サムスンディスプレイ、世界初となるIT向け第8世代有機EL量産ラインを5月に本格稼働


2026年2月2日 / 出典:THE ELEC

 

サムスンディスプレイが、IT向け第8世代有機EL量産ラインを世界で初めて立ち上げ、2026年5月から本格的な量産に入ることが明らかになった。このラインで生産されるパネルは、2026年第4四半期に発売予定のアップル初の有機EL搭載MacBookに採用される見通しであり、IT用有機EL市場における大きな転換点となりそうだ。

 

世界初のIT第8世代有機EL量産、A6ラインが5月始動

サムスンディスプレイは、忠清南道・牙山(アサン)キャンパスに構築したIT向け第8世代有機EL生産ライン「A6」を、2026年5月から量産稼働させる。IT第8世代有機ELラインの量産は世界初となる。

 

業界関係者によると、サムスンディスプレイは5月からA6ラインに量産用のガラス基板を投入する計画で、すでに主要な協力会社とスケジュールを共有しているという。ディスプレイ業界では、量産用ガラス基板の投入は、そのラインが本格量産フェーズに入ったことを意味する。

 

2024年3月、サムスンディスプレイ牙山キャンパスで開催されたIT向け第8.6世代有機EL製造装置の搬入式典で、サムスンディスプレイおよび主要製造装置メーカーの経営陣が記念撮影を行っている。(出典:サムスンディスプレイ)
2024年3月、サムスンディスプレイ牙山キャンパスで開催されたIT向け第8.6世代有機EL製造装置の搬入式典で、サムスンディスプレイおよび主要製造装置メーカーの経営陣が記念撮影を行っている。(出典:サムスンディスプレイ)

 

アップル初の有機EL MacBook向けパネルを独占供給

A6ラインで生産される有機ELパネルは、アップルが2026年第4四半期に発売する予定の初の有機EL MacBookに搭載される。製品は14インチと16インチの2モデル構成になる見込みだ。サムスンディスプレイは、2026年末までに約200万台分の出荷を目標としていると伝えられている。

 

もっとも、A6ラインは5月から量産に入るものの、MacBook用モジュールに必要な一部部品については、依然として開発が完全には終了していない。主な理由はコストであり、アップルは有機EL MacBookの製造原価を抑えるため、部品設計を段階的に見直してきた。さらに、製品発売前には信頼性評価も必要となる。

 

サムスンディスプレイとしては、A6ラインが初の量産ラインであることを踏まえ、まずは前工程で有機ELパネルを安定的に確保することを最優先課題としているとみられる。パネル生産を先行させたうえで、後工程でモジュールを組み合わせる戦略だ。第3四半期からは、MacBookを組み立てるフォックスコンに有機ELパネルを供給する必要があり、こうしたスケジュールを前提にA6ラインの稼働時期が決定されたと考えられる。

 

BOEも追随、IT向け第8世代有機EL競争が本格化

サムスンディスプレイは、2023年4月にIT向け第8世代有機ELラインへ2026年までに約4兆1,000億ウォンを投資し、2026年から年間1,000万台規模(14.3インチ換算)のIT用有機ELパネルを生産すると発表している。この生産量は同社全体売上高の約20%を占める規模を想定しており、A6ラインは月産1万5,000枚の第8世代ガラス基板投入を前提に設計されている。

 

同社はアップル以外のITメーカーの開拓にも注力しており、デル、HP、レノボといった主要ノートPCメーカー、いわゆる「DHL」向けに有機ELパネルを供給することで、ライン稼働率の向上と製造原価の低減を狙っている。

 

一方、中国のBOEもIT向け第8世代有機EL分野でサムスンディスプレイを追撃している。BOEは直近の投資家説明会で、成都に建設中のIT向け第8世代有機ELライン「B16」が2026年下半期に量産を開始する見通しだと明らかにした。このラインは2025年12月30日に、当初計画より約5か月前倒しで「点灯(ランプアップ)」段階に入っており、量産開始後はノートPCやタブレット向け有機ELパネルの供給能力が大きく強化されるとしている。点灯とは、すべての連結工程でガラス基板を連続投入・通過させられる状態を指す。

 

BOEのB16ラインは月産3万2,000枚規模で設計されており、サムスンディスプレイのA6ラインの約2倍にあたる。BOEは当初から、このラインでIT向け有機ELだけでなくスマートフォン向け有機ELも生産可能な設計としている。ただし、2026年に発売されるアップルの有機EL MacBook向けパネルについては、サムスンディスプレイが単独で供給する見込みだ。

 

世界初のIT第8世代有機EL量産を皮切りに、ITディスプレイ市場では有機ELへの本格的なシフトと、サムスンディスプレイとBOEを中心とした競争が一段と激化していくとみられる。