韓国のITCHEM、年末までにOLED用重水リサイクル設備を9倍に拡大


2025年7月22日 The Elec

 

キム・インギュ代表が22日のコスダック上場記者懇談会で発表

昨年、UDC Venturesから資金調達…主力は医薬品素材

 

OLED用の重水(D₂O)リサイクル設備を保有するITCHEM(アイティケム)が、年末までに設備規模を9倍に拡大する方針を明らかにしました。

 

キム・インギュ代表は22日に開催されたコスダック上場に関する記者会見で、「2024年に年間1トン規模の重水リサイクル設備(昇級機)を構築した」と述べ、「年内に年間8トン規模の追加設備を建設する予定」と発表しました。合計で年間9トンの能力になります。

 

重水(D₂O)とは、水(H₂O)の水素原子を重水素(D)に置き換えたもので、OLED発光層の水素を重水素に置き換えることで、分子が安定し、発光効率と輝度が向上し、寿命も延びるとされています。

 

キム代表は「リサイクル設備では、純度80%の廃重水(20%軽水混合)を前処理・蒸留などを経て純度99%の重水へ再精製できる」と説明。「かつては全量輸入に依存していたが、LGディスプレイが5年前から国産化に取り組み、当社が約4年かけてこれに参加し成功した」と語りました。

 

2024年における韓国の重水輸入量は41トンであり、ITCHEMが年内に9トンの再生能力を確保すれば、国内供給の最大22%を賄えるとの期待を表明。さらに、「LGディスプレイは2022年からOLEDに重水を導入し始め、採用範囲が拡大している」と付け加えました。

 

OLED材料事業

現在、ITCHEMのOLED事業の主力は素材の合成で、主要取引先はLG化学、LT素材、SKマテリアルズJNCなど。これら企業がITCHEMから素材を受け取り昇華・精製し、LGディスプレイやサムスンディスプレイへ納品しています。

 

2024年のOLED素材売上は全体(約488億ウォン)の11%、約54億ウォンで、グリーンプライム材料とホール輸送層が主力。2025年には売上比率が20%まで増加する見通しです。

 

キム代表は「当社の強みは多様な顧客基盤」と述べ、「1次協力社は徳山ネオルックス、メルク、デュポンなどで、当社は2次協力社にあたるが、取引先が4社あり、両方のパネルメーカー(LGDとSDC)に納品しているのが他社との違い」と強調しました。さらに「重水の存在があるため、両社と取引せざるを得ない」とも述べています。

 

UDCとの関係

ITCHEMは2024年8月、米OLED材料大手UDC(ユニバーサルディスプレイ)の子会社UDC Venturesから54億ウォン(3.13%)の出資を受けました。キム代表は「UDCとは長期的視点で関係を見てほしい」と語り、「今後の投資展開はまだ不透明だが、ディスプレイを超える技術シナジーを期待している」と述べました。

 

また、次世代材料開発における顧客連携についても強調し、「インクや中間材料の相談時、LGDやUDCとの米国での打合せにITCHEMの担当者も同席して開発を進めている」と語りました。

 

医薬品事業とIPO(新規上場)

 

2024年の売上488億ウォンのうち、電子材料は40%、医薬品材料が60%。糖尿病治療薬原料が主力で、主な顧客はSKバイオテックやSTファーム。医薬品材料用にはK-GMP認証施設を保有しています。

 

上場形式にはテスラ要件(赤字企業の特例上場)を選択しましたが、キム代表は「3年間の黒字実績があるため、通常上場も可能だったが、顧客工場の納期に合わせるため特例を選んだ」と説明。ここで言う顧客は医薬品分野の顧客です。

 

(出典=アイティケム)
(出典=アイティケム)