スマートフォン用のOLEDディスプレイの開発の歴史


スマートフォン用OLED(有機EL)ディスプレイは、高画質、省電力、薄型・軽量という特長を背景に、スマートフォンの進化を支える中核技術として発展してきた。特に2010年代後半以降は、フレキシブルOLED技術の成熟により、折り畳み式スマートフォンという新たな製品カテゴリーを生み出している。

 

初期のOLEDスマートフォンとAMOLEDの普及

2007年、サムスンは初のスマートフォン向けOLEDディスプレイを発表した。4,096色表示という当時としては十分な表現力に加え、バックライトを必要としない構造により、高いコントラストと省電力性を実現した。

 

2010年には、サムスンが世界初のスマートフォン用AMOLED(Active Matrix OLED)ディスプレイを発表し、画素ごとの電流制御によって高精細化と低消費電力を両立させた。これにより、OLEDはハイエンドスマートフォンの主要ディスプレイ技術として急速に普及していった。

 

高解像度化と曲面デザインの進化

2012年、LGディスプレイは世界初となるフルHD解像度のスマートフォン用OLEDディスプレイを発表し、OLEDの高精細化が一気に進展した。これにより、大画面化と高画質化が同時に求められるスマートフォン市場の要求に応えることが可能となった。

 

2015年には、サムスンが曲面AMOLEDディスプレイを採用した「Galaxy S6 edge」を発売し、ディスプレイをデザイン要素として積極的に活用する流れを確立した。曲面OLEDは、フレキシブル基板技術と薄膜封止技術の進歩を象徴する製品となった。

 

iPhone X以降の本格普及と市場拡大

2017年、AppleはiPhone XにOLEDディスプレイを採用し、高コントラスト、広色域、低消費電力といったOLEDの特長を一般消費者層に広く浸透させた。この採用を契機に、スマートフォン用OLEDディスプレイはフラッグシップモデルだけでなく、中価格帯モデルへも急速に拡大していった。

 

折り畳み式スマートフォンとフレキシブルOLEDの進化

2019年以降、フレキシブルOLEDを基盤とした折り畳み式スマートフォンが登場し、スマートフォン用OLED技術は新たな段階に入った。サムスンは「Galaxy Fold」や「Galaxy Z Fold」「Galaxy Z Flip」シリーズを通じて、内折り・外折りの両方式を量産レベルで確立した。

 

近年では、折り畳み耐久性を高めるために、超薄型ガラス(UTG)の採用、ヒンジ構造の高度化、折り目(クリース)を目立たなくする画素設計や材料改良が進められている。また、中国メーカーを中心に、Visionox、BOE、TCL CSOTなどがフォルダブルOLEDの量産能力を強化し、市場競争は一段と激化している。

 

さらに、2020年代半ば以降は、折り畳み式に加えてスライダブルやロールブルといった可変形OLEDディスプレイの試作・実証も進んでおり、スマートフォンのフォームファクターは大きな転換点を迎えている。

 

スマートフォン用OLEDディスプレイの現在地と今後

スマートフォン用OLEDディスプレイは、高画質や省電力性に加え、フレキシブル性という独自の価値を武器に、折り畳み式スマートフォンという新市場を創出した。今後は、低消費電力化をさらに進めるための高効率発光材料や、可変リフレッシュレート(LTPO)技術、耐久性を向上させる封止技術の進化が重要なテーマとなる。

 

OLEDディスプレイ技術の進歩は、スマートフォンの形状や使い方そのものを変革し続けており、今後も次世代モバイルデバイスの中核技術として発展していくことが期待されている。