2025年7月18日 The Elec
LGディスプレイ、AppleのiPhone用OLED技術でサムスンディスプレイとの格差を縮小
チョン社長、LGイノテックに続きLGディスプレイでもApple事業の成果に注目
「神チョルドン(갓철동)」。これは、チョン・チョルドン氏がLGイノテックの社長を務めていた2018年12月〜2023年11月の間に付けられたニックネームで、「経営の神(God)」という意味を込めた愛称だ。
彼のリーダーシップのもと、LGイノテックの売上は2019年の7兆9800億ウォンから2023年には20兆6000億ウォンへと倍以上に成長。社員にも多額のボーナスが支給された。
そして2023年11月末、チョン氏がLGディスプレイの社長に就任すると、メディアは彼を「救援投手」として取り上げた。なぜならその年、LGディスプレイは非常に厳しい状況にあったからだ。売上はLGイノテックとほぼ同じ21兆3300億ウォンにまで減少し、2兆ウォン台の営業損失が2年連続で続いていた。
チョン社長がLGディスプレイに戻ってから、1年半が経過。最近、部品業界や証券業界では、彼の経営手腕、特にAppleへの対応力に再び注目が集まっている。サムスンディスプレイに比べ、技術的に大きく遅れていたiPhone向けOLEDで、LGディスプレイがその差を大きく縮めたからだ。また、LGイノテックの業績がかつてほどではなくなったことも背景にある。
LGディスプレイ、サムスンディスプレイ、LGイノテックの3社に共通するのは、「Apple事業の依存度が高い」ことだ。LGディスプレイが黒字転換した四半期には、iPhone向けOLEDの出荷量が多かった。サムスンディスプレイの営業利益のうち、3分の2以上はiPhone向けOLEDによるものとされる。LGイノテックの売上の80%以上はApple向けカメラモジュールだ。チョン社長が「救援投手」と呼ばれた背景にも、Appleビジネスへの期待があった。
少し前までは、部品業界の関心は、今年下半期発売予定のiPhone 17用OLEDの生産過程で発生した「クラック(ひび割れ)」問題に集まっていた。現在、iPhone 17用OLEDを製造しているのは、LGディスプレイとサムスンディスプレイの2社のみだ。クラックの深刻度、原因、解決策、Appleの要求事項など、さまざまな観測が出ていたが、最近では問題はひとまず収束したとされている。
この件を通じて明らかになったのは、かつて大きな差があったiPhone OLED技術において、LGディスプレイがサムスンディスプレイとの距離をかなり縮めたという点だ。
2年前までは、LGディスプレイは毎年この時期になるとiPhone向けOLEDの量産でつまずいていたが、昨年からはそうした問題が消えた。むしろ昨年は、iPhone 16の一部モデルで、LGディスプレイの方がサムスンディスプレイよりも早く量産の承認を受けたという事例もあった。業界では、Appleがサムスンディスプレイへの依存を緩和するため、意図的にLG製品を先に承認したと見られている。ただし、LGディスプレイの生産能力は限られており、早期承認されても総量には影響しないと考えられていた。
もちろん、次世代のApple製品向けOLEDの開発においては、依然としてサムスンディスプレイが先行している。Appleが来年発売する初のフォルダブル製品用パネルはサムスンが単独で供給し、複数年分のパネル数量も確保しているという。バータイプのiPhone向けOLEDでも、技術課題の多くはサムスンが先に解決している。
それでも、iPhone向けOLEDにおけるLGとサムスンの技術格差が確実に縮まっているのは、否定できない事実だ。昨年Appleが初めて発売したOLED iPad用パネルでは、LGディスプレイがサムスンを上回る数量を納品していた。
一方、LGイノテックは2024年の売上が21兆2000億ウォンで、前年より3%増加したが、営業利益は7060億ウォンで15%減少した。現在のLGイノテックの業績は、チョン社長が率いていた時期と単純には比較できない。なぜなら、コロナ以降Appleがプレミアムスマホ市場でシェアを大きく伸ばし、また競合のシャープがApple向けカメラモジュールで生産に問題を抱えていたため、LGイノテックは反射利益を得ていたという特殊事情があったからだ。それでも、業界はチョン社長のAppleビジネスへの対応力を高く評価している。
今年後半は「神チョルドン2.0」が実現するかどうかの試金石となるだろう。
アメリカ政府の関税政策の不透明さにより、iPhone 17の販売は楽観視できず、部品メーカー間での受注競争が激しくなると予想されている。Appleの年間iPhone出荷台数2億3000万台のうち、26%にあたる6000万台がアメリカで販売されており、関税による打撃で販売低迷が予想される中、LGディスプレイが健闘すれば、「神チョルドン2.0」が現実になる可能性は十分ある。