートル、シーヤテックが6マイクロメートル水準にあるが、2028年以降は3~4マイクロメートルまで縮小すると予測された。これにより、より高精細な表示が可能になり、近眼視用途でも画素感の少ない自然な映像表現に近づく見通しだ。リフレッシュレートも、90Hzから120Hzを経て、144Hz以上へと向上する見込みで、映像の滑らかさや高速動作時の視認性改善にもつながる。
リサ・リー代表は、マイクロ有機ELの弱点は輝度にあり、とりわけ拡張現実(AR)市場へ適用するには依然として低い水準だと指摘した。そのうえで、トリプルタンデム技術を適用し、2027年には輝度を1万5000ニットまで高める考えを示した。今後のマイクロ有機EL市場では、単なる高精細化だけでなく、高輝度化、低コスト化、量産安定化を同時に進められるかどうかが、XRディスプレイ競争の勝敗を左右することになりそうだ。