日付:2026年7月9日
出典:JMInsights
■ 非光学センサー事業を売却、戦略再編を加速
国際的な光電子半導体大手であるams OSRAM(エーエムエス・オスラム)はこのほど、大規模な資産売却を正式に完了した。総額5億7000万ユーロの現金取引により、同社は非光学アナログ/ミックスドシグナルセンサー事業をインフィニオンへ譲渡した。
今回の取引は、ams OSRAMが進める2026年戦略再編の中核的な一手であり、同社が汎用センサー分野から完全に撤退し、「デジタルフォトニクス(Digital Photonics)」へ全面的に集中する転換点となる。特に、Micro LED光インターコネクトやAIデータセンター向けフォトニックエンジンといった高成長領域への重点投資が明確になった。
■ 資産売却で約6.7億ユーロを確保、財務基盤を強化
今回売却された事業には、位置、圧力、慣性などの非光学センサー製品群が含まれる。これらは安定した収益源であったものの、同社の光技術を核とする競争戦略とは方向性が異なっていた。
さらに、年初に実施したエンターテインメントおよび産業照明事業の売却と合わせ、同社は累計約6億7000万ユーロの資金を回収している。この資金は主に負債返済と資本構造の最適化に充てられ、残余はすべて中核事業の研究開発および生産能力拡張に投入される予定である。これにより、最先端光電子技術の実用化を支える資金基盤が整備される。
■ 4大コア事業体制を確立、Micro LEDを成長エンジンに
事業のスリム化を経て、ams OSRAMは以下の4つのコア事業領域を確立した。すなわち、光学半導体、Micro LEDディスプレイおよび光通信チップ、先進光学センサー、そしてOSRAMブランドの自動車照明である。
このうち、自動車照明事業は安定的なキャッシュフロー源として新規分野への投資を支える役割を担う。一方で、Micro LED光インターコネクト、高画素スマート車載照明、AR用マイクロエミッター、産業用光学センサーが主要な成長ドライバーとして位置付けられている。同社は明確に、世界的なデジタル光学分野のリーダー企業を目指す方針を打ち出している。
■ AI時代に不可欠な光インターコネクト技術
現在、AI計算能力の急速な拡大により、従来の銅配線によるインターコネクトは物理的限界に近づいている。このため、短距離かつ超低消費電力の光インターコネクトが業界の必須技術となりつつある。
ams OSRAMが注力するMicro LED光インターコネクト技術は、データセンターにおける「多チャネル・低消費電力・中速通信」という要件に適合する。大量の微小光源による並列伝送を活用することで、1ビットあたりサブピコジュール級の超低エネルギー消費を実現し、ラック内やチップ間の超短距離通信に最適なソリューションを提供する。
■ 2027年の商用化へ、業界連携で開発加速
同社はすでに複数の産業パートナーと共同開発を進めており、Micro LED光源、光学部品、駆動ASICを統合した一体型ソリューションの構築を目指している。商用化は2027年を見込んでいる。
また、AR向けMicro LEDの量産技術や車載品質基準で培った製造体制を活用することで、技術の量産移行を迅速に進め、商業化リスクを大幅に低減できるとされる。
■ グローバルで進む競争、BOEなども参入
現在、Micro LED光インターコネクトのエコシステムは急速に拡大しており、MediaTek、Microsoft、Credoに加え、中国ではBOEやHC SemiTekなどが関連技術の開発を進め、一定の成果を上げている。
主流であるCPO(Co-Packaged Optics)レーザーインターコネクトと比較すると、Micro LED方式は超短距離通信、大規模並列性、超低消費電力に優れる特徴を持つ。これにより既存技術を補完し、AIデータセンターにおける短距離伝送の課題を解決する有力な選択肢となる。
今回の事業売却は、ams OSRAMが非中核事業を徹底的に整理し、デジタルフォトニクス領域へ資源を集中させる明確な戦略判断を示している。2027年の商用化が視野に入る中、同社は従来の照明メーカーからハイエンド光半導体企業へと変貌を遂げ、AIデータセンター、スマートカー、AR消費電子といった先端市場において重要な役割を担うことが期待される。