出典:WitDisplay/2025年10月14日
サムスンの折りたたみ有機ELパネルを独占支えるInnotech
韓国のInnotech(イノテック)は、「サムスンディスプレイの折りたたみ(フレキシブル)有機ELディスプレイの信頼性試験装置(環境試験装置)の独占供給企業となった」と発表した。これは、サムスンディスプレイ製パネルを採用した折りたたみスマートフォン向けに、同社が唯一の信頼性試験装置を供給していることを意味する。
Innotechは今月初めに韓国金融委員会へ提出した証券報告書の中で、「当社はサムスンディスプレイのフレキシブルディスプレイ向け信頼性・環境試験装置分野で独占供給の地位を維持している」と説明した。その理由として、「装置設計からソフトウェア開発、生産、組立までの全工程を自社内で完結しており、顧客の要望に迅速に対応できるため」としている。さらに「競合他社が供給する装置の技術サポートや保守サービスも行い、顧客との協力関係を築いている」と付け加えた。
Innotechによると、「折りたたみディスプレイ市場の立ち上がり以来、信頼性試験装置を提供することで技術的優位を確保してきた」とのことだ。折りたたみディスプレイ市場は、2019年にサムスン電子の初代Galaxy Foldが発売されて以来、急速に拡大しており、同社は現在、折りたたみディスプレイやスライド式ディスプレイなどの次世代製品を支援するための共同研究開発を進めている。
成長を支える独占体制と将来のリスク
Innotechの証券報告書では、「フレキシブル」という用語が折りたたみ式、スライド式、ロール式ディスプレイといった新型形態の製品を包括する意味で用いられている。
報告書の「最終用途別販売構成」によれば、サムスン電子の折りたたみスマートフォンが市場の大部分を占めている。一方、Lenovoはサムスンディスプレイ製パネルを用いたロール式ノートPC『ThinkBook Plus G6 Rollable』を発売しているが、販売数は限定的だ。
また、Innotechは競合企業Flexigo(フレキシゴ)にも言及しており、「Flexigoもサムスンディスプレイに類似装置を供給しているが、当社より規模が小さく、生産能力にも大きな差がある」と述べた。さらに、「当社は恒温恒湿槽やフォトダイオードセンサーなど、信頼性評価に必要な全装置群を保有しており、顧客に包括的なソリューションを提供できる」と強調した。
ただしInnotechは、「フレキシブルディスプレイ市場が急速に成長し、主要顧客が供給先を多様化した場合、当社の独占的地位が弱まる可能性がある」とも指摘している。これは、2026年後半に初の折りたたみ製品を投入予定とされるAppleが、サムスンディスプレイ以外から信頼性試験装置を調達する可能性を示唆するものでもある。
業績と新工場計画
Innotechの売上に占めるサムスンディスプレイ向け比率は非常に高く、2024年は売上の96.9%、2025年上半期でも92.2%を占めている。サムスンディスプレイ向けの年間売上は、2022年・2023年がそれぞれ80億ウォン、2024年に162億ウォン、2025年上半期に155億ウォンに達した。2024年の単体業績は、売上167億ウォン、営業利益42億ウォンとなっている。
事業多角化について、Innotechは「半導体およびバッテリー用試験装置の分野に進出中で、今後は世界的な半導体メーカーやテスト装置企業からの受注を見込んでいる」と述べた。2025年上半期の半導体信頼性試験装置の売上は12億ウォンに達し、すでに追加で3件の供給契約を獲得、下半期には約24億ウォンの売上を見込むという。
同社は新株176万株を発行予定で、目標発行価格は1万2900〜1万4700ウォン。下限価格での発行価値は約227億ウォン、引受手数料などを含めた総額は234億ウォン、発行費用控除後の純調達額は223億ウォンとなる見込みだ。
このうち193億ウォンは平沢工場の建設(製造装置資金)、30億ウォンは原材料費(運転資金)に充てられる予定。工場は2027年まで使用される計画で、Innotechは「平沢(Brain City)に新工場を建設し、今後の折りたたみ式検査装置やITディスプレイ検査装置の需要増に対応する。また、量子ドット(QD)-OLEDテレビ事業向けの新ラインも構築する」と説明している。
同社は今年1月に土地購入契約を締結しており、2027年前半の完成を目指して現金およびIPO調達資金で建設を進める。Innotechは「工場が完成すれば、当社の売上と生産能力は1000億ウォン規模に拡大する」としている。