サムスンディスプレイ、IT事業チームを強化…IT営業チームを新設


2025年7月17日 The Elec

 

IT用第8世代OLEDなど、IT製品事業を強化

 

サムスンディスプレイがIT事業チームを強化した。現在建設中のIT用第8世代有機EL(OLED)生産ライン「A6」の来年稼働を見据え、顧客企業の確保やIT OLED市場の拡大に対応する意図があるとみられる。この第8世代OLEDラインでは、AppleのMacBookなどのIT向けOLEDの量産が予定されている。

 

サムスンディスプレイは7月1日付で、IT事業チーム内にIT営業チームを新設する組織改編を実施した。従来のIT事業チームにはIT技術チームとIT開発チームしかなかったが、今回の改編で営業部門が加わった。

 

既に中小型事業部や大型事業部には、それぞれ開発室や各種開発チーム、複数の営業チームやマーケティングチームが存在している。中小型事業部はサムスン電子のGalaxyやAppleのiPhoneなど、スマートフォン向けOLEDを主に手がけており、大型事業部はテレビやモニター用のQD-OLED(量子ドットOLED)を製造している。

 

サムスンディスプレイの新社屋「サムスンディスプレイリサーチ(SDR)」(写真=サムスンディスプレイ)
サムスンディスプレイの新社屋「サムスンディスプレイリサーチ(SDR)」(写真=サムスンディスプレイ)

 

今回の営業チームの新設は、IT OLED事業を本格化させるための準備と考えられる。Appleは昨年、初のOLED搭載iPadを発売したが販売は振るわなかった。しかしAppleは来年以降、OLED搭載MacBookなどを順次投入する計画を立てている。サムスンディスプレイはIT用第8世代OLEDラインで、これらの製品に対応する方針だ。

 

なお、昨年12月にはサムスンディスプレイがイ・ジョンヒョク副社長(大型事業部長)をIT事業チーム長に兼任させる人事を発表していた。中小型事業部はイ・ジュヒョン副社長が率いている。昨年12月にイ・チョン社長が代表に就任する前は、中小型事業部長だったイ・チョン氏(現代表)がIT事業チーム長も兼務していた。

 

当時、業界では大型事業部長にIT事業チームを兼任させることで、IT OLED事業全体の拡大に有利に働くという判断があったと解釈されていた。モニター向けのQD-OLEDと、タブレット・ノートPC向けの中小型IT OLEDでは技術が異なるが、顧客の要求や技術動向を踏まえれば、相乗効果が期待できる。同じ顧客に似たサイズの異なる製品を提案するような混乱も避けられる。

 

また、7月1日の人事では、サムスンディスプレイの本社企画チーム長(副社長)と中小型事業部の企画チーム長(副社長)が互いにポジションを交代した。どちらも投資などの判断を担う役職だが、本社の企画チーム長にはサムスン電子の「事業支援タスクフォース(TF)」への対応など追加の業務が伴う。

 

イ・ジェヨン サムスン電子会長の指示により、サムスン電子グループ各社は中国事業の拡大策を模索している。代表的な事例として、サムスン電子のTV事業部が、ここ数年取引が大きく減少していたBOEと液晶ディスプレイ(LCD)TVパネルの購入について協議を再開している。

 

サムスンディスプレイは、昨年12月のイ・チョン社長の就任以降、少しずつ役員人事を行ってきたとされる。今回の7月1日の人事も、それに続くものだ。