サムスン、BOEを拒否しLGディスプレイWOLED調達を拡大


SemiDisplayView 2025年9月29日

 

大型OLEDパネル市場でのサムスンとLGDの連携強化

サムスン電子とLG Displayは、大型有機ELパネル市場での協力を強化している。対象となるのはテレビやディスプレイなど大型パネルを搭載したすべての機器であり、サムスン電子はすでに自社の高級テレビモデルにLG Display製の白色(W)-OLEDパネルを採用し、その供給を拡大し続けている。

 

業界関係者の29日の話によれば、サムスン電子のデバイスエクスペリエンス(DX)部門ビジュアルディスプレイ(VD)部門は、中国のBOEから提示されたW-OLEDパネル供給の提案を拒否した。BOEがサムスンに供給しようとしたW-OLEDパネルは、自社の研究開発(R&D)ラインで生産されたものだったとされる。

 

サムスンがLGDに依存する背景

サムスン電子は2023年以降、LG Displayから大型W-OLEDパネルを調達し、自社テレビに搭載してきた。OLEDテレビ市場の成長が遅れている中、サムスンディスプレイが大型QD-OLEDパネルの製造ラインに巨額投資を拡大するのは難しい状況にある。さらに、液晶テレビ市場では中国企業が急速に追い上げており、サムスンが液晶分野に専念することはできない。

 

そのためサムスン電子は、LG Displayとの協力を強化してOLEDテレビの製品群を拡大し、世界テレビ市場におけるシェアを維持している。調査会社Omdiaによると、2025年上半期のサムスンの世界テレビ市場シェア(販売額ベース)は28.9%で、前年末の水準を維持した。

 

BOEの供給提案とサムスンの判断

今年に入り、OLEDを搭載した高級ディスプレイ需要が拡大していることから、BOEは低価格を武器にサムスンへの大型OLEDパネル供給を提案した。BOEの研究開発ラインにおけるW-OLEDパネルの月産能力は約2,000枚とされる。

 

しかしサムスン電子は、LG Displayとの協力関係を一層強化する方針を決定した。すでにサムスンの液晶パネル生産はすべて中国メーカーに移管されており、部材価格交渉の困難さや液晶テレビ生産の負担増大を背景に、「大型OLEDにおいても中国メーカーに依存しない」という内部判断に至ったとみられる。

 

LGDのコスト削減と今後の見通し

LG Displayは広州工場と韓国坡州工場で大型W-OLEDパネルを生産しており、今年第3四半期には広州工場の減価償却の3分の2が完了し、製造コストが大幅に低下した。このため、BOEの提示価格は競争力を欠いたとされる。

 

業界関係者は「LG Displayは多くの技術開発を行い、それを生産ラインに反映させて大型W-OLEDパネルの単価を引き下げている。技術力の保証がないBOE製パネルをサムスンが選ぶ理由はない」と指摘する。そのうえで「サムスン電子は来年さらにLG Displayからの調達量を増やす計画を進めている」と付け加えた。

 

一方、サムスンディスプレイによる大型QD-OLEDパネルへの新規投資は来年も停滞する見通しだ。サムスン電子の需要に応じて生産や投資規模を調整する形となり、巨額の投資リスクを負う必要性は薄れるとみられている。