サムスンディスプレイ、Micro LED本格参入…エコシステムの構図を変える


2025年7月15日 UBI Research

 

サムスンディスプレイは、イ・チョン社長の就任後初となる社内コミュニケーションイベント「D-Talks(ディートークス)」を開催した。この場でイ社長は、サムスンディスプレイの今後の戦略的方向性を示し、「超格差技術(圧倒的な差別化技術)」の確保を通じて、グローバル競争力を持続的に拡大していくという強い意志を表明した。

 

特にディスプレイ産業が急速に転換期を迎えている現在、従来のOLED中心構造を越えた事業の多角化の必要性を強調し、その一環としてMicro LED分野における技術の高度化と製品展開の拡大を明確に言及した。

 

イ社長の発言は単なる方向性の提示にとどまらず、サムスンディスプレイがMicro LED事業を単なるバックプレーン供給にとどまらず、パネル・材料・プロセスのすべてにおいて競争優位を確保するという宣言として受け止められている。これは、これまでサムスン電子が主導してきたMicro LED TV事業が、セット製造中心からディスプレイ全体に広がる可能性を示すシグナルとも解釈できる。

 

これまでサムスン電子は韓国内でMicro LED産業のエコシステムを主導してきたが、実際の素子供給やパネル生産においては台湾や中国の協力企業に依存せざるを得ない構造だった。たとえば、台湾のPlayNitrideや中国のSanan Optoelectronicsからチップ供給を受け、AUO(台湾)やBOE(中国)とはバックプレーン駆動技術の協力を進めてきた。これは、韓国内での中核部品・素材エコシステムがまだ十分に内製化されていない現状を反映している。

 

一方、サムスンディスプレイが本格的に技術投資を拡大し、「超格差技術」をMicro LEDに適用する方針を明らかにしたことで、国内エコシステムは質的に異なる転換点を迎えると予想される。

 

サムスンディスプレイはすでにOLEDにおいて世界最高水準のTFE(薄膜封止)、LTPO、低消費電力設計、バックプレーン駆動技術を保有しており、これらの技術はMicro LED素子の高解像度駆動や歩留まり向上、転写精度の確保にも応用可能である。特に、高集積駆動回路設計や低電流駆動特性の確保、自動化プロセスなどは、OLED技術におけるサムスンディスプレイの相対的な優位性といえる。

 

さらにサムスンディスプレイの参入は、単なる技術高度化にとどまらず、国内の素材・部品・装備メーカーとの協力強化を促す契機ともなるだろう。これは、長らくサムスン電子が外部に依存していたチップ供給、転写装置、プロセス装備などの中核分野に対し、内製技術力の強化と供給網の国産化を同時に推進する基盤となり、長期的には韓国内でのMicro LEDクラスター形成を引き起こす起爆剤となる可能性もある。

 

イ社長の発言は、単なるMicro LED技術開発の強化にとどまらず、ディスプレイ産業における次世代技術の主導権を国内エコシステム内で再構築するという戦略的な宣言として位置づけられる。サムスンディスプレイがOLEDの次を見据えてMicro LEDという新たな柱の本格育成に着手した今、産業構造の変化はもちろん、国内の中小企業や投資家にとっても新たな機会が広がる時期が到来したといえる。