韓国のディスプレイメーカーの高級OLED市場シェアが70%超に


2025年7月15日 WitDisplay

 

スマートフォン向け有機EL(OLED)市場では、韓国のディスプレイメーカーが主導する高級パネルの販売シェアが今年70%を超える見通しです。これは、AI搭載スマートフォンの普及に伴い、低消費電力かつ高解像度のパネル需要が急増していることによります。Samsung Display(サムスンディスプレイ)とLG Display(LGディスプレイ)がAppleへの独占供給を行っていることから、中国企業との競争において市場シェアの差を広げる好機となるとみられます。

 

市場調査会社Omdiaによると、スマートフォン向けOLED市場における高付加価値製品であるLTPO(低温多結晶酸化物)OLEDのシェアは、2024年の60.2%から2025年には70.1%に拡大すると予測されています。さらに2027年には80%を超え、2032年には85%に迫る見通しです。

 

一方、中国が中心となって供給するLTPS(低温多結晶シリコン)OLEDのシェアは、2024年の39.8%から2025年には29.9%へと減少、2027年には19.7%、2032年には15.1%まで縮小する見通しです。

 

LTPO OLEDとは、TFT(薄膜トランジスタ)にLTPO技術を適用することで電子移動速度を高め、電流漏れを抑えるOLEDパネルです。従来のIT機器用パネルに広く使われてきたLTPS素子は、LTPOに比べ電流漏れによってバッテリー消費が早くなるという弱点があります。LTPO OLEDは製造工程が複雑で難易度も高く、単価も高いため、以前はハイエンドスマホにしか採用されていませんでしたが、AIスマートフォンの市場拡大により、現在は需要が急増しています。

 

韓国メーカーは、AppleのiPhoneに搭載されるすべてのLTPOパネルを供給しており、その売上も急速に伸びています。Samsung DisplayのLTPOパネルの売上は、2022年の143億ドルから2023年にはやや減少して123億ドルとなりましたが、依然としてトップの座を維持しています。LG Displayは、Appleのサプライチェーンに参入したことで、売上が2022年の22億ドルから2023年には95億ドルへと急増しました。

 

中国勢については、国内メーカー向けにLTPO OLEDを供給して売上を伸ばしてはいるものの、技術や量産体制の面では韓国企業との差が依然大きい状況です。企業別に見ると、最大の供給業者はBOE(京東方)で売上は35億ドル、次いでTCL華星光電が15億ドル、Visionox(維信諾)が16億ドルとなっています。

 

業界では、2025年から2026年にかけて、SamsungおよびLGのLTPO OLEDパネルの販売がさらに拡大すると予測されています。これは、AppleがこれまでLTPOパネルの採用をProおよびPro Maxモデルに限定していたのを、2025年9月発売予定のiPhone 17シリーズから全モデルに拡大する計画があるためです。