商業化へ前進!LGディスプレイ、青色燐光材料を用いた「ハイブリッドタンデムOLED」を発表


SemiDisplayView 2025-08-20

 

8月20日、釜山BEXCOで開幕した国際情報ディスプレイ学会(IMID 2025)では、革新をテーマに数多くの新技術が披露されました。新しい材料を用いた画素構造、将来のフォームファクターに対応するマイクロOLED、さらには光センサーとして機能するOLEDディスプレイなどが注目を集めました。

 

その中で、LGディスプレイ(LGD)が発表した「青色燐光を用いたハイブリッドタンデムOLED」は「理想的なOLED材料」として大きな関心を呼びました。展示では、同一動画を並列再生した際の消費電力比較も行われ、燐光による省エネ効果が示されました。

 

青色燐光の意義

OLEDは有機発光材料によるディスプレイで、発光原理により「燐光」と「蛍光」に分類されます。理論上、燐光は電力から光への変換効率がほぼ100%で、蛍光(25%)の約4倍にあたります。これまでOLEDパネルでは赤と緑は燐光、青は寿命の短さや安定性の課題から蛍光が使われてきました。

 

LGDの説明によれば、既存の青色蛍光タンデム構造と比較して、RGBフルカラー白色時の消費電力を15%削減、青色蛍光のみの場合では最大30%削減可能だといいます。担当者は「青色燐光の寿命改善は進んでいるが、量産導入の時期は未定。現在は顧客と協議を進めている」と述べました。

 

世界初の量産ライン検証

LGDは今年5月、世界で初めて量産ラインで青色燐光OLEDパネルの商業化性能を検証したと発表しました。これは同社が米UDCと共同で青色燐光を開発してからわずか8カ月後の成果であり、“Dream OLED”実現に向けた大きな一歩とされています。

 

“Dream OLED”とは、光の三原色(赤・緑・青)すべてを燐光で実現するフルカラーOLEDのことです。蛍光は構造が簡単ですが効率は25%にとどまります。一方、燐光は複雑ながら効率100%を実現し、電力消費を大幅に削減可能です。しかし、赤と緑は商業化から20年以上が経つ一方で、青は短波長・高エネルギーゆえに実用化が難題とされてきました。

 

 

ハイブリッドタンデム構造で解決

LGDは、下層に青色蛍光、上層に青色燐光を配置したハイブリッド二重スタック構造を採用することで、蛍光の安定性と燐光の低消費電力を両立。結果として消費電力を約15%削減しつつ、既存OLEDパネルと同等の安定性を維持しました。

 

これによりLGDは、青色燐光OLEDパネルを商業化段階に進めた世界初の企業となりました。性能評価、光学特性、量産加工性が確認され、UDCとの共同開発による検証も完了しています。同社は韓国と米国で独自に特許を出願済みです。

 

次世代OLEDへの布石

LGDの最高技術責任者(CTO)尹秀英氏は、「青色燐光の商業化検証成功は、“Dream OLED”完成に向けた最後のピースであり、次世代OLEDへの画期的なマイルストーンとなる」とコメントしています。