TCL CSOT、200億元規模の8.6世代インクジェット印刷OLEDラインへの投資計画を策定


2025年7月9日 UBIリサーチ

 

TCL CSOTが月産4.5万枚の生産能力を確保し、2026年末の設備搬入を目標に掲げた。UBIリサーチの中国動向レポートによると、中国のディスプレイ企業TCL CSOT(China Star Optoelectronics Technology)は、広州のT9 OLEDライン近隣にあるT8敷地に8.6世代(2290×2620mm)OLED新規ラインを構築する計画を立てている。

 

この投資はインクジェット印刷(Inkjet Printing)技術をベースに進められ、第1段階の投資額は約200億元(約3.8兆ウォン)にのぼる。もともとT8敷地は太陽光(Solar)プロジェクト用として転換される予定だったが、計画が保留され、当初構想されていたOLED生産ライン用地として再活用されることになった。T8プロジェクトは2本の生産ライン、月産4万5,000枚(45K)規模の8.6世代OLEDラインとして設計されており、まず1本目のラインから先に投資が実施される予定。

 

投資スケジュールと技術体制

T8ラインの投資スケジュールは以下のとおり:

・2025年7月中に公式発表

・10月着工

・2026年末に設備搬入開始を目標

プロジェクトの総経理(プロジェクトマネージャー)にはLinpei(林佩)氏が就任し、インクジェット工程に関するコア技術は韓国人専門家が主導している。

 

インクジェット印刷技術の優位性と課題

インクジェット印刷方式は、従来のマスク蒸着方式と比べて約30%低コストで設備投資が可能というメリットがある。たとえば、Samsung Displayは忠清南道・牙山のA6ラインに約4兆ウォンを投資して、8.6世代のIT向けOLEDライン(月産1.5万枚)を構築中だが、これは伝統的な蒸着方式に基づいている。

 

一方、TCL CSOTはインクジェット技術を適用し、8.6世代として月産4.5万枚規模の生産能力を確保する計画であり、まずは200億元を投入する。

 

各パネルメーカーの8.6G OLEDライン構築計画
各パネルメーカーの8.6G OLEDライン構築計画

 

UBIリサーチの見解と中国の戦略的狙い

UBIリサーチのハン・チャンウク副社長は次のように分析している:

「インクジェットOLEDは輝度、寿命、大面積での均一性、歩留まりの確保などにおいて、依然として技術的な課題を抱えている。しかし、それでも中国は従来の蒸着方式との差別化を狙い、この技術を次世代の成長エンジンと位置づけ、政府の戦略的支援の下で本格的な量産に取り組んでいる。TCL CSOTのインクジェット、VisionoxのViP(Visionox Intelligent Pixelization)への各投資を通じて、中国初の大面積OLED量産を推進し、技術の主導権を握ろうとしている。」

 

ITディスプレイ市場の需要拡大が見込まれる中、大面積OLED分野でインクジェット技術が商用化できるかどうかが、今後の市場主導権を左右する重要な分岐点となるだろう。