OLED材料技術の進化、UDCの市場における挑戦と機会が共存


CINNO Research、2025年7月2日

 

CINNO Research産業ニュースによると、米ユニバーサルディスプレイ社(Universal Display Corp., UDC)の2025年第1四半期報告では、材料および特許ライセンスによる収益が1億5900万ドルで、前四半期とほぼ同水準に留まりました。この期間にOLEDパネルの面積ベース生産量が前年比35%増加したにもかかわらず、UDCの収益増加は13%にとどまっており、そのギャップが潜在的な問題を浮き彫りにしています。

 

近年UDCは、青色燐光材料の研究開発を通じて成長を図ってきましたが、当初の期待ほどの進展は見られていませんしかし最近、LGディスプレイがUDCとの協力のもと、青色燐光発光材料の商業化に成功したという朗報が市場に届きました。ただしこの件についても懸念があり、LGの発表によれば、この新型青色燐光材料は従来の蛍光材料と併用する必要があるとのことです。

 

さらにUDCが直面しているもう一つの課題は、京東方(BOE)が2025年のDisplay Weekで、次世代材料とされるTADF(熱活性遅延蛍光)OLED発光材料を搭載したパネルを展示したことです。これはUDCの独占的地位に対する競合の挑戦を意味しているかもしれません。

 

UDCは、グローバル経済の相互依存性が高まる中で事業を展開しており、海外市場の開拓が財務の安定性と成長にとって極めて重要です。米国内にディスプレイ製造設備を持たないUDCは、完全に海外のパネルメーカーに依存しています。これは、収益の安定性や経済サイクルへの耐性を示すと同時に、長期的な成長力の指標でもあります。

 

海外展開により、米国内景気後退のリスクを回避できる反面、為替リスク、地政学的な不確実性、多様な市場動向への対応といった課題も伴います。

 

地域別収益(2025年第1四半期)

韓国市場:収益8,733万ドル(構成比52.52%)

 → 市場予想を8.06%下回る

 → 前四半期:9,213万ドル(56.77%)

 → 前年同期:1億240万ドル(61.96%)

 

中国市場:収益7,109万ドル(42.75%)

 → 前年比32.73%増で、アナリスト予想を上回る

 → 前四半期:6,537万ドル(40.28%)

 → 前年同期:5,747万ドル(34.78%)

 

日本市場:収益41万ドル(0.25%)

 → アナリスト予想(75万ドル)を44.93%下回る

 → 前四半期:60万ドル(0.37%)

 → 前年同期:125万ドル(0.76%)

 → これはJDIやシャープのOLED成長の停滞を反映

 

今後の予測(2025年第2四半期)

総収益:1億6,395万ドル(前年比+3.4%)

韓国:9,343万ドル(57%)

中国:5,831万ドル(35.6%)

日本:61万ドル(0.4%)

 

なお、Counterpointの調査では、2025年3月の米国スマートフォン販売が前年比50%増とのデータがあり、関税回避目的の調達増も一因と見られます。これにより、現時点での予測は実際の需要を過小評価している可能性があります。

 

通年予測(2025年)

総収益:6億7,251万ドル(前年比+3.8%)

韓国:4億1,806万ドル(62.2%)

中国:2億5,782万ドル(38.3%)

日本:360万ドル(0.5%)