2025年7月3日 The Bell
サムスン電子は第7世代となるフォルダブルフォン「Galaxy Z Fold 7」「Flip 7」をまもなく米・ニューヨークで発表します。フォルダブル市場の先駆者である同社ですが、近年は中国メーカーの急速な追随と技術完成度競争に直面しており、新製品の重要性が増しています。今回の機種では、製品の薄型化、ディスプレイの拡大、AI機能の搭載などを通じて差別化を図り、特に中国製スマートフォンの影響が少ない北米・欧州市場でリーダーシップを再確認する戦略です。本稿では、サムスンの2025年下半期モバイル戦略の鍵を握る「Galaxy Unpacked 2025」の中身を一足早く覗いてみます。
■ サムスン、9月に“2回折る”形式の「トリプルフォールドフォン」を量産開始へ
発売は第4四半期中が有力。サムスンが初めて市場投入するタイプの製品となるため、市場反応を探るための小規模生産に焦点が当てられる見込みです。
業界では、7月9日に米ニューヨークで開かれる「Galaxy Unpacked」イベントで、トリプルフォールドフォンに関する情報が一部公開される可能性が高いと見ています。量産に先立って市場の関心を高める必要があるためで、主要スペックやデザインの一部が紹介される可能性があります。
■ 国内・中国市場向けに少量生産、技術力とブランドイメージを強調
7月2日、業界関係者によると、サムスンは最近、主要部品の協力企業に対してトリプルフォールドフォンの量産スケジュールを共有したとのことです。9月の生産量は極めて限定的とされており、生産はサムスン電子のスマートフォン「マザーファクトリー」である韓国・亀尾(クミ)事業所で実施される予定です。
9月の生産分は、韓国および中国市場を中心に小規模に供給される見込みです。出荷価格は400万ウォン(約45万円)を超えると予想されており、サムスンは無理な大量生産ではなく、技術力とブランドイメージの強化に重点を置いた戦略を選んだと見られています。
画面サイズの面では、今年のモデルと大きな差はないと見られます。
トリプルフォールドフォンの生産が限られた数量で行われる理由は、複雑なフォームファクターと高価な部品の組み合わせにより生産単価が高く、歩留まりの管理が難しいためです。また、市場の初期反応を見ながら段階的に生産体制を整備しようという意図も含まれています。
サムスンディスプレイなどの主要な協力企業も、トリプルフォールドフォン用の部品生産に入っています。サムスンディスプレイは、サムスン電子の生産計画に合わせて、8月中にトリプルフォールドフォン用有機EL(OLED)パネルの量産に入る予定です。
サムスン電子がこの時期にトリプルフォールドフォンを発表する背景には、中国メーカーとの技術競争を意識した動きであるとの分析もあります。サムスン電子は2019年にフォルダブルフォンを発売するなど市場をリードしてきましたが、最近では中国メーカーの急速な追い上げに直面しています。
特に華為(ファーウェイ)の追撃が激しい状況です。ファーウェイは昨年9月、世界初となる二つ折りのトリプルフォールドフォン「Mate XT」を中国市場に投入し、今年2月にはグローバル市場にも展開しました。発売からわずか2か月で販売台数が40万台を超えたと伝えられています。
さらにファーウェイは今年下半期に第2世代トリプルフォールドフォンの発売を予定しており、業界では新製品で耐久性と性能が大幅に向上していると見ています。
ディスプレイ業界関係者は、サムスン電子のトリプルフォールドフォン量産について「すぐに売上を狙うというよりは、自社の技術力が健在であることを強調する動きだ」とし、「価格が非常に高いため、市場が本格的に形成されるまでにはかなりの時間がかかるだろう」と説明しています。
■二重折りの大画面、最高スペックの部品を結集
サムスン電子の最上位スマートフォンとなる本製品には、現時点で使用可能な最高スペックの部品が多数搭載される見込みです。
まず、ディスプレイにはサムスンディスプレイの最新型フォルダブル用OLEDパネルが採用される予定です。トリプルフォールド構造の特性上、1つの画面を2回折る設計になるため、従来のフォルダブルよりも高い耐久性、薄さ、柔軟性が求められます。ディスプレイサイズはGalaxy Foldシリーズより大きく、約10インチ程度になる見込みです。
アプリケーションプロセッサ(AP)には、クアルコムの「Snapdragon 8 Elite」が搭載される可能性が高いとされています。高解像度マルチディスプレイ、高リフレッシュレート、マルチタスクを安定的に処理するには、最高スペックのAPが不可欠です。また、カメラもZ Fold 7並みの性能が搭載されると予想されています。
ただし、バッテリー容量については競合であるファーウェイと比べてやや劣る見通しです。サムスン電子はトリプルフォールドフォンの薄型フォームファクター実現に重点を置いており、画面が大きく折りたたみ構造が複雑なため、内部スペースに制約があり、放熱制御も難しいことから、大容量バッテリーの搭載には限界があります。一方、ファーウェイは「Mate XT」に5,600mAhの大容量バッテリーを搭載し、バッテリー駆動時間を最大限に確保する戦略を採っています。