出典:WitDisplay 2025年10月13日 13:32
サムスンとLG、次世代ディスプレイで対照的な戦略
サムスンディスプレイとLGディスプレイは、「次世代ディスプレイ」とされるOLEDoS(シリコン基板上の有機EL)に対して、まったく異なる方針を取っている。サムスンディスプレイは各種展示会で積極的にOLEDoS製品を発表しているのに対し、LGディスプレイは今年に入ってからこの分野での新製品がほとんど見られない。
業界関係者によれば、LGディスプレイの最近の投資は主要顧客であるアップルの方針と密接に連動しており、そのためOLEDoS分野に独自で投資する余力が乏しいという。専門家の中には、「LGディスプレイは事実上、OLEDoS事業を停止した」との見方を示す人もいる。
サムスン、有機ELの新たな成長エンジンとしてOLEDoSを推進
サムスンディスプレイは、OLEDoSを「未来の成長エンジン」と位置づけ、積極的に量産化への準備を進めている。同社の李正雄(Lee Chung)社長は、8月の「K-Display」展で「OLEDoSは当社の将来事業の重要な柱になる」と語った。
同展示会では、1.3インチ、4000ppiの白色OLEDoSディスプレイが披露され、来場者がその高精細な映像を体験できた。さらに、XR(拡張現実)デバイス向けの応用を意識した特別コンテンツも展示された。また、各画素に独立したRGB発光層を形成し、カラーフィルターを不要とするRGB OLED技術も公開され、OLEDoSの潜在力を示した。
サムスン電子のXRヘッドセット「Infinite」に採用予定
サムスンディスプレイは現在、OLEDoSの量産体制を急ピッチで整えている。これは、サムスン電子が来月発表予定の拡張現実(XR)ヘッドセット「Infinite」に同社製OLEDoSディスプレイが採用されるためだ。初期段階ではソニーが主要供給元となる見込みだが、サムスンは供給網の多様化を目指している。
業界情報によると、「Infinite」向けOLEDoSの生産能力は約10万枚規模であり、今後の市場動向を見ながら増産を検討するという。サムスンディスプレイは短期的な利益追求よりも、量産ノウハウの蓄積と技術的優位の確立を優先しているようだ。
LGディスプレイ、OLEDoS事業を事実上停止か
一方、LGディスプレイは今年OLEDoS関連の発表を一切行っていない。これは、前年に同社が積極的にOLEDoSを推進していた姿勢とは対照的である。2024年の国際情報ディスプレイ学会(SID)では、業界初となるスマートウォッチ向け1.3インチOLEDoS試作機や、VR向けの新技術を披露していた。
しかし今年、同社は第4世代OLEDや車載ディスプレイといった大型・高付加価値製品に重点を移しており、実質的にOLEDoSからの撤退を進めている。OLEDoSはVR、XR、スマートウォッチ向け用途が期待されるものの、商業化は依然として限定的だ。業界筋によれば、LGディスプレイは現在、アップル関連の製品に投資を集中させており、IT用OLEDラインをiPhone生産用の小型OLEDラインへ転換しているという。
ある業界関係者は「LGディスプレイがOLEDoS事業を停止するとの噂がある。今後の投資はアップル関連や確実に利益が見込める分野に集中するだろう」と述べている。
中国勢の攻勢に対する懸念
このような動きに対し、業界内では懸念の声も高まっている。中国メーカーが低価格競争を武器にOLED市場で存在感を強めている中、LGディスプレイが次世代ディスプレイへの投資を怠れば、競争優位を失いかねないとの見方もある。
業界関係者の一人は「中国企業もOLEDoSやOLED分野に積極参入している。韓国勢は油断せず、次世代ディスプレイ技術での主導権を維持するために、常に準備を整えておく必要がある」と警告している。
まとめ
サムスンディスプレイはシリコン基板有機EL(OLEDoS)を将来の成長の柱に据え、XR分野での量産を進めている。一方、LGディスプレイはアップル関連事業に集中し、OLEDoS事業を実質的に中止した。中国企業が台頭するなか、韓国勢が次世代ディスプレイ市場で主導権を維持できるかが注目される。