2025年5月21日 UBIリサーチ
Visionoxは「SID 2025 国際ディスプレイ学会」において、第4世代OLED技術であるpTSF(Phosphor-assisted Thermally Activated Delayed Fluorescence Sensitized Fluorescence)の商用化の可能性を実証した。pTSFはハイパーフルオレッセンスOLEDの一形態であり、高色純度・高効率・長寿命を同時に実現する次世代ディスプレイ向けの有望な技術として注目されている。
今回開発されたグリーンOLED素子は、従来のDCI-P3色域を超えてAdobeRGBおよびBT.2020の要件を満たす超広色域を実現した。特に、pTSFベースのハイパーフルオレッセンスOLED素子は、CIEx < 0.21、FWHM(半値全幅)21〜27nmの高い色純度を示し、既存の燐光OLEDと比較して最大12%の効率向上と20%の寿命延長を達成したと報告した。
pTSF技術は、蛍光発光体の高い色純度、TADFホストによる100%の励起子利用、燐光補助材を介した効率的なエネルギー移動という3つの要素を組み合わせており、従来のOLED構造に比べて発光効率と安定性に優れる。また、G6量産ラインに対応した蒸着プロセスの最適化により、材料使用量を10%以上削減しつつ性能を維持している。
この技術を応用したプロトタイプ製品AおよびBは、既存のVisionox製品と比べてそれぞれ12%および6%の消費電力削減を実現した。さらに、DCI-P3およびAdobeRGBの色域カバレッジがいずれも99.5%以上を記録し、高温・高湿環境における信頼性試験でも商用製品と同等の性能を示した。
Visionoxは、今回の成果がハイパーフルオレッセンスOLEDの商用化に向けた重要なステップであるとし、今後はグリーンに加えてレッドおよびブルーのpTSF構造も開発し、BT.2020全色域のカバーを目指すとしている。
本研究は、中国の国家重点研究開発計画および清華大学化学科との共同研究により進められ、「SID 2025」学会にて試作品展示とともに発表された。