2025年7月14日 SemiDisplayView
韓国メディアの報道によると、サムスンディスプレイが米国国際貿易委員会(ITC)に提起していた訴訟について、2025年7月11日、ITCは初期判決において「京東方(BOE)が営業秘密を侵害した」と認定し、輸入禁止命令を出すべきとの判断を下しました。
ITCの初期判決では、中国の京東方(BOE)とその8つの子会社がサムスンディスプレイの営業秘密を侵害し、米国関税法第337条に違反したと認定されています。この初期判断は最終判決ではないものの、ITCが不公正な貿易行為に対して調査を行った後に下されたものであり、非常に影響力が強い判断です。なお、初期判断が最終判断で覆ることは極めて稀です。
制裁対象となる製品は、サムスンの営業秘密を用いて京東方が製造したOLEDパネルおよびモジュール、およびそれを構成する部品です。今回の初期判断では、「限定的排除命令(Limited Exclusion Order)」および「禁止命令(Cease and Desist Order)」が下されました。
・限定的排除命令:侵害製品の米国への輸入を禁止する措置(それ以外の製品は対象外)
・禁止命令:京東方が保有する在庫および新たな生産・販売も含めた全体的な停止命令
この輸入禁止は、ITCの最終決定が下される11月以降に正式発効となり、その後2ヶ月以内に米国大統領が拒否権を行使するかどうかを判断します。
仮にこの初期判断が最終的に実行されれば、京東方はアメリカという世界最大市場へのOLED輸出が不可能になるだけでなく、自社生産にも大きな影響が出る見込みです。特に、アップル向けiPhoneのOLEDパネル供給を狙って多額の投資を行っている京東方にとっては深刻な打撃となるでしょう。
参考までに、2024年11月にITCが行ったサムスンディスプレイに対する特許337条調査の最終判決では、「違反なし」とされ、輸入禁止命令も出されませんでした。その理由のひとつは、「米国内産業の要件が満たされていない」と判断されたためです。
しかし、サムスンディスプレイはこの判決に不満を持ち、2025年5月中旬に米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に上訴しています。
サムスンディスプレイは近年、グローバルなOLED市場における優位性維持のため、337条調査を活用し、中国製OLEDの米国市場参入を阻止しようとしています。ただし、これは米国消費者にとってOLED製品の価格上昇や選択肢の減少をもたらし、米国ブランド企業の利益にも悪影響を与える可能性があると指摘されています。